前回(#11)、二つめの日記にTVドラマ「バースデー・カード」がでてきたので、同じ水谷豊主演ということで続けて取り上げる。映画ではないのであくまでも番外編として、同時期に衝撃を受けたTVドキュメンタリーと併せて掲載したい。

 TBS系「日曜劇場」は、現在と違って、毎週単発の1時間ドラマ枠だった。制作にはTBSのほか、地方のネット局も参加していた。大阪のABC(東京・大阪のネットのねじれ解消後はMBS)、愛知のCBC等々。僕が注目していたのはHBC(北海道放送)だった。倉本聰が傑作、秀作を連発していたのだ。
 HBC制作の「バースデー・カード」は市川森一のシナリオだった。

 ある雑誌のペンフレンド募集コーナーで知った憧れの女性(池上季実子)に手紙を出した青年(水谷豊)は相手からバースデイ・カードをもらって感激する。女性にしてみれば、何通も届いた手紙の中の一人(への返信)にしかすぎないのだが、孤独だった青年にとっては違った。まさしく自分への親愛の情を示す証だった。こうして女性は青年にとって永遠に守るべき運命の女(ひと)となった。
 女性と同じ街に住む青年は、何年にも亘って献身的に尽くしていく。それも女性にはまったく意識されることがない、一方的な行為である。最初は純真な女子高生だった女性は社会の荒波にもまれて徐々にやつれていく。青年も女性のために犯罪に手を染め、警察に追われる身になってしまう。
 追いつめられた青年はジャンプ台の階段をかけのぼっていく。頂上に到着してスキー板を着用するとそのままジャンプ台を滑降。青年にジャンプの経験なんてない。死へのジャンプ……

 確かそんなストーリーだった。一度しか観たことがないのだが、後年、図書館から市川森一のシナリオ集を借りてきて書き写したことがある。原稿は家のどこかにあるのだが、今見当たらない。

   ◇

 1977年 2月13日

 TV「バースデー・カード」をみる。
 日曜劇場の中でも北海道放送が制作するものは、いつもすばらしい。このドラマも青春という言葉がぴったりする。
 北の街の情緒、その中に生きている若者たち、水谷豊の好演、池上季実子の高校生→バスガイド→ホステス→食堂のカミさんへの変身、その演技。途中流れる歌(マーサ三宅)もよかった。
 もっと軽い物語だと思ったら、終わりで悲しく感動させられた。

   ◇

 次はドキュメンタリー。

   ◇

 4月23日

 教育というものは一体何なのだろう。
 人を教え、育てていくべきはずの“教育”が、今では能力に適さない者をけずっていってしまう。すなわち身体障害児、知恵おくれetc。
 一体誰が悪いのか、校長か、先生か、文部省か、日教組か。
 自分にはわからないが、問題なのは習慣だ。6才には6才の能力がある、12才にはまたしかりだ。学校はそう思って授業をすすめるのだし、児童生徒たちもそうだからついていくのだ。
 それについていけない児はすなわち特殊学級行き。トクシュだ。何から何までそうだ。
 NHK「ドキュメンタリー」を観て複雑な気持ちになった。
 あの知恵おくれの彼女に冷たい態度をとる学校が悪いのか、またそういう態度をとらざるをえない社会が悪いのか。
 一体何がいけないのだろう。

   ◇

 5月22日

 日本テレビ深夜のドキュメンタリー「学校が恐いので学校には行きません」は考えさせられる“ドラマ”だった。
 一人の(学校に殺された)少年に対しての担当教師の、校長の、PTA会長の、教育委員長のあまりに冷たい態度。第三者の目から見るとあまりにひどいのだ。少年の家族に対しても。
 彼らの言い分は過ぎ去った出来事だ、忘れたい。にもかかわらずTVは取材にくる。やめてくれ。みんながみんな、言葉は違うが言いたいことは同じだろう。
 同級生たちもそんな感じだ。
 そんな彼らに非常に憤りを感じる。しかし、自分がその事件のなかにいるとしたら、その事件が北中で起きて同級の、それもふだん口もきかない差別しているわけではないが、差別している一人が自殺したなら…
 自分もあの生徒たちのように言うのかもしれない。
「そっとしてほしい。自分がダメになってしまいそうで」
 そして先生たちもあのような愚考にはしるのだろうか。
 また考えてしまう。教育とは何だろう。生徒に対する学校とは一体何だろう。

 こんなに考えさせられる激しいドキュメンタリーを見たことがない。

   ◇




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No title
今年あたり、北海道へ来れませんかね~。
夏休みなんかを利用して。それともゴーデンウイークに来るのもいいですよ。釧路のSさんが29日にいきますので、帰りに便乗して来道されてはどうですか?釧路~帯広~富良野~美瑛~旭川 いい季節です!
ジンギズカン さん
お誘い、大変うれしいのですが、申し訳ありません…今年は無理です。
「夕景工房 小説と映画のあいだに」を出版するのでその経費がかかります。夏には和歌山県太地町への旅を考えています。本当は、交通費を浮かせるため、29日のシークレットライブの翌日、一泊二日で行くことを計画していましたが、懐具合が芳しくなく断念しました。
そんなわけで、来年のGWもしくは夏はいかがですか?
同じ世代かな?
 「バースディカード」は、今でも記憶に残っている作品です。
 2012年5月号の雑誌「ドラマ」にシナリオが掲載されていたので、購入してみました。もう一度作品を見てみたいです。
 この頃は水谷豊主演の映画「青春の殺人者」を見た後ぐらいだったのですが、自分の抑圧された想いをうまく表現されていたように思います。
 昔は雑誌にペンパルコーナーがあって、何回か出した思い出がありますが、この主人公の気持ちがよく分かります。相手にしてみればペンパルコーナーでたくさん送られてきた相手の一人にすぎないのですが、自分にとっては、返信を心待ちにしているし、色々と妄想してしまうものです。

 ちょうど学生時代でフィルムセンター等で映画見まくりの時代がなつかしいです。
 
とし さん
書き込みありがとうございます。

1977年の2月は、高校2年でした。私の方が年齢的にはちょっと下ではないですか。同世代ですけど。

3年前の「ドラマ」にシナリオが掲載されたんですか? 全然知りませんでした。知っていたら、購入したのに。

「バースデーカード」はマーサ三宅の歌も良くて、私にとって幻の曲でした。
もう何年前になるのか、大塚のライブハウスに音楽を担当した深町純さん(のユニット)のライブに行って、お話しする機会があったんですね。
ドラマや使用されたマーサさんの曲のことを言うと、データを送ってくれることになったんですよ。すごく喜んだのですが、なぜかメールが届かず、その後深町さん急逝してしまうんです。ショックでした。
今でも買えますよ
月刊ドラマのバックナンバーは、今でもAmazonで購入できますよ。(送料無料)
深町純さんは、映画「海潮音」で名前だけは知っていました。「Keiko」も担当されていたみたいですが、気づきませんでした。
とし さん
そうですか! 来週にでも、ニーナ・シモンのアルバムとともに注文しましょう。
書き写した原稿はその後見つかって、今手元にあるんですけどね。

このドラマのビデオテープは保存されているのでしょうか? ドラマ観たいです。

深町さんは市川崑監督「悪魔の手毬唄」でシンセを弾いています。この方のピアノはいいですよ。
今度見てみます
 「悪魔の手毬唄」のDVDを探しまわったのですが、見つからないので、今度深町純さんのシンセを確認してみます。
DVDを置く場所がなくて、いくつかの場所に分けて置いてあるので、所在不明状態です。(涙)
 整理できないまま少ない小遣いからDVDやBDを買っているので、これ以上増やしたくないのですが。(無理)
 市川崑監督作品で持っているのは、他に「炎上」と「股旅」だけです。12月頃に廉価盤の「野火」が出るようなので、フィルムセンターで見て以来の感動を味わいたいたいと思っています。
 「バースディ・カード」のシナリオを書き写したものが見つかって良かったですね。この作品に対する思い入れが私にも分かります。ビデオテープは持っていませんよ。TBSには2回ほど再放映をお願いしてみましたが。
ひょっとするとスカパーのTBS2で放映してくれないか期待しているところです。今月中に「幻の町」と「りんりんと」を録画できる予定です。
 今日は「東京ホテル物語」という1989年のTBSドラマを見てみました。これも長い間待っていた作品だったので、嬉しくて、そして見ながら涙してしまいました。
 ところで、やっぱり「犬神家の一族」より「悪魔の手毬唄」の方が断然いいですよね。
とし さん
返信が遅くなって申し訳ありません。
土日月は、関西への旅でした。帰ってきてからは毎日残業で、家に帰ってきてPCを開く元気がありませんでした。

「悪魔の手毬唄」は市川崑監督の金田一シリーズの中で最高傑作ですよ。
ブログでも書いています。

http://kei1959.blog43.fc2.com/blog-entry-522.html

http://kei1959.blog43.fc2.com/blog-entry-166.html

http://kei1959.blog43.fc2.com/blog-entry-165.html

数年前、サントラCDを購入しました。

「幻の町」と「りんりんと」、TV放送あるんですか! 倉本聰ファンで、高校時代はベップ出版のシナリオ集を買いました。どちらも収録されています。

「野火」は何度もDVDで観ています。この前は、渋谷ユーロスペースに新しい「野火」を観に行ってきました。

まだ、アマゾンに「ドラマ」を注文していません。本日、用事があって神保町にでかけ、「ドラマ」のバックナンバーで「バースデーカード」収録号を探しました。なかった……
ところで、「ドラマ」収録時のタイトルは「バースディカード」でしたか、「バースデーカード」でしたか?
今書けば「バースディカード」なんですが、自分の日記には「バースデーカード」となっているんですよ。

バースデイ・カード
バースデイカードの演出を担当した長沼です。いまでも覚えていて下さって感激です。私にとっても大変懐かしい作品です。今年6月に「北のドラマづくり半世紀」(北海道新聞社)というささやかな本を出しました。かかわったいろいろなドラマづくりの背景について書いています。併せて読んでいただければ嬉しいです。
長沼修さん
コメントありがとうございます。

傑作ドラマを演出されたディレクターの方に拙ブログの感想を読んでいただき、大変喜んでおります。もし、これが居酒屋や何かでお会いしているのでしたら、もう質問攻めですよ(笑)。
「バースデーカード」は忘れられないドラマです。もう一度観たいと思っているのですが、ビデオテープは放送局に残っているのでしょうか? 70年代の後半ですから、ビデオテープの使いまわしの時代ではないように思うのですが。

本放送の一度しか観たことがありません。再放送されたことはあるのでしょうか?
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プロフィール

kei

Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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