昨日DVDで「空気人形」鑑賞。観終わって後悔した。やはり公開時に劇場で観れば良かった! と。いや、公開時当然劇場に行こうと思っていたのだ。が、劇場は限定されているし、前売券を購入していないにもかかわらず、通常料金で観たくない。なんだかんだとスケジュールが合わなかった。二番館(名画座)を押さえればよかったか。

 後悔と同時に安堵もしている。
 この手の作品は――映画世界に一種独特な時間が流れている作品はあわただしい生活と切り離された暗闇で観ることこそふさわしい。自宅で見ると映画世界に溶け込めない場合がある。すべての雑音をシャットアウトして鑑賞したい。
 市川準監督「トキワ荘の青春」をビデオで観たときもくやしい思いをしたものだ。
 この世界観は是枝監督のほか、西川美和監督や山下敦弘監督の作品に共通している。かつて、朝めし前プロジェクトのS氏がmixiで「静かな映画」なるコミュニティを作った。静かな映画。言い得て妙である。こういう映画は劇場で観るべきだと主張したい。
 しかし、「空気人形」は、途中から目頭が熱くなって仕方なかった。心を持ってしまった空気人形(ダッチワイフ)の切なさ、哀しさがびんびん伝わってきて、何度か頬に涙が伝わった。ラストのハッピーバースデーには嗚咽をもらしそうになった。劇場でそんな姿をさらしたくないじゃないか。
 ハッピーバースデーに嗚咽した、なんて書くと勘違いする否定派がいるだろう。「パンズ・ラビリンス」のラストと同じようなものを感じ、だからこそヒロインの心根に共鳴、共感したといえる。

 「空気人形」は「映画芸術」のワーストテンで一位になった作品で、実際、ブログでは否定するレビューの方が多かったような気がする。僕が覗いたブログではとんでもない否定のされ方をしていた。この映画を褒めた小林信彦まで誹謗するのだから。
 そんなにひどい映画か? 確かにラストのラスト、タンポポの綿毛のシーンはいらないと思う。ハッピーバースデーのあと、ごみとなった空気人形の姿、その落差がショックとある種の感銘を与えるのに。
 最初、ストーリーを知ったとき、手塚治虫の「やけっぱちのマリア」を思い出した。小学校高学年のとき少年チャンピオンに連載されて、毎週楽しみにしていた。あのマンガも、ヒロインのマリアがダッチワイフに魂が入って活躍する話だった。ラストは抜け殻のマリアがボロボロになって川に流されてしまうのではなかったか。
 オリジナルだと思った映画には原作があった。業田良家のマンガだった。
 まあ、ファンタジーだと思えば、納得できない展開も許せてしまうところが僕にはある。

 空気人形にペ・ドゥナをキャスティングしたことを特筆したい。ペ・ドゥナも見事それに応えている。台詞が少ないということもあるが、映画はまったく韓国人だということを感じさせない。ペ・ドゥナが日本語が堪能になった、のではないことは、エンディングロールで確認できる。現場の指導がよかったということだ。全裸になったときの、肌の感触がまるで人形のようなイメージにも瞠目した。
 ARATAもいい。それから高橋昌也の老人!
 ちなみに空気人形を日本の女優が演じるとしたら、上野樹里が適任だと思う。ぜったいにヌードにはならないだろうが。




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Author:kei
新井啓介
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まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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