2011/03/01

 『ピーター・フォーク自伝 「刑事コロンボ」の素顔』(ピーター・フォーク/田中雅子 訳/東邦出版)

 ピーター・フォークは決して「刑事コロンボ」で人気者になった役者ではなかった。そんなことは当たり前だと、上の世代から言われそうだが、僕にすれば、あまりにも「刑事コロンボ」のイメージが強烈すぎたのだ。それも小池朝雄の吹き替えの。70年代前半は土曜日が楽しみだったもの。夢中で観ていた。なので、映画でピーター・フォークが地声でしゃべっていたりすると、どうにもピンとこなかった。
 本書を読めばハリウッドを代表する映画俳優の一人であることがわかる。


2011/03/04

 「暴走検察」(上杉隆・週刊朝日取材班/朝日新聞出版)

 小沢一郎は自民党時代から大嫌いだ。嫌いだけれど、この数年の、検察による小沢叩きにはうんざりしている。どうにかして犯罪者に仕立てようとしている。新聞やTVはその姿勢をまったく批判しない。批判しないばかりか、検察からのリーク情報をそのまま報道する。世間は、それも旧田中派時代からアンチ小沢の人たちは、その報道で、やはり小沢は何かしているのだ、ワルいんだ、だからこそ検察は血眼になって小沢の犯罪(の証拠)を探しているのだと思ってしまう。もしも何も出てこなかったら検察はどうするのだろうか。
 本書には検察の小沢追求を是とする記事を書いた立花隆への反論の項もある。立花隆にしてみれば、田中金脈問題の記事を書いたあの当時から、一貫して〈田中派は許さない〉なのだろう。この記事を読んだ、あるいは、広告でこの記事を知った人たちは、あの立花さんが書いているのだから、やはり小沢がワルいのだと納得する。
 いつだったか、検察を内部告発した検事がその後すぐに何かの罪で告訴され有罪判決となり刑務所に収監されるTVドキュメンタリーを観た。そんなバカなと思ったが、TV、新聞はそれが当たり前のように、特に問題視することはなかった。
 いいのか? それで!


2011/03/07

 「くたばれTV・がんばれTV」(菅沼定憲・片岡直彦/駒草出版)

 著者の一人、菅沼定憲。漢字だとわからないが、音にすれば「あの人か!」と膝を打った。〈すがぬまていけん〉。若山弦蔵がTBSラジオの夕方の番組を担当しているときの(1コーナーの)スクリプター(台本作家)ではないか。コーナーが終わるときに必ず若山が「スクリプターはすがぬまていけんでした」と口頭でクレジットしていた。


2011/03/09

 「流される」(小林信彦/文學界3月号)

 「東京少年」「日本橋バビロン」に続く自伝的小説3部作の最後を飾る作品とだという。前作「日本橋バビロン」が主に父方の祖父を描いていたが、本作では母方の祖父の半生を追った。エッセイ等にも何度かでてきた、あの記録魔の祖父である。
 この小説は、「世間知らず」(文庫化で「背中合わせのハートブレイク」に改題)のリアルバージョン、「日々の漂泊」(角川文庫「監禁」所収)+「みずすましの街」の印象を受けた。まるで回想録のような筆致の中に巧妙にフィクションを挿入していく。
 単なる一登場人物でしかないと思われた人物が物語が進行していくに連れて徐々にキャラクターを発揮しはじめ、味をだしていき、ラストで思い切り存在感を見せつけてくれる。涙があふれて往生した。


2011/03/10

 「仮面ライダー・仮面の忍者赤影・隠密剣士…昭和ヒーロー像を作った男 伊上勝評伝」(井上敏樹・竹中清/徳間書店)

 伊上勝は昭和の仮面ライダー、東映ヒーローものには欠かせないシナリオライターだった。変身ブームに夢中になった世代には神様みたいな存在かもしれない。しかし、僕にとっては、(何度も書いているように、まあ、たぶんに年齢的なことも関係するのかもしれないが)東映等身大ヒーローブームに背を向かせる要因を作った人、となる。本書を読んでわかったことだが。
 東映の特撮、特に等身大ヒーローものにはいい想い出がないもので、主要なスタッフの業績も知ろうともしなかった。「仮面の忍者 赤影」は大好きだったけれど。
 「仮面ライダー」のプロットって、時代劇の影響が強いよね、って、特撮仲間たちと話していたことがある。東映ならさもありなんと。もともと宣弘社のTV番組から入ったライターだった。宣弘社といえば「隠密剣士」。「隠密剣士」~「仮面の忍者 赤影」~「仮面ライダー」の流れか。
 平成仮面ライダーの前半、息子の井上敏樹がほぼ毎週シナリオを書いていていて驚愕したものだが、そのバイタリティは父親ゆずりだったことがわかる。伊上勝というペンネームはの伊上は井上の別読みからきているらいしい。
 その息子の井上敏樹が本書の前半で父親の思い出を綴っているのだが、「殺したかった」の一言に複雑な家庭環境が伺えた。晩年はアル中になっていた。困った親父だったのだろう。過程は全然違うもののアルコールで自滅したという点で、第一期ウルトラシリーズのメインライター、金城哲夫にダブるものがある。


2011/03/11

 「東映アニメーション演出家40年奮闘史」(森下孝三/一迅社)

 〈『ドラゴンボールZ』『聖闘士星矢』『トランスフォーマー』を手がけた男〉の副題がつく。どれひとつ観たことがない。
 著者は、昔東映動画、現東映アニメーションの社長である。まったく知らない。演出作品を一つひとつ確認した。やはり1本も観たことがない。まあ、こちらがアニメを卒業してから、演出を手がけるようになったのだから仕方ないか。
 70年代は僕にとってタツノコプロの時代だったので、人気コミックをアニメ化するだけの、それもまったくオリジナリティがないTVアニメを量産する東映動画を一段低く見ていたところがある。
 手塚治虫「ブッダ」が今年アニメ化される。制作は東映アニメーション。監督は著者だ。本書を読んだことで観てみようかなと思うようになった。

 この項続く




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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