承前

 高校から大学にかけて(途中予備校時代が1年ある)、毎週弟が買ってくる少年チャンピオンが楽しみだった。予備校、大学時代は立ち読みで「ブラック・ジャック」をチェックしていたと思う。
 コミックス第1巻が出ると早速買ってきた。笑ってしまったのは、コミックのジャンルである。表紙には〈恐怖コミック〉とあった。いくらなんでも恐怖はないだろう、恐怖は! 思いっきり突っ込んだ。4巻めあたりで〈ヒューマンコミック〉に衣替え。恐怖からヒューマンへ。まるで印象が違うじゃないか。

 鴨川つばめのギャグマンガ「マカロニほうれん荘」が始まったときの衝撃はすごかった。いや笑撃と書くべきか。チャンピオンの「マカロニほうれん荘」、ジャンプの「すすめ!! パイレーツ」と言われた時代が短いながらもあったのである。
 この「マカロニほうれん荘」、なぜか一つ上の世代(団塊の世代)の受けが悪かった。曰く「どこが面白いのだかわからない」。発言者は確か音楽評論家の渋谷陽一だったような。「どこか面白いのかわからないというあなたのセンスの方が私にはわからない」と僕はつぶやいた。心の中で。
 しかし、「マカロニほうれん荘」が面白かったのはごくわずかだった。あっというまに頂点に登りつめ、そのまま転げ落ちていった。ギャグがはじけない「マカロニ」は悲惨だった。装いを新たに「マカロニ2」が始まったが悪あがきでしかなかった。あっというまに連載終了。
 その後、しばらくしてから鴨川つばめは東京ひよことして蘇ったが、もう以前の輝きはなかった……。ギャグマンガ家のアイディアの消耗が生半可なものではないことがわかる。

 大学の1年、2年のころは少年ジャンプの「Dr.スランプ」ブームだった。連載が始まったときは、ストーリー以上に画風に注目していたところがある。バタ臭いタッチがとても新鮮で素敵だった。
 立ち読みで「ブラック・ジャック」をチェックしていたが、やがて終了のときがやってくる。寂しいという気持ちより、ああやっと終わったかという感慨だった。連載が長く続くとファンサービスのため、初期のころの謎の解明がエピソードの一つとして描かれる。これが嫌だった。ブラック・ジャックの本名が間黒男だとか、なぜ顔の一部が黒く疵があるのか、等々。謎は謎のままにしておく方がファンはいろいろ想像する楽しみがあるというのが個人的な考えだ。コミックスは弟と協力して全巻揃えた。

 手塚治虫は「ブラック・ジャック」終了後も、数々の作品を連載した。「ドン・ドラキュラ」「プライム・ローズ」「七色いんこ」「ミッドナイト」。その合間に特別企画、スペシャル企画として「ブラック・ジャック」の読み切りを掲載する方策がとられた。
 「ドン・ドラキュラ」はけっこう愉快な作品で、ドン・ドラキュラの娘役を原悦子にしてエロチックコメディ映画ができないか夢想したことがある。

 80年代半ばごろから少年チャンピオンが迷走をはじめる。
 代わって怒涛の快進撃を始めるのが少年ジャンプである。発行部数が500万部を突破したと話題になったのは80年代の後半ではなかったか。雑誌を開くとページから熱気が伝わってきた。しかし個人的にはジャンプ商法が好きになれなかった。人気がなければすぐに打ち切る、人気がでればできるだけ連載を引き伸ばす。作者の意向などおかまいなしに。結局、ストーリーのメインがトーナメント方式の戦いになってしまうのだ。勝つか負けるか。「リングにかけろ」も「キン肉マン」も「ドラゴンボール」も連載開始時と内容が大幅に変わってしまった。
 だからある時期以降定食屋などでジャンプを開くときは「こち亀」しか読まなくなった。

 ジャンプの話はどうでもいい。本題はチャンピオンだ。
 「これはいかん、何トチ狂ってんだ!」と思ったのが90年代になってからのロリコンマンガ連載だった。個人的な資質といわれればそれまでだが、どんなジャンルでもロリコンだけはどうにも許せないものがある。永井豪の「ハレンチ学園」や「あばしり一家」ほか、少女たちの裸を売りにしたマンガに夢中になった。だから、エロマンガ=悪だなんて弾劾する気は毛頭ない。しかし、少年誌でロリコンはまずいだろう。水と油ではないか。
 はっきりいってチャンピオンが汚れたと感じた。目先のヒットを狙って、禁断の果実に手をだしたとしか思えない。
 この連載、業界の反応はどうだったのだろうか?


 この項続く




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Author:kei
新井啓介
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まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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