前々項から続く

 実をいうとヤングチャンピオンを知ったのは最近なのである。昨年の夏だったか。「ファイティング寿限無」(立川談四楼/ちくま文庫)がコミカライズされるという情報を耳にした。連載誌がヤングチャンピオンだという。
 そのときに思った。少年チャンピオンがあるのだからヤングチャンピオンがあってもおかしくないよな。週刊誌だと思ったら隔週だとのこと。隔週といってもあくまでも月2回刊行で、第五週があった場合は発売されない。だったらビッグコミックオリジナルのように〈月2回刊行〉を謳えばいいのに。
 でも、まあ、隔週刊、チャンピオン、ということで、創刊当時の少年チャンピオンを思い出したというわけだ。
 
 小説「ファイティング寿限無」は大好きな小説だ。自慢じゃないが(ということは自慢!)、これまで3回読んでいる。まず図書館で借りて、次に単行本を購入して、その次は筑摩書房から文庫本がでたときに買って。
  読むうちに映画化されないか期待するようになった。若手の落語家が売名行為で始めたボクシングの才能が開花してどんどん出世していく姿を描く青春小説は、アクション中心になるので映像化にはぴったりなのだ。落語ブームといわれ、落語家を主人公にした映画が何本か公開されているのだから、この機会にと願っていたが、そんな話はまったく聞こえてこない。
 あの長谷川和彦監督が、自身のHPで再び映画を撮るための企画を募集していた時期がある。ファンから「ファイティング寿限無」はどうかという提案があって、個人的にとても喜んだのだが、長谷川監督まったく乗り気じゃなかった。原作を読めば少しは態度は変わるだろうに。
 実は映画化のオファーはあったらしい。でも実現しなかった。なぜこんな企画が? と嘆きたくなる映画が多い中、どうしてこういうことになるのか。

 そんな状況下でのコミカライズである。当然チェックしなければなるまい。まあ、立ち読みで様子を見て、面白ければコミックスになったときに購入すればいい。
 今年の3月8日、連載第一回を読もうと書店に立ち寄った。ビッグコミックオリジナルをいつも立ち読みするのと同じ感覚でマンガ雑誌の棚に向かったのだが……なんてこった、ヤングチャンピオンは紐で十文字に結ばれていてページを開くことができない。アイドルの写真が印刷されたB5版のクリアファイルが付録でついている。仕方ない、買った。
 コミカライズしたのは野部優美という漫画家。まったく知らない。少年マンガにはまったく疎いのだから当然か。主人公の師匠がもろ立川談志というのが笑える。小説を読めばモデルだというのは十分わかるのだが。
 2回目は立ち読みだと書店に行くとやはり紐綴じ。またまたクリアファイルの付録つき。ヤングチャンピオンって毎回付録がついて紐綴じなのだ。なんてこったい!
 こうして毎号購入することになったのが、悲しいのは他の連載にまったく興味がわかないこと。ビッグコミックオリジナルを購入していたころは、目当てが「MASTERキートン」とはいえ、「三丁目の夕日」ほかすべての作品に目をとおしていたというのに。

 だいたいヤングチャンピオンを買うこと自体が恥ずかしい。表紙がアイドルの水着姿。クリアファイルはAKB48のメンバーの写真。オレAKB48の総選挙なんてどうでもいいと思っているからね!
 AKB48で思い出した。〈モーニング娘。〉を卒業したメンバーたちが〈ドリームモーニング娘。〉を結成したというニュース。結局あなたたちソロだと活躍できないということだろう? それって恥ずかしくないのか!

 閑話休題(それはともかく)。
 雑誌代を無駄にしたくないので、「ファイティング寿限無」のページを切り抜きすることにした。マンガの切り抜きは「アドルフに告ぐ」(週刊文春連載)以来のことだ。
 マンガ「ファイティング寿限無」は、デフォルメを効かせてかなり原作をアレンジしている。マンガなのだから当然とはいえ、これがいい味だしている。主人公がボクシングを始めるきっかけとなった、やくざとの喧嘩。原作ではほんの偶然のなりゆきだった。敵の攻撃を避けるためにたまたま出した拳が強烈なパンチとなって相手を卒倒させることになる。マンガでは一度やられた主人公が、師匠からハッパをかけられて再挑戦するはめになる。何度も何度も殴られても立ち向かっていく。最後の最後に繰り出したパンチで窮地を脱するという展開。驚いたのはやくざが主人公を見直してしまうこと。こりゃ~物語後半への伏線かな。絶対再登場するよ、このやくざ!

 「アドルフに告ぐ」は完結するまでかなりの期間を要した。
 「ファイティング寿限無」は果たして?!


 【追記】

 チャンピオンの版元、秋田書店は、小学時代にサンデーコミックス、チャンピオンコミックスのほか、少年向け入門書の類で大変お世話になった。
 マンガを描くために買った初めての入門書「マンガのかきかた」、そして「マンガ家入門」「続マンガ家入門」。ここらへんのことは「まぐま vol.18 石ノ森章太郎Spirits」の「体験的石ノ森ヒーロー論」に綴っている。

 少年チャンピオンの「まんが道」は、最初藤子不二雄のマンガの描き方入門ページ「チャンピオンマンガ科」の1コーナーとして始まった。詳細は「藤子不二雄論 FとAの方程式」の読書レビューに。

 マンガを描く道具なんて、今みたいにセットで販売なんてしていなかった。ペン軸、ペン先、羽ぼうき、開明墨汁。ケント紙は青い枠線なんて印刷されていない普通のもの。みんなバラで文房具屋で買ったのだ。太田市北口商店街の柿沼商店。おばあさんが店番していた。ペン軸は手塚治虫や石森章太郎が使用しているというカブラペン。今は圧倒的にGペンが主流になっている。

 そういえば、小学生のとき、少年ジャンプに掲載された広告を見て「マンガの描き方」通信講座を受講したことがある。教材が送られてきて、指導に従って原稿(一コママンガ)を描き、送付したような覚えがあるのだが。
 
 なお、前々項のタイトル「一人で少年漫画ばかり読んできた」は藤子不二雄の著書「二人で少年漫画ばかり描いてきた」のもじり。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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