キャンディーズが「普通の女の子に戻りたい」と宣言して芸能界から引退したにもかかわらず、ランちゃんとスーちゃんはすぐに女優としてカムバックした。
 この嘘つきが! と当時ちょっと憤ったが、しばらくしてこう思うようになった。キャンディーズをやめたい、渡辺プロをやめたい、そのための方便だったのではないか。事務所主導の自由のきかないアイドル活動なんてしたくない。でも、そんなことを言っても事務所は了解などしてくれないだろう、だったら頂上作戦だ、芸能界引退! これなら誰も文句が言えない。ランちゃんやスーちゃんがカムバックしたときの事務所がどこだか知らないのだが。

     ◇

 ●遅ればせながら「娘の結婚」 2006/06/02

 ずいぶん遅い書き込みになってしまったが、GWに日本テレビ系「DRAMA COMPLEX」の枠で市川崑監督の「娘の結婚」が放映された。
 小津安二郎監督「晩春」のリメイクだ。
 以前このリメイクについて耳にしたような気がした。調べてみたら2003年にWOWOWで制作、放映され、すでにDVDにもなっているという。まったく知らなかった。

 あの名作を崑監督がどう現代的にアレンジしたのか。
 「黒い十人の女」のリメイクに失望しているので(端的に指摘できるのはピチカートファイヴのライブ。映画版のクレージーキャッツと比較して躍動感が全然違う)、この「娘の結婚」はそれほど期待していなかった。一応録画したけれど、そのまま一週間放置していたくらいだ。
 しかし、しかし。
 フィルムということもあって、やはり崑監督のことだけある。陰影、奥行、質感。崑タッチは健在だ。しっとりと落ち着いた色彩が心地よい。タイトル処理なんてワクワクしたもの。冒頭から引き込まれる。

 婚期を逃してしまいそうな一人娘(鈴木京香)を心配する父(長塚京三)。しかし娘は結婚して父のそばを離れることがたまらなく寂しいと思っている。ずっと父の世話を焼いていたいのだ。父は自分の再婚を告げ、娘は結婚を決意するのだが……。

 鈴木京香はその容貌、醸しだす雰囲気、言葉遣い等、原節子に負けていない。物語も全体的に〈おかしさ〉に彩られていて飽きない。脇にはいつものように常連が顔を揃えているが、鈴木京香のバツイチ従姉を演じた緒川たまきが魅力的。この女優さん、どこかで見たことがあるなあと思ったら「トリビアの泉」の「うそつき」女だった。
 鈴木京香は適役、ただ、父親役が長塚京三というところにどうにも違和感を覚えてしまう。年齢的にどうなのかは知らないが、オリジナルの笠知衆がいかにも老人といった枯れた男なのに、長塚京三だとまだまだ現役の感があり、「父と離れたくない」という娘の気持ちにどうにも淫靡な匂いがしてしまうのだ。これは狙いなのか?
 それに現代なら、娘が結婚しても「一緒に住めばいいじゃない」と言いたくなる。広い家なのだから。このテーマは現代にそぐわないのかもしれない。

 いつの頃からか、崑映画の音楽は必ず谷川賢作(谷川俊太郎の息子さん)が担当するようになった。けっして悪くはないが、どうも胸に響いてこない。すべてシンセサイザー(だと思う)で処理してしまうところが気になってしまう。


 先週は渡辺プロダクションを設立して、戦後の芸能ビジネスを変えた渡辺晋の生涯を描いた「ザ・ヒットパレード」がニ夜にわたって放送された。
 後編だけ録画して先日観た。この手のドラマは結局役者のそっくりさんぶりを楽しむ方向にいってしまう。タイガースが出てきたので、テンプターズ(ショーケン)も登場かと胸膨らませたが叶わなかった。
 渡辺プロを語る際、絶対はずせないエピソードをこのドラマは描いていない。日本テレビ(井原高忠プロデューサー)との全面戦争のこと。
 これについてはまた明日。


 ●「ザ・ヒットパレード」 2006/06/03

 幼少時に夢中になって見た歌番組がフジテレビの「ザ・ヒットパレード」だ。テーマソングの「ヒッパレー、ヒッパレー みんなが選ぶ~」はおなじみ。司会がミッキー・カーチスとザ・ピーナッツ。スマイリー小原が踊りながら指揮する姿が忘れられない。というか、この番組の出演者ではっきりと覚えているのはスマイリー小原の笑顔と踊りだけのような気がする。
 思うに、当時スマイリー小原とトニー谷が二大強烈キャラクターだったな。

 放送開始が1959年の6月。この年(昭和34年)は私が生まれた年だ(2ヶ月間だけ50年代の空気を吸っている!)。終了が1969年。10年続いたのか。30分番組だったことも初めて知った。1時間だとばかり思っていた。
 現在オールディーズを聴いて懐かしいと思うのは、この番組で日本語の歌詞でうたわれた曲が耳に残っているからだろう。

 「ザ・ヒットパレード ~芸能界を変えた男・渡辺晋物語~」は、タイトルにその懐かしい歌番組を冠したので興味がわいた。しかし放送日時までチェックしていなかった。
 先週はある会議の資料作りで毎日残業だった。25日(木)は友人に誘われて無料の「ナイロビの蜂」鑑賞会に参加するつもりでいたら、翌朝までに資料を完成させなければならなくなった。
 苦肉の策で映画を観たあと、会社に戻った。当然会社に泊まることになる。翌日はまっすぐ帰宅する予定が、別の友人に飲みに誘われ新橋へ。ちょっと一杯のつもりが気がつくとはしご酒、にはならなかったけれど、この日が「ザ・ヒットパレード」の前編が放送されたのだった。新聞読んでいたら録画したのに!
 というわけで、後編だけの録画になった次第。

 主役の渡辺晋に柳葉敏郎、パートナーの美佐に常盤貴子。ラスト、サングラスをして登場した柳葉敏郎が晩年の渡辺晋にそっくりなので驚いた。あくまでも写真等で知っている姿に、だけれど。
 「ザ・ヒットパレード」のプロデューサー、ディレクターの椙山浩一(後の作曲家・すぎやまこういち)は原田泰造、青島幸夫は石黒賢、植木等に陣内孝則。ピーナッツの二人に安倍なつみ・麻美の姉妹(最初聞いときは???だった、実際に見ると、まさに双子のよう。ナイスキャスティングではないですか)。
 昭和30年代のセットに力が入っていた。
 途中途中に挿入される当時のフィルム、ヒット曲に心が弾んだ。
 「スーダラ節」が誕生する瞬間にはシラけた。会議の席で、青島幸夫が即興で詞を作ってうたい、皆で合唱になるだが、そんなバカな。まあ、ドラマだとそういう展開にしないと絵にならないのはわかるけれど。
 
 渡辺プロは局と対等に、というか局を下請けのようにして自社のタレントをレギュラーにした番組を制作した。日本テレビの「しゃぼん玉ホリデー」は有名だ。各局には渡辺プロ御用達のディレクターがいたらしい。ここらへんのことはすべて小林信彦のコラムその他で知ったこと。
 渡辺プロは月曜夜8時にテレビ朝日でキャンディーズをメインにした新番組を開始した。日本テレビは同じ時間帯に「紅白歌のベストテン」があり、渡辺プロの人気歌手の出演できなくなるのは困るとクレームを入れると「だったらそちらが放送日時を変えたらいい」と。
 この渡辺晋の一言に井原高忠が切れた。だったらもう渡辺プロのタレントは使わない。その代わりに自局で人気タレントを作ってやれ。という経緯から、「スター誕生」でグランプリを受賞した歌手の卵たちを、渡辺プロ以外の芸能プロに割り振った。彼(彼女)がレコードをリリースすると積極的に自局の歌番組に出演させる、独自の歌謡賞をつくって、局に貢献する歌手に新人賞を贈呈する。数々の秘策がうまくいって、皆人気歌手になっていくのである。
 こうして渡辺プロの凋落が始まった。

 ドラマ「ザ・ヒットパレード」には、この事実がすっぽり抜け落ちていた。もちろんフジテレビが他局のことを真正面から描かないだろうし、渡辺プロとの共同制作だから負のエピソードなんて最初から描くつもりはなかったのかもしれないが。
 負の業績を綴る社史はないか。ドラマは芸能ビジネスを虚業から実業にすべく、財界と強い関係を結ぼうと奮闘する渡辺晋の姿が描かれるだけ。確かにその功績は素晴らしいことではあるが、功罪の罪にまったく触れないというのは人物造形に深みがなくなる。ドラマなんだから。

 今は渡辺プロに代わって、ジャニーズ事務所が同じ道を歩んでいる。こちらの方が手ごわいかもしれない。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町のブックカフェ二十世紀で働いています。さまざまなイベントを企画、開催していますので、興味あれば一度覗いてみてください。

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