昨日は、夕方、三鷹市芸術文化センター星のホール「柳家さん喬独演会」へ。「ふたいサロン」を主催し「シネマDEりんりん」顧問でもあるFさんの招待で。昨年の「春風亭小朝独演会」に続く落語会。実は3月に「柳家花緑独演会」があったのだけれど、東日本大震災の影響で中止(延期)になっている。
 談四楼フォロワーズのメンバー、Mさん、Wさんと一緒。「船徳」「肝つぶし」「唐茄子屋政談」。たっぷり堪能させていただきました。

          * * *

2011/04/12

 「ガラスの巨塔」(今井彰/幻冬舎)

 NHKの人気番組「プロジェクトX」はほとんど観ることがなかった。唯一チャンネルを合わせたのは始まってすぐの頃ではないだろうか。ゴジラ映画の第一作を取り上げた回だ。中島みゆきの歌(オープニング&エンディング)と田口トモロヲのナレーションが印象に残ったが、別に次の週も観ようとは思わなかった。日本初の怪獣映画製作にまつわる裏話、苦労話だったからチャンネルをあわせたまでだ。あと、あさま山荘事件のときも興味深く観た。
 なぜ初のTVアニメ「鉄腕アトム」も取り上げなかったのか。

 まあ、いいや。
 どちらかというと、番組に懐疑的だった。いや、番組に対する世間の賞賛に対してといった方がいいか。子どもに見せたい番組第一位だなんて、何考えてるんだと思った。単なる親のエゴじゃないかと。
 「プロジェクトX」はけっこう長い間NHKの看板番組と君臨し、ある日終了した。ネタがなくなったのだろう。

 しばらくして「プロジェクトX」のプロデューサーが小説を上梓した。驚いたことにプロデューサーはNHKを退職していたのである。あんな人気番組を手がけたのだから、出世して役員にでもなっているのだろう。漠然とそんなことを思っていたのに。
 新聞広告のキャッチコピーに〈この小説を書くためにNHKを辞めました〉とあった。いったい何があったのか。まあ、だいたい予想はつくけれど。

 新聞広告で気になっていた本を図書館で見つけた。
 本書は、小説の形を借りた、つまり仮名によって描かれたノンフィクション「NHK辣腕プロデューサーの栄光と挫折」。書かれていることは本当のことなんだと思う。あくまでも作者視線の一方通行のものの見方ではあるものの……。
 抜きんでた才能に対する妬み嫉み、出る杭は打たれるNHKの企業体質については、佐々木昭一郎「創るということ」(JICC出版)で承知していた。70年代から80年代にかけて独特の映像と語りによるドラマで数々の賞を受賞したディレクターも被害者だったのである。昔も今も変わらない企業体質にNHKの問題がある、のか。会長派、アンチ会長派の反目なんて愚の骨頂だ。
 時代の趨勢とはいえ、作者が会長の庇護の下、テッペンを目指さなければまた違った展開になったのではないか。番組プロデューサーとして、会長とつかず離れずの関係にいたら……組織人としてそれは無理な話か。

 もしかして、本当はこれを言いたくて本書を書いたのでは? と思わせるエピソードが後半にでてくる。番組で取り上げた事実に捏造があったと放送終了後に糾弾されたのだが、実は、この回の主人公である高校教師の嘘の証言が原因だったというもの。証言のウラをとらなかったスタッフの落ち度なのだが、とはいえ、高校教師に非がないわけではない。ところがこの教師、完全にスタッフ側に責任転嫁してしまって、被害者面しているのだ。小説の中では。実際この件はウィキペディア等にも記載されているが、教師側の問題にはまったく言及していない。
 繰り返しになるが、相手が嘘をついたとしても、きちんとした対応をとっていれば回避できた。最終的な責任はスタッフにある。とはいえ、番組を盛り上げるためにスタッフ側の一方的な考えで捏造されたと世間に思われるのは心外だろう。そりゃ意義申し立てしたくなる。
 もう一つは万引き事件の真相。このくだりになって、そういえば〈NHKプロデューサー万引き〉のニュースを目にしたことを思い出した。ニュースは万引きがあったことしか伝えていない。その経過、結果なんてフォローしない。万引きとされた行為は、作者の態度にカチンときた店員が仕組んだ罠だったようだ。はめられたというべきか。事実、不起訴になった。

 クリエイティブを目的とする組織の中で、クリエイティブ以外の部分でさまざまな暗闘があるのがどうにも解せない。出る杭が打たれる現象は民放でもあるのだろうか? それともNHKだけの体質なのか。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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