2011/05/06

 「日本SF精神史 幕末・明治から戦後まで」(長山靖生/河出書房新社)

 昔、1970年代、80年代のころまでは、エンタテインメント小説の中でSFとミステリは大きな柱だった。80年代後半~90年代以降はミステリだけになってしまった。これはミステリが直木賞を受賞するようになったことと何か関係があるのだろうか?
 今だってSFは書かれているし本も上梓されているに違いない。ただ以前ほど版元が〈SF〉作品であることをアピールしなくなっただけのこと。たとえば貴志祐介「新世界より」が上梓されたとき、誰がSFだと意識しただろうか。
 70年代初めにベストセラーになり、映画化作品も大ヒットした「日本沈没」。その続編が何年か前にやっと本になったものの、一般的にはほとんど話題にならなかった。SFを全面にだすより、ミステリ、サスペンス、アクションの要素を押し出した方が受けが良いのだ、きっと。SFが拡散していってさまざまなジャンルに吸収されていったとみるべきなのか。

 本書は以前書評か何かでメモしていたもので、図書館の棚で見つけてルンルン気分で借りてきた。
 日本でかなり昔からSFが書かれていることが理解できた。
 日本SFの元祖的存在だと思っていた押川春浪「海底軍艦」は東宝の特撮映画の原作としてインプットされている。それにしても映画と原作(小説)、まったく別ものなんですね。原作の海底軍艦は轟天という名称ではないのである。
 時代が昭和、それも40年代以降になると、うれしくなる。やっと状況が実感できるからだろう。駆け足なのだが残念だ。


2011/05/12

 「コハダは大トロより、なぜ儲かるのか?」(林總/ダイヤモンド社)

 仕事の関係で読む。
 会計関連の本を何冊も借りてきたが、専門書はやはり全然読めない。意味がわからないんだから仕方ない。そんな中で本書だけはふつうに感覚でページを繰った。意味も十分わかる。人気を呼ぶのもわかるというものだ。


2011/05/12

 「アヒルと鴨のコインロッカー」(伊坂幸太郎/東京創元社)

 借りてきたDVDの予告編に「アヒルと鴨とコインロッカー」があった。劇場公開されたときは興味がなかった。映画にも原作の小説にも。作家・伊坂幸太郎に注目するのは映画「ゴールデンスランバー」を観てからだ。映画に感銘を受けてから無償に原作を当たりたくなった(エンディングテーマの斉藤和義「幸福な朝食、退屈な夕食」はYouTubeでいつも聴いている)。でも図書館の棚にあったためしがない。だったら予約すればいいのにそこまでするつもりがない。予約する、しないの違いはどこにあるのか。そのくせ図書館に行くと必ず伊坂幸太郎のコーナーを確認することは忘れない。自分でも不思議に思っている。

 「アヒルと鴨とコインロッカー」の予告編は面白そうだった。広辞苑を盗み出すために本屋を襲撃するシーンが。広辞苑を盗んだつもりがよく見たら広辞林だったというオチ。今度機会があったらDVD借りよう。
 いつものように「ゴールデンスランバー」目当てで図書館の棚を覗くと本書があった。映画の前に小説をあたろうと思った。

 舞台は仙台。大学に入学しアパートでの一人暮らしを始めた男子大学生、椎名とペットショップで働く若い女性、琴美、それぞれの一人称による語りが交互に並びながら物語が進行する。この語りには時間差があって、椎名は現代、琴美は2年前に生きている。物語が進むにつれてある事件が浮かび上がってくる。2年前、ペット惨殺事件の犯人グループとちょっとした接点を持ったことで、琴美が犯人グループに狙われるのである。恋人(ブータン人の留学生)と女好きの元彼がいろいろ守ってはくれるのだが。
 椎名の隣人がこの女好きの元彼。同じアパートに住んでいて、失恋して落ち込んでいる外国人の友人のために広辞苑をプレンゼントしてやりたい。だから本屋を襲撃する。だから協力してくれと椎名を誘う。あまりに発想が飛躍しているが。
 次第に2年前の事件がどんなものかわかってくる。だんだん胸騒ぎがしてくる。これって最悪な結末が待っているのではないか? いやいや、もしかするとあっと驚く大逆転があって大団円に収束するとか? 
 果たして……

 一応ミステリであるから、あるトリックが仕掛けられている。このトリックにしてやられる。完全にだまされるのはうれしいものだ。現代と2年前がつながってラストを迎えるわけだ。結末はハッピーエンドではないが、読後感は悪くない。SF的手法も取り入れているからか。

 それにしても、この小説をどうやって映画化したのだろうか。仕掛けられたトリックは叙述だから成り立つものだ。小説と同じ構成でないことは確かだろう。
 別の好奇心から映画を観たくなった。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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