昨日、やっと「大鹿村騒動記」を観ることができた。丸の内TOEIにて。特別料金で1,000円ぽっきり。ありがたい。
 映画の中の原田芳雄は、老けたとはいえいつもの原田芳雄だった。その声、台詞廻し、原田節に聞き惚れてしまう。声の調子に、なぜか、亡き祖父を思い出して仕方なかった。
 この映画、テーマと構成が「ホームカミング」に通じるものがある。

          * * *

 夏休み直前の大事なイベントを書き忘れていた。
 夏休みに入る前、先月29日(金)に神保町の学士会館で「立川談四楼 出版記念&祝還暦パーティー」があった。PHP研究所から「落語家のやけ酒、祝い酒」を上梓したのと、6月に還暦を迎えたことを記念してパーティーが企画されたのだ。

 パーティープログラムは以下のとおり。

 ・落語 立川談四楼「らくだ」
 ・乾杯~歓談
 ・スペシャルゲスト 今陽子ミニミニミニライブ? 「恋の季節」「見上げてごらん夜の星を」
 ・歓談
 ・〆のご挨拶

 酒がテーマの本なのだから、落語の演目は「らくだ」か「替わり目」だろうと予想していた。師匠の「らくだ」、大好きです。
 スペシャルゲストの今陽子さん、ピンキーとキラーズの世代(歌謡曲に興味を持ち出したころのヒット曲が「恋の季節」なのだ)だから、生の声で歌われる「恋の季節」に感激。今さんも今年還暦なんだそうだ。そうは絶対見えないけれど。ご一緒のご母堂がまた若い。親娘ではなく姉妹に見えるんですよ、ほんと。ちょっと歳の離れた姉妹ね。
 最後になって、師匠の隣に座っている男性が漫画家の野部優美氏であることがわかった。黄色いパンツ、赤のポロシャツ(Tシャツ?)という派手な衣装で、着席したときからとても目立っていた。あわてて駆け寄り挨拶した。
「『ファイティング寿限無』読むためだけにヤングチャンピオン買っています」「切り抜きしてます」
「うれしいなあ! 編集が聞いたら感激しますよ」
 隣に座っていた方は担当の編集者だったのか。もっと早くわかればいろいろ話が伺えたのに。

 二次会に参加して帰宅すると、ネットで注文していた2冊が届いていた。

 「冬の神話」(小林信彦/講談社)
 「どうせ曲がった人生さ」(立川談四楼/毎日新聞社)

 数日前にネット古書店で「冬の神話」が1,000円で売りに出されていたのであわてて購入し、合わせて、なかなか文庫にならない「どうせ曲がった人生さ」も注文したのだ。これで初期の談四楼本はすべて手に入れることができた。10年前に図書館で借りて読んだ。とても面白いエッセイ集だった。

 ということで夕景工房から転載。
 ああやっぱり最近このパターンが多い。

 文中の真打試験第一号というのは間違い。2回目か3回目の試験だった。1回目が全員合格したことを批判されたことによる処置で、落とされたのは、当日審査を欠席した立川談志と古今亭志ん朝の弟子。そりゃ家元(当時はまだ家元ではないが)怒るって。
 
     ◇

2001/01/22

 「どうせ曲がった人生さ」(立川談四楼/毎日新聞社)

 立川談四楼のエッセイ集をやっと読む。
 「シャレのち曇り」に始まる談四楼の一連の落語小説は新作がでるごとに巧くなって、すっかりはまってしまった。語り口がまるで高座を聴いているようで、すっかり魅了された僕は一昨年、下北沢は北沢八幡神社で定期的に開催されている談四楼独演会に足を運んだ。当日の演目は「目黒のさんま」「柳田格之進」。声に迫力と艶があって語り口も巧妙。落語に造詣が深いわけではないが「巧いなあ。小説の行間からにじみ出る落語に対する自信は嘘じゃなかったんだなあ」と思った。終わってからさんまが食べたくてしかたなくて……。
 てなわけで、小説家としてだけでなく落語家・談四楼のファンにもなってしまった(本は全部図書館から借りていて、落語もまだ一度しか聴いたことないのでファンといえるかどうか心もとないが)。

 立川談四楼はわが母校(群馬県立太田高校)の先輩である。落語協会が導入した真打試験の第一号の受験者。この試験に落ちたことで「三平の弟子より俺の弟子の方が劣るというのか!」と師匠・立川談志が怒り狂って、協会を脱退、立川流を旗揚げしたことはご存知のとおり。今では立川流の真打だ。
 このエッセイを読むと真打試験に落ちた屈辱と怒りで「シャレのち曇り」を書いたとあるから、もしそのまま真打になっていたら小説家・立川談四楼は誕生しなかったことになる。
 その「シャレのち曇り」の感想で一般的にはそれほど知られていない著者は後輩(志の輔)の活躍をどう思っているのだろうと書いたが、その答えもちゃんと書かれている。素直に喜んでいる。
 タレントとして名が売れることより本格派でじっくり落語をやる場所を確保したいのだ。
 だから出前寄席で全国を飛び歩く。出前寄席とは正式名称を<全国すみずみ出前寄席>という前座、二つ目、真打、奇術など4人でワンパックにして99,800円の料金でお呼びがかかった場所に出向く寄席のことだ。

 あるパーティーの席上で、野坂昭如が談四楼を「ネタミ・ソネミ・ヒガミの大家」と紹介したごとく、彼の世の中の非常識に対する怒りは激しい、というか一本筋が通っているのだ、本当は。
 たとえば本書「七つの怒り」に書くエピソードの一つ。
 談四楼が虎ノ門のある場所を探していたときのこと。どうしても道がわからず、某レストランのちょうどランチタイムが過ぎてホッとひと息ついていた若いコックに道を尋ねた。出前をしていないからわからないという。それでも住所を示して場所を確認しようとすると「ッせえなァ。出前やってねェつってンだろ!」。談四楼、ムッとして「サービス業に携わる一員か」と応酬すると「通りすがりの奴なんぞ客じゃねぇ、カネをもらわなきゃ客じゃネェ」。この一言に談四楼はプッツン。大ゲンカになって警察が呼ばれる始末になったそうな。

 小説の師匠は色川武大だということもわかった。
 この色川先生の死に触れた文章が収録された章「死について」の中には小学一年生の夏休み前に破傷風で亡くなった弟のことが書かれている。一学期の「つうしんぼ」ももらえなかった弟の死を悼み、三人の息子たちが小学生になって夏休みをむかえるたびに感慨、感動があったというくだりは胸を打った。我が子の一年生の一学期をひとつの目標、目安にしていたと書いていて涙が流れてしかったなかった。

 「シャレのち曇り」上梓後、1990年~94年の間に書かれたエッセイはどれも真摯に対象と向き合っていて、決して手を抜かず、どれも味わい深い。勢いに任せて書かれたものでないことは確か。今まで発表された短編の素材になったエピソードが見え隠れするところも愉快だ。
 落語家にして小説家にして大学講師の立川談四楼。また落語が聴きたくなってきた。次の独演会はいつあるのだろう。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町のブックカフェ二十世紀で働いています。さまざまなイベントを企画、開催していますので、興味あれば一度覗いてみてください。

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