その1よりやっと続く

 我が家のTVは地上波しか映らない。BSはたぶん見ることができるはず。なのだが、配線(?)等のやり方がわからない。よって見られない。CSはかみサンの反対で契約できない状態が続いている。
「CSが視聴できるようになれば、あなた、今まで以上にTVに釘づけになるでしょう!」
 映画はDVDを借りてくればいいという論理なのだが、CSで放映する映画はTSUTAYAでレンタルしていないものが多いんだよ。わかってないなぁ。
 まあ、いいや。

 WOWOWはBSなのかCSなのか。それすら知らない機械音痴であるが、これまで数々の国内外の映画を放映してきた映画ファンには加入がマストのチャンネル(局)である。
 この数年、単に映画を放映するだけでなく、自ら制作するようになってきた。観たいと思わせる作品を手掛けている。人気ミステリの映像化なのだが、これがかなり健闘しているのだ。確かに「犯人に告ぐ」なんてよくできていた。最近では「白夜行」の映画化、「幻夜」のドラマ化が話題になった。
 「白夜行」はクライマックスの船越英一郎の叫びで台無しになってしまった感がある。叫んだことに対してではなく、叫んだ内容に。
 同じ東野圭吾原作で悪女ものの姉妹編「幻夜」はどうなのだろうか? 深キョンの悪女ぶりは?

 「マークスの山」は「幻夜」の前に放送されたドラマだったのではないか。
 新聞広告だった思う、WOWOWドラマ「マークスの山」の宣伝を見て、原作に近い形で映像化するには、映画より連続ドラマの方が適してると喜んだ覚えがある。
 日本映画界には、ベストセラーになった長編小説(主にミステリ)を映画化する傾向がある。いくつかの例外(「OUT」「犯人に告ぐ」とか)を除きことごとく失敗している。映画で、原作どおりの展開で描こうとすれば、情報量、時間の問題で破綻が生じるのは目に見えている。にもかかわらず、ほとんどが登場人物を少し整理するくらいで、原作同様の構成のまま映画化してしまう。
 僕自身、小説を読了して「これは映画になる!」と思ってしまうタイプである。しかし、こと長編の場合、TVドラマの方が映像化に向いているのではないだろうか。1クール(13回)は少し長いが、スペシャルドラマの前後編・3部作、あるいはNHKが得意とする短期間シリーズ(5、6回で完結)。「マークスの山」はまさにこの作りだった。

 主人公の合田雄一郎に上川隆也、合田の友人で東京地検特捜部の検事・加納に石黒賢。原作を知る者にとってはどちらもイメージではないが、NHKドラマ「照柿」の三浦友和の例もある。要はドラマの中で存在感を示せるかどうか。そういう意味では二人は好演していた。
 ふと思った。映画では誰が加納を演じていたのか? 調べたらなんと加納はカットされていたのだった。
 ドラマのもう一つのキーとなるマークスと看護婦。高良健吾と戸田菜穂が演じていて個人的にはイメージがぴったりだった。DVDのVol.1は全五話のうち、第一話と第二話が収録されていた。この二話を観る限りでは、映画をはるかに凌駕する傑作になりそうな予感がした。
 しばらく間を置いて鑑賞したVol.2(第三話、第四話)、Vol.3(最終話)で、大いなる期待はしぼんでしまう。映画より出来はいいけれど、傑作にはならなかった。

 結局マークスの精神障害をきちんと描けないことに起因するのではないか。映画化でも感じたことだが。
 3年周期で訪れる闇、その闘病を描かかないことには看護婦との純愛(同棲生活)も胸に響かない。原作(当然講談社文庫版だ)と違って、マークスが精神障害を患うのは、子どものころの母親の虐待が原因となっている。なぜ原作と違えているのかわからないが、母親の虐待を要因とするなら、その虐待が少年にどのようなトラウマを植え付け、精神障害になったのかという過程をきちんと描かなければ意味がない。きちんと描ければ、原作で感じた恋人というより母子のような関係がより鮮明になるのに。
 また、連続殺人の犯人がマークスであることが判明、北岳に登った彼を追うのは合田ほか数名というのは拍子抜けした。そうせざるをえない理由も説明されているが、これは警視庁と所轄署の合同捜査しなければ、物語的にも映像的に意味がない。
 そして山頂から晴天でくっきりはっきり見える富士山を見せなければ。メモの引用もとってつけたようだった。

 週刊誌記者を男性から女性にして(演じるのは小西真奈美)原作以上に活躍させたのはドラマのオリジナル。ラストは甘いけれど、山頂のシーンでそれほど感動できなかった者としては、ある種ほっとできる解決法だと思う。

 映画を観たとき(ビデオで、だが)同様、ドラマ全話を観終わると、原作を読みたくなった。
 単行本をまた読もうか。
 なんて思っていたら、新潮文庫で「マークスの山」(上下)が出たことを知った。〈決定版〉とはどういうことか。講談社文庫にまた加筆訂正しているのか。買うしかないか。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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