2011/08/21

 「乱歩地獄」(川崎市市民ミュージアム 映像ホール)

 川崎市市民ミュージアムへ出かけた。ある方から今このミュージアムで「実相寺昭雄展」を開催していることを教えてもらい、チケットまでいただいたのである。
 展覧会だけではなく、土日は館内のホールで実相寺監督作品も上映しているという。プログラムを調べたら21日の午後が「乱歩地獄」。さっそく足を運んだ次第。

 「乱歩地獄」は江戸川乱歩の小説を原作とする4編からなるオムニバス映画。その一編が実相寺監督作品なのだから、DVDではなくスクリーンで鑑賞したい。
 実をいうと、この映画、封切時(05年)からまるで縁がなくて劇場で押さえることができなかった。DVDも見かけることがなかったような気がする。

 実相寺監督と江戸川乱歩の世界は相性がいい。相性がいいのは時代設定や描かれる世界(耽美、エロス等)によるもの。そう考えた僕は、実相寺監督で「魍魎の匣」を映画化できないものか夢想していたときがある。京極夏彦の京極堂シリーズ(正式には百鬼夜行シリーズと言うそうだ)の第二作。ラスト近くの汽車のくだり。はこを開けると人形が登場するあのくだり。実相寺ショットを思い描き興奮した。怒涛の勢いでこのシリーズを読んでいたころだ。

 ずいぶん経ってからシリーズ第一作「姑獲鳥の夏」が実相寺監督で映画化されたときは歓喜した。喜び勇んで劇場に足を運んだが、出来はそれほど芳しいものではなかった。いや「姑獲鳥の夏」の映画化作品としては及第点だが、コアな実相寺監督ファンとしては期待はずれだったということ。

 で、思った。実相寺監督は京極夏彦の世界に興味ないんだな。あくまでも江戸川乱歩の世界に思い入れがあるのだ。その差が映像に如実に表れるのだ、と。
 だからこそ続いて公開された「乱歩地獄」は必見だった。

 映画は前述のとおり4つの短編で構成されている。

 第一話「火星の運河」(監督:竹内スグル)
 第二話「鏡地獄」(監督:実相寺昭雄)
 第三話「芋虫」(監督:佐藤寿保)
 最終話「蟲」(監督:カネコアツシ)

 実相寺監督「鏡地獄」は、鎌倉を舞台に、謎の連続殺人事件を追って明智小五郎が活躍する話。
 ロン毛の明智探偵には驚かされたが、その他の読みははずれなかった。まさに実相寺テイスト満載!
 独特のアングルで切り取った日本家屋のショットやバックに鏡を多用した背景、スタイリッシュな映像を堪能した。スタッフはさぞかし鏡への映り込みに神経を注いだことだろう。
 しかし、この鏡をバックにして役者を演技させるのは初めてではない。たしか「ウルトラマンダイナ/怪獣戯曲」で取り組んでいたような。鏡と時計はある時期からの実相寺監督のモチーフになったというか。

 映像が堪能できたのは「姑獲鳥の夏」も同じ。しかし、キレが違う。どう違うのか指摘するのは難しいのだが。
 ドラマそのものに夢中になった。このストーリー、まさしくあの時代の「怪奇大作戦」ではないか。劇中の殺人、その方法、謎解きなんてまるで「呪いの壺」みたい。
 「D坂の殺人事件」同様、SM(緊縛)を取り入れたエロティシズムも健在だ。鏡職人(成宮寛貴)と義姉(小川はるみ)のラブシーン、義姉が長い舌をだし職人が噛みつくショットにゾクゾクきた。ホラーとエロが共存している。

 実相寺監督以外の3人の監督はまったく知らなかった。とはいえ、どの作品も面白い。
 「火星の運河」は全裸の男が全裸の女に暴行するショットに驚愕した。そのカメラワーク、そのカッティングに。実に不思議な景色が登場する。エンディングロールによれば、アイスランドのロケだと。これまた驚愕。他3編に比べショートショートといった按配のこの作品で海外ロケしているなんて!
 「芋虫」は「キャタピラ」の前に観ていたら、そのメーキャップの出来に驚いていただろう。四肢の切断状態がとてもリアルに見えた。四肢を切断された亭主に扮するのは大森南朋。顔のメーキャップもすごいので指摘されなければわからないかも。
 「蟲」の監督カネコアツシは漫画家だとか。途中からの転調ぶりに快哉を叫んだ。これぞブラックユーモアの極致。通りのブリーフ姿、「どうもすいません!」は、かわまたぐんじ事件からのインスパイアか?

 4作とも浅野忠信が出演している(一作めから順に男、明智探偵、明智探偵、主役の運転手)それぞれの作品は独立しているのに、この役柄が微妙に関連しているような気がする。
 それにしても浅野忠信はもうこのときからハジけていたのね!!

 これもエンディングクレジットで知ったのだが、制作がミコット&バサラ。三宅さん、突然(じゃないのかもしれませんが)の倒産はショックでした。でも、21世紀の日本映画に新風をもたらしたのは確かだと思いますよ。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町のブックカフェ二十世紀で働いています。さまざまなイベントを企画、開催していますので、興味あれば一度覗いてみてください。

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