一昨日(10日・土)、昨日(11日・日)とスペシャルドラマ「砂の器」が二夜連続で放送された。本当は3月12日(土)、13日(日)に放送される予定だった。東日本大震災で延期になったのだ。3月のときはかなり番宣のスポットを目にしたが、今回はまるで目にしなかった。10日の朝刊で初めて気がついたほど。いや、テレビ朝日を始終観ていたら、目にしたのかもしれない。まあ、知らなかったのは自分だけということもありうるか。

 「砂の器」がテレビ朝日でスぺシャルドラマになると知ってまずうんざりした。もう何度目の映像化になるのか。決定版としてすでに松竹映画(野村芳太郎監督作品)があるのだからいい加減によせばいいのに。
 原作と同じ時代を舞台にして描くと知り興味がわいた。中居正広が主演したTBSの連続ドラマはまるで観る気がしなかったのに。その理由について、かつてこう書いた

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 以前、同じTBSで「砂の器」がドラマ化されたが、野村芳太郎監督作品に強く影響された内容で失望した。
 TVドラマは橋本忍(と山田洋次)の書いた映画シナリオを原作としながら、現代を舞台にストーリーを改変した。
 どうしてそんなことをしたのか?
 映画と違い、TVドラマは時間がたっぷりある。だからこそ、原作の「砂の器」とがっぷり四つに組めばいいのだ。時代や登場人物を原作同様にして、きちんと当時の風俗を挿入しながら若いアーティストたちの犯罪劇、群像劇を描けば、映画とは一線を画す新しい「砂の器」が生れる可能性があったのに。
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 今回のドラマ化の売りは若手刑事の吉村を主役にするというものだった。映画で森田健作が演じた所轄署(蒲田?)の刑事である。今回のドラマでは玉木宏が演じている。ちなみに本来の主人公は警視庁の今西刑事(映画では丹波哲郎が名演技を見せた。今回のドラマでは小林薫が演じている)。

 原作にはない役で中谷美紀扮する新聞記者が登場する。吉村と友達以上恋人未満的な間柄。TBSのドラマみたいに現代を舞台にするのなら当然パスしていた。原作と同じ昭和30年代半ばが舞台と知って、ある期待を持った。犯人捜査の対象が和賀英良を含む若きアーティストたちになるのではないか。
 予想はある部分的中した。ヌーボーグループがきちんと登場したのである。

 もうひとつ、これはまったく個人的なことだが、吉村と女新聞記者がよく利用する喫茶店が〈JAZZ&COFFEE JamJam〉だったこと。神戸は元町にあるジャズ喫茶。紙ふうせんライブの会場として昨年は5月と年末、今年はGWに足を運んで、もう馴染みのお店なのである。この店をロケセットとして使用している。

 TBSの連続ドラマがそうだったように、このスペシャルドラマもハンセン(氏)病を無視した作りになっている。つまり本浦千代吉が幼い息子を連れて故郷を捨て放浪の旅に出る理由づけがまったく別のものに差し替えられているのだ。
 思うに、現在のTV業界では、ハンセン病はアンタッチャブルな事項なのだろう。タブーとして暗黙の了解があって、最初からスタッフサイドに扱う気がないのか、扱おうにもハンセン病患者の団体から許可がでないのか、その理由はわからないけれど。たぶん前者だと思う。

 名作の誉れ高い映画「砂の器」もシナリオが書かれてから実際に撮影に入るまで14年の月日を必要とした。問題は映画の中におけるハンセン(氏)病の扱いだったと「脚本家・橋本忍の世界」(村井淳志/集英社新書)で知った。打開策としてラストに次のような文言(字幕)を挿入し団体からの了解を得たという。
「ハンセン氏病は、医学の進歩により特効薬もあり、現在では完全に回復し、社会復帰が続いている。それを拒むものは、まだ根強く残っている非科学的な偏見と差別のみであり、本浦千代吉のような患者はもうどこにもいない」

 21世紀になっても差別と偏見は残っていた。もう何年も前になるが、某温泉旅館でハンセン病患者に対して宿泊を拒否する事件が起きた。
 この騒動がなければ、「砂の器」をドラマ化してもハンセン病が無視されることはなかったのかもしれない。勝手に思っているだけだが。

 テーマの一つである病気が扱えないなら、映像化なんてしなければいいのに。


 この項続く




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町のブックカフェ二十世紀で働いています。さまざまなイベントを企画、開催していますので、興味あれば一度覗いてみてください。

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