この映画、東日本大震災の被害地を取材したドキュメンタリーだとインプットはしていた。どこから情報を仕入れたのか忘れたが、タイトルだけはしっかり記憶していたのである。
 まさか森元修一さんが監督だったなんて! それを知ったのは先月本人に電話したときだ。「〈昔撮ったキネマ〉蔵出し上映会!」に誘ったら、この映画の試写会の話になって叫んでしまった。
「え~ あれ、森元さんの作品なの!」。

 森元さんとは昨年(2010年)1月の「シネマDEりんりん」で知り合った。特にゲストは呼ばず、メンバーによる企画会議の意味合いが濃い新年会だった。
 誰の参加も自由だから、映像作家のIさんを誘い、Iさんの才能を高く買っている俳優Tさんにも声をかけた。会場で上映する素材を持ってきてもいいと聞いていたので「1973 バラキの夏」を持参した。二人に観てもらいたかったからだ。
 このときのお客さんの一人が森元さんだった。参加者全員に「まぐま」自主映画特集の号を無料配付したこともあり、森元さんが僕に話しかけてきたのがきかっけで、その後メール等のやりとりをするようになった。水曜日だけバーテンをやっているバーに遊びに行ったこともある。
 
 劇映画畑(だったと思う)の森元さんがドキュメンタリーを撮った。それも題材はあの大震災だ。 話題になっているのは知っている。いったいどんな内容なのか。
「今、試写会をやっているんですが……」
「平日の昼間は無理だよ」
「11月にアップリンクで一週間公開されますから」
「絶対行くから!」

 そのあとに「船堀映画祭」で上映されることを知った。
 二日めの10時から特別上映ということで無料、上映前には森元監督のトークもあるという。
 「ツィゴイネルワイゼン」の上映(+トークショー)に合わせて昼前に行く予定を朝一に変更。前日の打上げの疲れが残っている身体に鞭打って駆けつけた次第。

 前日に引き続き涙ぽろぽろ状態。とはいえ、涙の質はまったく違う。「時をかける少女」の涙は、切なさによる。かわいそうとか悲しいというものではなくある種のうれし涙だ。表現がいいかどうかわからないけれど。
 対してこの映画で流れる涙は喪失感からにじみでてくる悲しみによる。いや、インタビューに応じる被災者たちが、家族を失った悲しみを身体を震わせながら激しく嘆いてくれるなら、少しは違ったかもしれない。自分がどれほど深い哀しみの淵にいるのか慟哭してくれれば、まだ楽なのだ。この表現もおかしいか……つまり心情をそのまま言葉にしてくれたら、涙を流してうなずいていられる。
 ところが、映画の中の彼、彼女たちは、どこか淡々と被災の実態を語るのだ。まるで他人事のように。でも、内容はとんでもなく重い。二週間前に子どもを孫を、愛する肉親を亡くしているのだ。そこに、彼、彼女たちの本当の気持ちが理解できて、涙だけでなく嗚咽までもらしそうになってしまう。

 これは取材する側、つまりカメラをまわしている森元さんがドキュメンタリーのプロでないところに起因するのではないか。
 未曾有の大惨事を目の当たりにして、最初何をしていいかわからない。冒頭しばらくは監督のおどおど感が伝わってくる映像が続く。もちろん、現地を訪れたことがない僕みたいな者に被災の実態がわかるようになっているのだが。
 そうこうして実際に取材現場に居合わせた方にインタビューを試みるのだが、その態度に「取材していいのだろうか?」という悩める気持ちを醸し出してしまうのか、取材される側も、先のような対応になったのではないかと。
 ベテランのレポーターなら、うまい具合に話を引き出して、相手も語っているうちに感情が高ぶってきて涙を流して……「この画使える」なんて内心ほくそ笑んで……そんな展開になるような気がする。
 この映画は、そういう流れになっていない。できなかったといういうべきか。だからこそ価値がある。
 ナレーションはもちろん、音楽もない。にもかかわらず70分強スクリーンを食い入るように見つめてしまう。
 上映後、ロビーに出てからまず募金をした。特別販売の「3.11東日本大震災 巨震激流」(三陸新報社)を購入した。

 「大津波のあとに」は同じく震災を取材したドキュメンタリー「槌音」(監督:大久保愉伊)ととも11/19~11/25渋谷アップリンクで公開される。
 もう一度観たい。




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Comment
上映延長決定!!
ご紹介頂き有難うございます。現在上映中の『大津波のあとに』『槌音』ですが、急遽上映延長が決定いたしました。追加日程:11/26(土)~12/2(金)連日16:30より。11/25(金)までは18:45から上映しています。よろしくお願いいたします。
森元修一 さん
書き込みありがとうございます。

延長上映、おめでとうございます。
それで、助かりました。
これで、観に行けそうです。
…行けるか? 行かなくては!
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プロフィール

kei

Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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