2011/11/18

 「紙ふうせんリサイタル2011 なつかしい未来Vol.6」(サンケイホールブリーゼ)

 その1から続く

 開演時間が迫ってきたので、ホールの中へ。着席するといつもと違う感覚におそわれた。何かが違う。思考すること2秒。「ああ、そうか!」
 緞帳が下がっていたのである。
 リサイタルの会場がサンケイホールブリーゼになって今年で3回め。過去2回は、はじめから幕が開いていた。
 いつのころからか、コンサートの場合、最初からステージがオープンになっているのが当たり前になった。まあ、それほどいろいろなコンサートに足を運んだわけではないから、はっきり断言できないのだが。オープンだから、開演前にどんな編成なのか、すぐわかった。バックのミュージシャンがどこに位置するとか。
 今回はわからない!

 開演前の影ナレは、恒例になった後藤さん。
「写真撮影は禁止です。どうぞ心のシャッターにおさめてください」
「好きな曲、嫌いな曲、いろいろあるでしょうが、どうか最後までお楽しみください」

 ふと頭をよぎった。
 今回のリサイタルのアレンジは深町純さんだったんだよなぁ。昨年急逝しなかったら。
 もしかしたらゲスト出演もあったかも。昨年の訃報は衝撃だった。せめて10月15日、鎌倉で開催された「ショパンを弾く」ライブに行けばよかった。もっと積極的に情報を仕入れていれば……

 開演を知らせるブザー。
 予定より5分遅れて、幕が開いた。
 
 中央に紙ふうせんのふたり。上手に後藤さん、下手に平山さん。
 その後方、平山さん側にコーラス&ギターのすぎたさん。後藤さん側にはベースの浦野さん。浦野さんの横からステージ前方にカーブを描くようにラ・ストラーダ゙のメンバーが並ぶ。第一ヴァイオリン(リーダー金関環さん)、第二ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ二人。一人は安田さんだ。
 一番下手はピアノの今出さん。

 第一部のオープニングからフルメンバーによる演奏だった。
 曲は「街を走りぬけて」。
 ピアノとギターにチェロの音色が絡まる。
 続いて「ささぶね」。
 あれ? 「なつかしい未来新聞」には2曲めとして「いつも心に青空を」がリストアップされていたのに。
 でも心ははずんでいる。「ささぶね」は紙ふうせんのファーストアルバム「またふたりになったね」、A面1曲めに収録されている。僕が最初に聴いた紙ふうせんの楽曲だ。アルバムの前にシングル「いかつり唄」をリリースされているのだが、なぜか僕は購入していない。1974年の12月、アルバムを買ってルンルン気分で帰ってきて、どきどきしながらレコードに針を下ろしたことを今でもはっきり覚えている。前奏はギターのストローク。とても力強かった。
 アメリカ民謡に後藤さんが詞を書いた。

 ♪あなたと私の二人の夢を
 ♪乗せては浮かべた小さなささぶね

 何気ない言葉がきちんとメッセージになっている。
 以後、「ささぶね」は紙ふうせんのテーマ曲になった。僕の中では。


  街を走りぬけて/ささぶね

 
「OSAKA! JAPAN!」
 まず平山さんが第一声をあげた。ワールドツアー的な挨拶ということで笑いをとったあと、東日本大震災の話。
 後藤さんが引き取って言う。
「寺山修司の詩にこんなのがあります」
 
  さよならだけが人生ならば 
  また来る春は何だろう
  ……
  
 と、朗読しはじめた。

     ▽
 さよならだけが人生ならば
 また来る明日はなんだろう
     △

 というフレーズは知っていた。
 「幕末太陽伝」で有名な川島雄二監督が残した言葉として記憶したのか、それとも六文銭の歌だったか。
 寺山修司の詩ということを初めて知った。本当は〈明日〉ではなく〈春〉なのか?
 調べてみた。

 元は漢詩からきているのだった。
 唐の詩人が書いた「歓酒」。これを井伏鱒二が翻訳した。
 その転句と結句が

     ▽
 花に嵐のたとえもあるぞ
 さよならだけが人生だ
     △

 この詩に寺山修司がインスパイアされて「さよならだけが人生ならば」を書いたというわけか。
 この詩を紹介したあと、今年、震災後に福島の南相馬に行ってきたことを話しだした。そして被災者の方たちに贈る歌として取り上げたのが「放浪者の子守唄」だった。


 この項続く




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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