2011/11/18

 「紙ふうせんリサイタル2011 なつかしい未来Vol.6」(サンケイホールブリーゼ)

 その3から続く

 続いて平山さんのMC。
 震災支援コンサートを開催したことを前ふりに俳句を詠みあげた。被災者が投稿した俳句(俳人、西村和子選)にしたためられた言葉から連想させる歌を披露するという趣旨だ。
 最初の歌の「宵待草」。作詞は竹久夢二。もしかしたら神代辰巳監督の同名映画はこの歌がモチーフになっているのか。聴くとあの歌かとわかる。
 エンディングがかつてオペラ歌手を目指した平山さんの独壇場。まるでアリアの絶唱みたい。ゾクゾクきた。「ミリオン・ピープル」のオープニング、アーメンコーラス(ヘンデルのメサイヤより「祈り」)でも、クライマックスでとんでもないソプラノを聴かせてくれたが、まさにあの声。平山泰代オンステージが開催されるのはいつの日か。
 「月見草の花」はヴァイオリンがフィーチャーされていたのが印象的。

  放浪者の子守唄/宵待草/月見草の花/蛍


 後藤さんが青春時代の思い出を語る。大学時代に13枚の便箋に想いのたけを綴ってラブレターを出したという。相手は平山さんだろう。
 こんなMCの後に披露されたのが「十六夜日記」。この曲も懐かしい。東芝EMIからCBSソニーに移籍してリリースしたシングル「冬が来る前に」がスマッシュヒット、そのあと通算3枚めのアルバムとなる「再会 ―新たなる旅立ち」が発表された。紙ふうせんの中で一番売れたアルバムだと思う。そのB面3曲めに収録されている。

 紙ふうせんの楽曲は、「竹田の子守唄」をはじめとする国内の民謡(伝承歌)や海外のフォルクローレ、あるいは「翼をください」以外後藤さんや平山さんの作詞作曲が基本だ。あくまでもオリジナルを尊重する姿勢を昔から貫いている。その割合は後藤さん9、平山さん1といった感じ。
 「十六夜日記」は後藤さんの作曲だが、珍しく第三者が詞を書いている。作詞は橋本正樹さん。70年代はじめ、「竹田の子守唄」のルーツを求め、ルポルタージュ、創作、関係者による座談会等をまとめた「竹田の子守唄」という本を自主出版して、永六輔氏に感銘を与えた方である。後藤さん、平山さんと同じ高校、つまり同級生だ。
 河内音頭のオーソリティーで、毎年夏には錦糸町の「河内音頭大盆踊り」に出演(?)するため、関西からやってくる。「竹田の子守唄」所収の「物語 竹田の子守唄」の朗読する許可を得るため一度伺ったことがある。
 大衆演劇の研究家であることを知ったのは今年。1月に「あっぱれ!旅役者列伝」(現代書館)を上梓したのだ。3月、東京某所で開催されたあるセレモニーで本人から直に購入した。実際に読んだのは秋なのだが、若いとき、旅役者のルポを書くため、劇団を追いかけて、一緒に生活していたというのだ。
 後藤さんは、かつて日本の民謡を求めて、ソニーのデンスケを持って四国等を旅している。同じように橋本さんは大衆演劇を求めて九州等を旅していたわけだ。
 橋本さんは詩も書くのだろうか? 紙ふうせんに提供したのは「十六夜日記」だけのようだが。
 今出さんのピアノが耳に心地よい。

 「雪の降る夜は」も感慨深い。赤い鳥のラストアルバム「書簡集」A面5曲め。平山さんの作詞作曲。しんしんと雪が降っている光景があざやかに浮かんでくる。
 後藤さんがギターを持ち替えた。レコードと同じくチェロをフィーチャーして、金関さんのヴァイオリンとの協奏。

  こんなに静かな
  雪の降る夜は
  ただ黙って 歌を聴いている
  ひとりの夜なら
  灯りともし
  ふたりの夜なら見つめ合い

  こんなに静かな
  雪の降る夜は
  あなたの窓辺も
  雪が積もるよ
  手紙に添えた 桜草も
  こごえているでしょう
  あなたのそばで

 そういえば「書簡集」には深町純さんがゲストミュージシャンで参加しているのだ。紙ふうせんのデビューシングル「いかつり唄」のアレンジを担当している。
 
 その「いかつり唄」が第一部のラストを飾る。
 三陸沖の漁師たちへの鎮魂の意味で今回取り上げたとのこと。ホリゾントは夕焼けをイメージしたオレンジ一色。音が厚い。
 演奏中に緞帳が下がってきた。下がると同時に終了。
 一息ついてから平山さんの声。「15分の休憩です」

  十六夜日記/雪の降る夜は/いかつり唄


 この項続く




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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