2011/11/18

 「紙ふうせんリサイタル2011 なつかしい未来Vol.6」(サンケイホールブリーゼ)

 その4から続く

 休憩中、後ろの席に座っている男女の会話が聞こえてきた。後藤さん、平山さんと同世代、たぶん学生時代は、ギターを抱えてフォークソングを歌っていたのだろう。
 ハイ・ファイ・セットを話題にしていた。別に聞く気はなかった。でも、耳に入ってきてしまうのだからしかたない。女性の旦那さんが山本俊彦さんの大学の後輩になるとか。いや、先輩だったっけ? まあ、いい。
 ならけっこう詳しいんだ、なんて耳をそばだてていたら「ハイファイセットって何人?」という女性の問い(もちろん関西弁)に男性が「4人」。違うって! 男性はメンバーの不祥事についても、トンチンカンなことを言っていた。思わず後ろを振り向いて解説したくなったが、グッと我慢……。

 15分が経過、またまた後藤さんの影ナレが聞こえてきた。
「お客さん、トイレはもうあきらめて」

 第二部開始。

 緞帳があがると白の衣装の平山さんと赤いシャツの後藤さん。後方には浦野さん(ベース)とすぎたさん(ギター&コーラス)。
 ちなみに、第一部のふたりの衣装は、第二部とは好対照なシックな装いだった。平山さんは濃紺(?)のタンタン衣装(昨年参照)、後藤さんは黒の人民服(?)みたいなジャケットで赤い襟が目立っていた。なんのことはない、後藤さん、第二部ではジャケットを抜いただけなのだ。対して平山さんは第一部同様このリサイタルのために新調したのだろう。白がとても鮮やかに映えている。
 本人曰く「ピーターパンの衣装よ。女のピーターパン……ピーターピン?」
 女性になるとなぜパがピになるのかわからないけれど。

 まずは「竹田の子守唄」。本当ならばこの曲は第一部で演奏されるべきものだと思う。でも、このリサイタルの場合、第二部はいつもステージで披露されるレパートリーをラ・ストラーダのストリングスを加えた豪華な音で聴かせるという趣旨。「竹田の子守唄」がトップになるのは自明の理なのだ。雰囲気、というか観客のノリを考えたらPPMメドレーから始まる方がぴったりなのだけれど。

  竹田の子守唄/PPMメドレー ~レモンツリー・悲惨な戦争・パフ・天使のハンマー~


 後藤さんが今年亡くなった方を話題にする。音楽業界で知り合いお世話になった方たちだ。
「深町純さん――」
「深町さんは昨年でしょう?」
 すばやく平山さんの突っ込みが入る。この感覚、まさに夫婦漫才。
「長門裕之さん、それから中村とうようさん」
 長門さんは「ミュージック・フェア」の司会を夫人の南田洋子さんと担当していた。赤い鳥が何度も出演した音楽番組だ。そんな縁で後藤さんと平山さんの結婚の媒酌人になった。
 中村とうようの名を後藤さんから初めて聞いたのは10月に事務所を訪ねたときだ。後藤さんはとうようさんを音楽評論家として認めていた。

 ピアノの今出さん、ラ・ストラーダのメンバーを呼び入れる。
 「ホーハイホー」はヴァイオリン、「虹」はすぎたさんのハーモニーが印象的。すぎたさんの声に関しては、今回、最初から聞えてきて耳に残る。PPMメドレーのときなんか、ずっとすぎたさんのパートに集中していたほどだから。

 後藤さんがバックを紹介する。
 ストラーダのメンバーの紹介になったら、急に紙を取り出した。

 あいはらひとみ:第二ヴァイオリン
 うえだまきお:ヴィオラ
 なかむらみよ:チェロ
 安野ひでゆき:チェロ

  ホーハイホー/虹


 金関さんの紹介ではソロでヴァイオリンを弾いてもらうことになった。
 やった! 昨年のカウントダウンライブの感動が甦った。
「今の季節にぴったりの、皆さんよくご存知の曲です」
 そう言ってから、金関さんが弾きだしたのは「もみじ」。
 悪魔のように繊細で天使のように大胆だった。
 弾き終わって後藤さんが一言。
「『奥飛騨慕情』でした」
 場内爆笑。

 続いて「翼をください」を皆で合唱する。ストラーダの前奏が良い。
 「Route‐43」ではいつものように、間奏でバックが一人ひとりソロをとる。すぎたさんのギター、浦野さんのベース、金関さんのヴァイオリン、ラストが今出さんのピアノ。
 平山さんがもみじ狩りを話題にする。
「皆さん、27日、王子動物園へもみじ狩りに行きませんか?」
 翌週の日曜日、神戸市灘区にある王子動物園ホールで紙ふうせんのコンサートがあるのだ。
 「なつかしい未来新聞」によると、今回のチラシのバックのレンガは王子動物園の西隣にある「神戸文学館」の壁だとのこと。
 後藤さんがギター持ち替えて「冬が来る前に」。ラストは定番の「船が帰ってくる」。

  翼をください/Route‐43/冬が来る前に/船が帰ってくる


 一度退場。
 でもあらかじめ決められたアンコールがある!
 何が演奏されるのか「なつかしい未来新聞」に書いてある!
 最初は「紙風船」。
 続いてピアノ伴奏で「故郷」をみんなで合唱。
 最後に「まつり」。ピアノにしびれた。
「もうこれ以上アンコールはありません」
 後藤さんの一言に会場がまた爆笑して、リサイタルは終了になった。


  【アンコール】

  紙風船/故郷(ふるさと)/まつり


     ▽
畠山重篤
「これまでの経験だと、津
波の後の海は、カキやホタ
テの成長が倍以上、早い。
人間さえ元気なら、海は元
通りになる」

阪神大震災の時、僕らは
自然を恨みはしなかった。
 この国に住んでいる以上
「しゃないな」。
 もう少し、生きろ!と与
えられた命に感謝すらした
ものだ。
 家族、友人、町、職場、
全て失った人たちも決して
自然を恨みはしないはず。
海は必ずよみがえる。自分
には海しかない。
東北の人たちと共鳴したい。

       紙ふうせん
     △

  なつかしい未来新聞 より




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プロフィール

kei

Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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