本日、上映初日ということで「誘拐報道」に駆けつける。開場を待つお客さんの数にびっくり。整理番号79だもの。
 最初にサプライズトークで伊藤俊也監督の挨拶があった。お客で来ていたところ急遽決定したとのこと。
 終わってから、ロビーで質疑応答。
 もちろん、いくつかお尋ねしましたよ~。

          * * *

2012/01/04

 「渋滞」「八つ墓村」(銀座シネパトス)

 「渋滞」は封切時に劇場で観ている。
 当時の日記にこう書いた(10年のブログで一度取り上げているが改めて記載)。

     ▽
 1991/05/13

 シネマアルゴ新宿で「渋滞」を観る。
 監督・黒土三男、主演・萩原健一。
 ショーケンらしい演技を堪能できる映画だった。
 ショーケンの“かまえた演技”というものがどうも好きになれない。
 “渋さ”などと表現する人がたまにいるが、冗談ではない、ショーケンに渋さなど似合うはずがない。
 以前、NHKで放送されたショーケン主演のドラマ「旅のはじまり」(脚本・黒土三男)に相通じる主題を持つロードムービー。
 確かに、そんなバカなと叫びたくなるシークエンス(たとえば、年末に千葉から四国に自家用車で帰省するというのに、のん気に早朝出発したり、浜松あたりで予約もなしに旅館に泊まろうとしたり)もあるが、きちんと計算された映像作り、心地よい音楽、そして静かな感動……。
 面白い映画だ。
     △

 「瀬降り物語」で渋いショーケン(の良さ)を再認識したので、〈ショーケンに渋さなど似合うはずがない。〉は撤回。また、浜松は沼津の間違い。それ以外は今も同じ感想だ。
 とはいえ、やはり〈そんなバカなと叫びたくなる〉ことには言及しておく必要がある。
 少し前に現在のドラマ(映画)のシナリオの質が落ちていることを書いた。「家政婦のミタ」の、あまりに見えすいた展開を批判したのだが、「ステキな金縛り」のがっかりした箇所にも触れた。面白くて楽しい映画だけれど肝心要のところで手を抜いていると。
 20年前のこの映画にも同じことがいえるのだ。

 主人公夫婦が何の対応もせずに年末に自家用車で四国へ帰省する、東名高速の渋滞に嫌気して降りるとあっけらかんと(予約なしで)温泉旅館に泊まろうとする。これはあまりにもひどすぎる。奥さんの実家がある山梨や長野に帰省するんじゃない。四国だ、四国。だったら、当然帰省ラッシュを考慮して、真夜中に出発するくらいの慎重さがなければ絶対におかしいって。
 東名が渋滞になるころには××まで行っているから、問題ないだろうと思っていたら、首都高で大事故が起きて大渋滞、予定が大幅に狂ってしまった、くらいの設定があってほしい。でないと、この夫婦(ショーケン&黒木瞳)は大馬鹿ですよ。

 つまり、映画は肝である渋滞に巻き込まれた夫婦の顛末を描くために、なぜそうなったかの部分を「年末にクルマで帰省したら渋滞に巻き込まれました」ですませてしまう。それじゃ観客は納得できない。
 1991年当時、もう盆や正月の帰省ラッシュは大きなニュースになっていた。だったら、渋滞に巻き込まれるまでをもう少し知恵を絞って描いてほしいじゃないか。渋滞にはまった夫婦の苦労に共感できないと意味がないのだから。
 温泉旅館のくだりも何かしらエクスキューズが必要だろう。こんな時期に予約なしで泊まれる旅館なんてあるのかと心配する黒木瞳に、それががあるんだとほくそ笑むショーケン。仕事の関係で知った穴場(?)なのだが、行ってみると、なんとわけありで休業中、なんていうのならまだわかるのだが。最悪、町の観光案内所にかけこむか、電話するだろう。
 それから、渋滞に巻き込まれてからというもの、この夫婦はよく喧嘩する。喧嘩というか、ショーケンが黒木瞳に怒ってばかりいるのだが、完全に自分勝手の言い分なので、これまたショーケンに共感できない。

 なんて前半の展開に文句をつけながらも、夫婦や親子の絆に惹かれていく自分がいる。
 故郷で待つ両親の気持ちを考えるとたまらなくなる。久しぶりに息子に会える母親(東恵美子)の喜びとか、寡黙に帰りを待っている父親(岡田英二)の姿とか。涙がでてくる。
 寒ブリの刺身のなんと美味そうなことか!
 ケニー・Gのソプラノサックスに耳を洗われる。一枚CDを購入したのは、この映画の影響だったのか?

 ショーケンのごくごく普通のお父さんが良い。あの襟なしジャンパーなんてよくぞ着たもんだ。かっこいいファッションではないのに、でもどことなくなんとなくいいなあと思う。
 この普通のお父さんイメージはTVドラマ「課長さんの厄年」「冠婚葬祭部長」と共通するものがある、と思ったら、「課長さんの厄年」の放送は映画公開の2年後なのだった。自分の中では同時期になっていた。
 ショーケンの映画を続けて観るとよくわかる。必ず共演女優との濡れ場があるのだ! この映画でも黒木瞳と安旅館の階段で抱き合うのだけれど、黒木瞳の、ショーケンの腰あたりから左右に突き出る素足の動きに欲情した。それらから外出時のちょっとおめかしした黒い服(スーツ?)にも。

 黒土監督の「蝉しぐれ」への想いがわかるショットがこの映画にある。
 黒木瞳と喧嘩して、旅館を出たショーケンが立ち寄るスナック。客がいない店内ではママ(かたせ利乃)が一人で本を読んでいる。その本が単行本の「蝉しぐれ」(文藝春秋)なのだ。カウンターの上に置かれた本のインサートは、黒土監督の映画化宣言ではないか。

 クレジットの、岡田裕(ニュー・センチュリー・プロデューサーズ)に複雑な思い。もう二度とショーケンの映画をプロデュースすることはないのだろうか。


 この項続く




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プロフィール

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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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