19日(木)、MOVIX川口「ミッション:インポッシブル ゴーストプロトコル」。
 21日(土)、銀座シネパトス(「226」&)「いつかギラギラする日」。
 そして本日(22日)は、桐生市市民文化会館小ホールの「きりふ寄席」。

          * * *

 野村芳太郎監督「八つ墓村」を観たことで、先週、市川崑監督版のDVDを借りた。ついでに小説を図書館から借りて読んでみた。トヨエツが表紙の単行本。崑監督「八つ墓村」の公開に合わせて角川書店から出版されたのだろう。

 崑監督の「八つ墓村」は封切時に劇場で鑑賞して以来だ。この映画を観ることで野村監督版では「?」だったことがいろいろ理解できた。特に辰弥の母親がどのようにして父親と一緒になったのか。映画には回想シーンがあったが、最初の人物が誰なのかわからなかった。
 それにしてもこの父親はとんでもない奴である。妻がいるにもかかわらず好きになった女をてごめにして自宅に監禁、産まれた子どもが他の男のものと知ると、赤子に復讐。身の危険を感じて女が失踪すると、村人32人を惨殺するのだ。

 こんな男を田治見家の跡取りとして、その行いを容認し、32人殺しのあとは鍾乳洞で匿い、殺したあとは落武者の鎧を着せて奉るのが、大叔母の双子の姉妹。八つ墓村のきんさん、ぎんさんこと小竹と小梅だ。
 野村監督版では、市原悦子と山口仁奈子が白塗りメークで演じていてその大胆なキャスティングに驚いた。崑監督版では常連・岸田今日子の二役。これがまた上手い。大胆なメイクと演技で、原作の猿のようなキャラクターを体現していた。

 封切時から崑監督版の方が原作に忠実、と思っていたのだが、原作を読むとそうでもないことがわかった。もちろん、基本ラインは崑監督版の方が原作には近いのだけれど。
 小説「八つ墓村」は辰弥の一人称で書かれている(冒頭のみ第三者の視点)。原作も金田一耕助が主人公ではないのである。崑監督版が原作と違うのは、そんな原作を、これまでの石坂浩二が主演した5作同様に展開されている点にある。連続殺人が起きて、予定(?)の殺人が終ると金田一が真犯人を特定、以降、犯人がどのように殺人を行ったのか、解明していく。で、金田一が事件現場から去っていくところで「完」。原作には、こうしたお約束のくだりがほとんどないのだ。

 野村監督版の金田一は、村人から事件の解明(犯人が犯人である証拠)を求められて、「そんなことよりも」とあっけなく拒否してしまうくだりがある。それもどうかと思うが、崑監督版の証拠(映画のオリジナル)はあまりにもみえみえだった。
 野村監督版+崑監督版≒原作といったところか。
 原作では辰哉の恋愛、鍾乳洞における宝(落武者・尼子が隠した三千両)探しも描かれるのだが、両作品ともカットしている。
 原作を読んだことで、辰哉役のショーケンが似合っていることがわかった。

 ところで、16日(月)の朝日新聞「文化の扉」で芥川龍之介が特集されていた。その記事の中で橋本忍が黒澤明監督「羅生門」に関する裏話を披露していた。
 当時、夏目漱石、森鴎外、芥川龍之介という3人の有名な文学者のうち、なぜか芥川の作品だけ映画化されていなかった。橋本忍はその理由を求めて芥川の短編を二三十読んだ。中に「藪の中」があって、今までにない時代劇になると思ってシナリオ化した。それが巡りめぐって黒澤明の目にとまった。黒澤監督が言うには、映画化したいがいかんせんシナリオ「藪の中」は短すぎる。そこで別の短編「羅生門」を付け加えた。
 その経緯はすでに知っていたが、次の言葉が興味深かった。

     ▽
 原作を脚本にする時は圧縮する方が良くなる可能性が強くて、引きのばすとダメなんだ。
     △

 だから、(芥川文学の映画化に)誰も手をつけなかったんでしょうね、となるのだが、これは意外だった。長編小説を映画化すれば、上映時間の関係で、数々のエピソードを削らなければならない。そうなれば、原作の単なるダイジェストになってしまう場合がままある。逆に短編を素材にすれば、映画オリジナルのエピソード等を付け加えられて、豊かな内容になる。とずっと考えていたからだ。それが、まったく逆だったとは。
 考えてみれば「砂の器」も「八つ墓村」も原作を圧縮しているのだ。

 


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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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