2012/01/12

 「ワイルド7」(MOVIX川口)

 少年キングに連載していたマンガ(作・望月三起也)は知っていた。小学生の高学年。当時大人気だった。バイクにもガンアクションにもそれほどの興味はないので、個人的にはあまり興味はなかった。だからマンガは読んだことはない。
 TV化されたドラマ(30分のTV映画作品)は観ていた。毎週チャンネルを合わていたような気がする。怪獣やヒーローが登場しない、より現実的な科学特捜隊やウルトラ警備隊が活躍するドラマという認識だったのか。調べてみたら中学1年の秋から2クールの放映だ。内容についてはほとんど覚えていない。隊長役が川津祐介だったことくらい。

 アニメ「宇宙戦艦ヤマト」はTVも映画も興味がなかったので、逆に実写映画化の「SPACE BATTLESHIP ヤマト」にはVFXが関心の的だった。キムタクの古代進がアニメのイメージにほど遠いことなんて気にならなかったし、森雪のキャラクター改変も許せるものだった。特撮仲間の友人に誘われ劇場に足を運んだ
 「あしたのジョー」の実写映画化は許せなかった。マンガにもアニメにも思い入れがあるからだ。劇場鑑賞はいうに及ばず、DVDも観るつもりはない。

 この心情からすると、原作のマンガにもそのTV化作品にも思い入れのない「ワイルド7」が実写映画化されてもすんなり受け入れるのでは? そう思われても仕方ない。
 ところがどっこい、映画化を知ったときに「何バカなことを!」と舌打ちした。「ワイルド7」を日本で映画化しても貧相な作品になるに決まっているではないか! それも主演が瑛太。バイクアクションがまるで似合わない俳優をなぜ主役にするんだ? 今旬だからという理由だけでオファーなんかしてほしくない。
 こういうマンガこそハリウッドで映画化されるべきだろう。
 「踊る大捜査線」の映画化作品で、日本でもハリウッドばりのカメラワークで作品世界を構築できることは証明された。とはいえ、ことアクション、それもバイクやカースタントになるととたんにショボクなってしまうのが現状だ。

 その昔、70年代に篠原とおるの劇画「ワニ分署」が映画化された。見るからに旧型のクルマと新車が登場してきた。たぶん旧車の方は途中で破壊されるんだろうなあと思っていたらまったくそのとおりの展開。情けなくなった。
 「太陽を盗んだ男」のアクション、カースタントは迫力あったが、それも日本映画に限定してのこと。「いつかギラギラする日」も同様。韓国映画やフランス映画が、その手の映画でハリウッドばりの作品をものにしているが、日本映画は一歩も二歩も遅れているのである。

 まるで観る気がしない映画だったが、予告編を何度か目にするようになって気が変わった。もしかすると、こちらのイメージするショボさを打破してくれる作品になっているかもしれない。監督が羽住英一郎だからだ。
 劇映画「海猿」シリーズ第二弾、「LIMIT OF LOVE 海猿」のヴィジュアルに感銘を受けた。沈んでいく大型フェリーはもちろんCGなのだろうが、とてもリアルな描写で、役者たちの演技(セット撮影)としっかり融合し迫力ある映像を構築してくれた。
 第三弾「THE LAST MESSEGE 海猿」はTV放映で観たのだが、これまた日本海(福岡沖)に浮かぶ巨大天然ガスプラントの爆発炎上、崩壊シーンが特筆ものだった。第二弾でも垣間見えた過剰演出によるお涙頂戴シーンに嫌気して劇場の大スクリーンで観なかったことを後悔したものだ。

 羽住監督の画作りなら「ワイルド7」もかなりマシな映像になるのではないか? そんな思いと深きょん・ハードヴォイルド(?)への想いが交錯したのだ。

 開巻のプロローグ的なエピソード、銀行強盗の一味を追跡し殲滅するまでのワイルド7たちの活躍は映画的興奮を誘うものだった。バイクの疾走はかなりの迫力だし、カメラワークも素直に「かっちょええ」と叫べるセンス。瑛太をはじめとする7人のメンバーがちゃんと大型バイクを運転している(運転している風に見える)のはこの映画が成り立つ重要な要素だ。
 続くバイオテロエピソードもなかなかのもの。
 その過程で描かれる公安調査庁情報機関〈PSU〉建物内の、何重にも張りめぐらされた侵入防止策など、クライマックス(アクション)にワイルド7の面々がどうこのトラップをくぐり抜けていくのかの伏線になっているのだろうと大いに期待した。

 ところがそのあとがいけない。
 あっけなく真の悪党がわかってしまってからは、もうイケイケドンドン。伏線なんてどうでもいい。力技でねじ伏せて「なんだそりゃ!」。ただ単に銃撃戦とバイクアクションが繰り広げられるだけ。スリルもサスペンスもあったもんじゃない。
 それも、敵(警察SAT)の攻撃は容赦ない。圧倒的な数による総攻撃。対してワイルド7は隊長から射殺は厳禁、威嚇だけと命令されている。どう戦えというのか。だったら頭脳戦かと思うと成り行き任せ。普通だったらワイルド7全員死亡だ。
 まったくシナリオが練られていない。一般車両がまったく走っていない道路というのもおかしいのだが、まあ、そこらへんは日本の撮影事情を慮って目をつぶろう。しかし、このジャンルの映画で観客をハラハラドキドキさせてくれないなんてどういうことか!
 メカニックのディティール描写にも気をつかってもらいたい。

 映像はとにかく魅せてくれる。ラスト、お台場からの空撮はまるでマンハッタンかと見紛うばかりの景観でスタッフはしてやったりの気分なのではないか。

 瑛太の飛葉大陸は悪くない。サマになっている。
 それ以上に隊長役の中井貴一が貫録十分でいい感じ。敵役の吉田鋼太郎は舞台で鍛えた美声が魅力。
 深きょんは? よろしいんではないですか。

 タイトルロールで流れる主題歌はL'Arc-en-Ciel。これが決まっているのだ。素顔の出演者たちがキャメラの前でおちゃらけるビハインドシーンなんてなければもっとよかったのに。
 そういえば、あるショットに原作者の望月三起也が写っていた。陣中見舞いに来たのだろうか。そういう遊びもいらないのでは?




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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