川藤正幸の急逝にショックを受ける。自宅火事による死だなんて。
 昔、TVブロスが創刊されて毎号購入していたころ、連載コラムを楽しみにしていた。
 小林信彦のコラム(「コラムは笑う」だったか?)にまだ業界に入る前の川藤氏が登場する。何か小林さんに送ってお礼を言われるのだ。

 合掌

          * * *

2012/01/31

 「ヒミズ」(ヒューマントラストシネマ有楽町)

 翌日の映画サービスデーまで待てばいいのにと思う人もいるかもしれない。前日でも1,000円だったのだ。

 昨年の12月、池袋シネ・リーブルで「恋の罪」を観たときにテアトルシネマグループのメンバーズ会員になった。
 会員はテアトル系の入場料がいつでも1,300円、火金は1,000円になるのだ。テアトル系は毎週水曜日がサービスデーで一律1,000円。とてもありがたい制度なのだが、水曜以外でも割引、それも火金はサービスデーと同じ1,000円と知ってその場で即会員申し込みの手続きをとった。
 特典として無料チケット、1,000円(で入場できる)チケット、各1枚もらった。これを利用して、今年になってから「幕末太陽傳」や「宇宙人ポール」を観たのだ。

 「恋の罪」に続く園子温監督の新作「ヒミズ」が公開されている。国内外で話題になって、主演の二人は海外の映画賞で受賞したとか。だからなのか、先週発売の週刊新潮によれば、連日多くのお客さんで賑わっているという。
 映画サービスデーだと混雑が予想される。なので、前日に鑑賞したというわけだ。
 19時50分の回。確かにお客さんがたくさんいた。両隣ともカップルだった。

 原作のマンガは読んでいない。というか、まったく知らない。
 最近、人気マンガのTVドラマ化、映画化といわれても、タイトルすら知らないことが多い。当然小谷実という漫画家の名前も。自分が歳をとったと感じる瞬間だ。「稲中卓球部」ならタイトルだけは知っているか。
 タイトルのヒミズとは、モグラの一種だった。漢字で〈日不見〉と書く。
 主人公の姓が清水、でも主人公に想いを寄せるヒロインが江戸っ子でシミズと言えずヒミズになってしまう、なんていうことではなかった。いや、それならヒミズがシミズになって、か。
 つまらない冗談はこっちに置いておいて。

 「ヒミズ」は「冷たい熱帯魚」一座による新作映画というようなテイストがある。出演者が神楽坂恵、でんでん、吹越満、渡辺哲、諏訪太郎、黒沢あすか……なんだもの。
 金融ローン社長役のでんでんは、もろ熱帯魚店のあの社長のイメージ。吹越満と神楽坂恵はカップルでホームレスやっていて、仲間は渡辺哲、諏訪太郎。黒沢あすかはヒロインの母親で、その虐待ぶりといったら……。
 そんな中にあって、主役の染谷将太(住田)と二階堂ふみ(茶沢)が圧倒的な存在感を示す。映画の冒頭から続くふたりの一筋縄ではいかない関係(とんでもなく斬新そして新鮮)は原作どおりなのか。それとも映画のオリジナル? 
 〈575〉ゲームには笑った。俳句愛好者たちの間では流行っていることなのか。怒りを覚えるたびに石を拾ってポケットにしまう行為とか。茶沢の部屋に貼り巡らされている住田語録がこれまた愉快、痛快。読んでいて思わず声たてて笑いそうになった。

 園子温監督は、相変わらず登場人物の性格を映像で語らせるのが上手い。TVで放映できない内容だというところも。
 前半は異様に短いカット割りが続く。1カット5秒あるかないか。住田が事件を起こすあたりから(いや、もうちょっと後あたりかな)、普通(?)になる。住田の心情(イライラ感)を反映させたカッティングか。

 予測がつかない展開にも目を瞠った。
 昔、ごく短い期間だったけれど、フリーの制作として働いたことがある。ある企業PVを制作する事務所で働いたときのこと。
 構成と演出担当の社長とその助手二人という小さな事務所なのだが、この社長が劇映画のシナリオも書いていて、その実力は業界では有名だと耳にした。もちろんクレジットされない、あくまでも黒子に徹しているのだと。押井守が一躍有名になった劇場版「うる星やつら」のシナリオもほとんどこの社長が手直ししたという。直接本人から聞いた。
 当時はシナリオライターになる夢があった。それを知った社長がシナリオを書く際の極意を教えてくれた。
 曰く「正常と異常を繰り返すんだ」
 園子温監督の映画って、この正常と異常がくんずほぐれつしているような気がしてならない。「やさしい熱帯魚」「恋の罪」「ヒミズ」の3本しか観ていないのだけれど。

 「恋の罪」以上に詩の朗読が効果的だった。ヴィヨン詩集の一編だと文庫本のアップでわかる。詩の朗読も原作にはあるのだろうか。オリジナルだと思うのだが。

 スリの常習犯役の窪塚洋介がいい。久しぶりに見るような気がする。目のあたりがNHK大河ドラマ「平清盛」に出演している三上博史(鳥羽上皇)を彷彿とさせる。
 窪塚洋介と渡辺哲が大金を盗みに、ある男の部屋に忍び込むシーン。TVをつけると評論家の宮台真司が福島原発の問題を語っている。そのコントラスト。このブラックな笑いがたまらない。園子温の映画が癖になるのは、こういうところだ。

 東日本大震災に見舞われたことで、脚本が大幅に変えられたという。もちろん、上のシーン以外でも、被災地の映像が挿入されたり、登場人物の中に被災者がいたりと、2012年の映画として意味がある処置だとは思う。
 劇映画として最初に震災を扱った名誉が欲しかったとか、世間に対するアピール効果を狙ったとか、そんな低次元な問題でないこともよくわかっているつもりだ。
 とはいえ、震災を取り入れなくても十分成り立つ映画だったのではないか。ラストに頬を伝わったひとすじの涙はたぶんそこに反応したのだから。
 



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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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