先々週、TV放映されたので、リハビリを兼ねて劇場公開時のレビューを夕景工房から転載する。
 クライマックスの愛の語らいは観ていられない。
 とはいえ、映画が大ヒットした要因は、このシークエンスが感動を呼んだからなのだろう。

          * * *

2006/07/12

 「LIMIT OF LOVE 海猿」(品川プリンスシネマ)

 もうとっくに上映が終了したと思っていた「LIMI OF LOVE 海猿」が品川でレイトショー公開されている。先週知っていてもたってもいられなくなった。

 1作めの「海猿」は、一般上映終了後だったか、サンシャイン劇場の特別上映会のチケットをもらった。にもかかわらず、イマイチ一人で行く気になれず、そのままに無駄にしてしまった。当然TVシリーズも観ていない。そんなわけで、この映画第2弾にも興味がわかなかった。プロット自体は面白そうだった。が、何度か目にした予告編は少々泣きの要素が入っていてその臭さが気になった。本当なら無視してしまうところなのだが、口コミの評判がやけによくて気になってしかたなかった。

 思えば海上保安庁官(ダイバー)たちの活躍を描く物語なのだから、プロフェッショナルな男たちの動きが堪能できるわけだ。

 前作もTVも観ていないので、話がわかりづらかったらどうしようという心配もなくもなかったが、ストーリー自体は独立したもので、「海猿」初心者(?)でも十分楽しめる内容だった。
 鹿児島沖で座礁した大型フェリーの救助活動をとおして、若き海上保安官(伊藤英明)の愛と勇気を描く海洋サスペンス。
 ストーリー、ヴィジュアル、ともに日本映画ではあまり類を見ない、また成功しそうにないジャンルの映画であるが、見事堂々たる重厚な作品に仕上がっていた。
 もちろんストーリー的には、ご都合主義も垣間見られる。

 クライマックス、船外に脱出するため、主人公は要救助員二人を連れて20メートル強の梯子をのぼらなければならない状況。主人公は大腿部を負傷して歩けない男を背負い、妊婦を先に自分がフォローする形で登りはじめる。半分ほど登ったところで、フェリーが大きく傾き、その衝撃で妊婦が転落、と思ったら、主人公が片手でキャッチ。もう片方の手だけで、背中の男と妊婦を支えるのである。心拍数が上昇する、それこそ手に汗握るシーンを固唾を呑んで見守っていると、力つきて梯子のパイプを握る手を放してしまう……

 フェリーはあっというまに沈没。しばらくは海の底。
 その前に動けなくなってその場に残った後輩を含め、4人が助かるとはとうてい考えられない。いや、映画なのだから野暮なことはいわないとしても、どうしても腑に落ちないことがある。梯子の高さは少なくとも10m以上あった。そんな高さから落ちたらどうなるか。3人に何の怪我もないことが不思議でたまらないのだ。なにかしらのエクスキューズが必要だろう。沈没したフェリーの中で、息のできる空間があるというものとってつけたような設定だった。

 恋人(加藤あい)と携帯電話を通じて愛を語らうのはいいのとして、それがスピーカーを通じて至るところで音声が流れるというのは、やりすぎだろう。人はこういうところに涙するのか。僕にはどうにも理解できない。予告編でまさに引いたのはこのシーンだった。その後の上層部に直訴して救助しにいく隊員たち、とくにリーダー石黒賢の表情に胸が熱くなったのだけれど。
 でも、まあ、構成、状況説明を〈画〉で的確に見せてくれる演出を特筆したい。そしてなにより迫力あるVFX。傾いたフェリーはCGなのだろうが、まったく違和感なく観ていられた。あるいはヒロインの横をすれすれに飛んでいくヘリとか。そして船が徐々に傾いていく際の軋み音の効果的な使用。これが怖かった。
 
 何よりどんな緊迫感あふれるシーンにも適度なユーモアをまぶしているところに好感を持った。船内に取り残される一般人、大塚寧々と吹越満のキャスティングが光る。
 「ポセイドン」より数倍面白い。観終わった後に心に残るsomethingの有無だと思う。

 このスタッフで「亡国のイージス」が撮られていたら……
 この感覚で、新作ウルトラマンの特捜チームを描ければ……

 映画の後、入口の喫煙コーナーで紫煙をくゆらしながら、そんなことを考えてしまう私であった。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町のブックカフェ二十世紀で働いています。さまざまなイベントを企画、開催していますので、興味あれば一度覗いてみてください。

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