「マンガ家入門」1969-70?

 マンガを描いて投稿しようと思ったのは「少年ジャンプ」の影響だと思う。というか、当時、誌上でマンガ原稿を募集していたのは「少年ジャンプ」だけだった。確か、「フレッシュジャンプ賞」という名称だったのではないか。小学4年生のころである。

 応募するにはきちんと描き方を学ばなければならない。そう考えて入門書を買ってきた。秋田書店から出版されていた「マンガのかきかた」。その流れで同じ秋田書店の「マンガ家入門」を手に入れたのだった。著者が石森章太郎のマンガ入門書である。

 表紙は自宅の書斎で、自身が生み出した代表的なキャラクターと戯れる二枚目の青年、石森章太郎。ある種の暖かさを感じるイラストだ。それが裏表紙になると、大勢のキャラクターが騒ぎ出して収拾がつかなくなって慌てるいつもの(三枚目)自画像となる。その落差は「サイボーグ009」を代表とするストーリーマンガと「テレビ小僧」等のギャグマンガのようだ。

 「マンガ家入門」にはテキストとしていくつかの石森マンガが収録されている。その中で特に目を引いたのが「龍神沼」である。プロデビューしてまもないころに描かれた少女マンガ。

 ある夏の日、主人公の青年が久しぶりに訪れた郷里を舞台に、村祭りで露呈する為政者たちの悪事と彼らに征伐を加えようとする龍神沼の謎の美女、青年に恋心を抱くいとこの少女のドラマが交叉する。叙情性と伝奇性が見事にミックスされた作品だった。自然描写、心理描写、暖かいペンタッチ等、子ども心に良く出来たマンガだなあと思った。

 続編「続・マンガ家入門」は、「マンガ家入門」を読んだ読者からの質問一つひとつに石森章太郎が答える、いわゆるQ&Aで成り立っていた。写真でマンガを描くための道具が紹介されたりして、実物を見たことがなかったカラス口にはかなり興奮したものだ。

 テキスト(のマンガ)で一番印象深かったのが「夜は千の目をもっている」。
 裕福ではあるけれど愛に飢えた孤独な姉弟と家庭教師に雇われた女子大生の、姉弟の父親と家に出入りする謎の男を巻き込んだサスペンスタッチのメロドラマだ。

 一読して映画になるなと思った。少女マンガの一編として描かれたのだろうが、人物の設定や世界観等々、すでに青年マンガの発芽が見られる。当時小学4年生か5年生の少年はそれを映画みたいと感じたのだ、たぶん。

 1967年に講談社漫画賞、翌68年には小学館漫画賞を受賞し、最初のピークを迎えた石森章太郎はこの時期、次のステップに向けて変貌していた。今から思うと、明らかにタッチが劇画のそれに変わっているのだ。

 当時、青年漫画誌なんて年齢的に立ち読みしたことはなかったので、「COM」に「ジュン」を、「ビッグコミック」に「佐武と市捕物控」を連載しているなんて知らなかった。ただし、タッチの変化は少年マガジンに連載されていた「リュウの道」で歴然だった。大胆なコマ割り、一部写真を流用したような背景……。

 吹き出しも独特な使い方をし始めた。台詞の入る吹き出しはそれまでコマの枠内に納まっていた。それを枠内はもちろんのこと、コマとコマの間にも流れるように置きだしたのだ。コマの中の、吹き出しにとられるスペースが少なくなった。つまり吹き出しに邪魔されることなく絵が描ける、というわけだ。と同時に、コマとコマの連続性を持たせることが可能になった。と個人的には思っているのだが。

 そんな状況の中で原作・石森章太郎なる「仮面ライダー」が登場したのである。1971年の春のこと。NETの新番組として新聞のTV欄で目にしたのだ。

mangakanyuumon
「マンガ家入門」 

zokumangakanyuumon
「続・マンガ家入門」

manganokakikata
「マンガのかきかた」


 この項続く




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新井啓介
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まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
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神保町のブックカフェ二十世紀で働いています。さまざまなイベントを企画、開催していますので、興味あれば一度覗いてみてください。

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