「仮面ライダー」登場! 特撮1971

 1971年。
 スポ根ブームで下火になっていた特撮番組がこの年甦った。再放送ではなく新作である。新しい特撮ヒーローたちがTVを席巻したのだ。

 まずフジテレビでピー・プロ制作「宇宙猿人ゴリ」(その後「宇宙猿人ゴリ対スペクトルマン」、「スペクトルマン」と改題)が始まった。
 土曜日の午後7時。この時間は日本テレビ「巨人の星」に夢中になっていたのだがチャンネルを替えることに迷いはなかった。「戦え!マイティジャック」のときは無視したというのに。この違いは何なのか、自分でもわからない。

 少し遅れてTBSで円谷プロ「帰ってきたウルトラマン」が始まった。ウルトラマンが復活したのである。金曜夜7時。
 この番組は開始前から「小学一年生」で大体的に特集していた。五歳下の弟が定期購読していたので、発売日に奪い取るようにして読んで情報を仕入れていた。

 「仮面ライダー」は土曜日夜7時半からNETで始まった。

 3つの特撮ブランドが同時期に甦ったのは偶然だろうか。

 「仮面ライダー」はひっそりと始まった印象がある。こちらに「宇宙猿人ゴリ」や「帰ってきたウルトラマン」ほど思い入れがなかったからかもしれない。

 チャンネルを合わせなかったのは、等身大ヒーローにそれほどの興味がなかったということもあるが、同じ時間帯に日本テレビでもっと面白そうな番組が始まったからだった。
 タツノコプロ制作の戦記アニメ「アニメンタリー決断」である。「宇宙エース」、「マッハGOGOGO」、「紅三四郎」等々、タツノコプロファンだった僕はこれまでにないアニメに興味津々だった。
 二、三回観たような気がする。期待したほどでもなかった。小学6年生に戦記ものは難しかったのかもしれない。そうなると裏の「仮面ライダー」がどんなものか確認したくなるのが人情だ。で、弟に「こんな番組があるんだぜ」とばかりにチャンネルを4から10に替えたのだった。

 初期の「仮面ライダー」は、かなり怪奇色が強かった。「悪魔くん」、「河童の三平 妖怪大作戦」の路線に月光仮面型のヒーローを加えたような感じがして、そこが魅力だった。

 地味な印象もあった。何しろバッタをモチーフにしたデザインで、黒と深緑のかなりダークなカラーリングなのだから。赤い目と赤いマフラーがポイントか。マフラーが石森ヒーローに欠かせないアイテムだとわかる。地味なところがカッコよかった。月光仮面に比べたらいかにも現代風で。バイクを走らせ風圧でベルトが回り、変身する過程も面白かった。

 主人公を改造するのが悪の組織というのは「サイボーグ009」と同じ構図だ。
 注目したのはオープニングのクレジット。オートバイを駆る仮面ライダーをバックに〈本郷猛・仮面ライダー 藤岡弘〉と出る。この表記が実に新鮮だった。実際、初期のころは藤岡弘自身がスーツを着ていたらしい。たぶん、顎の部分が小さい個人的には一番シンプルでかっこいいと思っているライダーだろう。

 「仮面ライダー」といえば、藤岡弘、を抜きにしては語れない。仮面ライダー=1号ライダー(本郷猛)=藤岡弘、というわけだが、たまに思うことがある。藤岡弘(当時の表記)が撮影中に怪我をしなければどうなっていたのだろう?

 今ではほとんど触れられることがなくなったが、「仮面ライダー」が子どもたちの間で大ブームを呼ぶのは、藤岡弘が怪我で降板してからのことなのだ。
 局も東映も始まったばかりの番組を終了させるわけにはいかない。次番組の準備なんてないし。窮余の策で、本郷猛(ライダー1号)はある任務のため海外に出て、代わりに一文字隼人(ライダー2号)が日本に赴任することになった。演じるのは佐々木剛。それまでもいくつかの大人向けドラマで見たことがある俳優だった。

 この交代劇で「仮面ライダー」の雰囲気が大きく変わった。それまでの怪奇色が払拭され、全体的に明るくなった。
 仮面ライダーもデザインの変更が施された。マスクの中央、目と目の間、ちょうど鼻筋にあたる部分に白いラインが引かれた。腕と足にも同じような白いライン。それだけでもずいぶんと印象が違う。垢抜けた仮面ライダーに生まれ変わったのだ。

 変身シーンもバージョンアップされた。一文字隼人がポーズをとって「変身!」の掛声とともにジャンプすると、七色の光に包まれて人間体からライダーへ変身する。オートバイに乗りながらベルトに風圧を受けて変身する本郷猛に比べてずいぶん派手になった。
 こうした変更に僕は違和感を抱いた。特に変身シーン、そのポーズと掛声はいいとして、ヴィジュアルがいかにもなアニメ合成なのがいただけない。子どもだましに感じた。

 ところが弟にはまったく逆に見えたのだろう。目を輝かせて放映を待つようになった。それまでは兄につきあっていたのが、自分の意志でチャンネルを合わせるようになったというか。その熱中ぶりは友だちとの遊びでも見られるようになった。仮面ライダーごっこを始めたのだ。あの「変身!」ポーズをみんな真似る。一気に「仮面ライダー」ブームが押し寄せた!
 このブームは実感として昨日のことのように覚えている。

 怪我のための主役交代は仕方ないにしても、怪奇路線からの脱却は個人的には大いに不満だった。
 ただ得心したことがある。弟たちが変身ごっこで遊ぶのを横目にしながら思った。「帰ってきたウルトラマン」も何か変身グッズを使うべきなのだ、と。「ウルトラマン」のベータカプセル、「ウルトラセブン」のウルトラアイに当たるものが「帰ってきたウルトラマン」には出てこない。ピンチにならないと変身できない設定がいまひとつインパクトに欠けていたので、「変身」ごっこに夢中になる弟たちの気持ちがよくわかったのだ。

 それから、オートバイ以外にスノーモービルだとか馬だとかに乗る姿が実に様になった。等身大ヒーローってこういうことができるのか!
 とはいえ、この時点で僕自身の「仮面ライダー」への興味はなくなった。あまりに子ども向けになったからだ。特撮はもちろんのこと、ストーリー、演出、すべてにおいて満足させてくれなかった。以後、弟につきあって「仮面ライダー」を見るようになった。

 藤岡弘の怪我も癒えてまた撮影に参加できるようになると、本郷猛が海外から日本に戻ってきたという設定で、まずゲスト出演で番組に登場した。1号&2号、ダブルライダーでショッカーと戦う構図に弟は歓喜した。そして主役交代。一文字隼人が海外に旅立ち、本郷猛がまた日本を守る展開となった。
 この交代に伴い、1号ライダーのデザインが一新された。ゲスト出演では旧デザインのままだったが、主役になるとそうもいかないのだろう。2号ライダーを踏襲して、2本ラインのより派手なものになり、変身ポーズも「ライダー変身!」の掛声とともに新たなポーズをとるようになった。ライダー人気はますます高まり、次番組「仮面ライダーV3」をピークとしてシリーズ化された。

 この項続く




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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