GW映画三昧計画の途中経過は次の項で。

 紙ふうせんのライブに17年間触れたことがないので、はなはだ心もとないが、この30周年記念リサイタルから2部制をとるようになったのではないか。第1部が伝承歌特集、第2部がいつものライブの豪華版という体裁。まるまる伝承歌特集というのは、このあと、「なつかしい未来 Vol.2」まで続いた。
 「太地綾踊唄」「もうっこ」と続いて、ほんと、うれしかった。このときの「もうっこ」はアルトサックス抜きの「ミリオンピープル」バージョン。
「なつかしい未来」の「もうっこ」はエレキギターの代わりに弦楽四重奏×2が入る完成形だと思っている。

     ▽
2004/11/12

 「結成30周年記念 紙ふうせんリサイタル」(なんばHatch)

 今年結成30周年を迎えた紙ふうせんの、恒例秋のリサイタル(コンサート)がなんばHatchで開催された。昨年1回お休みして満を持した2年ぶりのリサイタル。過去2回新機軸の内容で観客を魅了したふたりは今年いったいどんな企画を考えているのか。

 今回2部に分かれたコンサートの第1部は何と伝承歌特集だという。この知らせを聞いた時ちょっとオーバーだが全身に電流が走った気がした。ついにそのときがやってきたかという喜び。紙ふうせんの実力、真髄を見せつけてくれる伝承歌の特集を聴くことが僕の長年の夢だったのだ。

 確かにライブでは「竹田の子守唄」は必ず披露される。しかしそのほかの曲はというと、「いかつり唄」「円山川舟歌」をたまに歌うぐらい。これまでまとめて歌われることは、少なくとも僕がコンサートに足を運ぶようになってからはなかった。

 初期のコンサートでは伝承歌を中心に構成されていたという。が、ふたりの意気込みとは裏腹に観客にとって少々難しいものに思われたらしい。その後「冬が来る前に」が大ヒットし、新しいファンを獲得した紙ふうせんのコンサートはバラエティに富んだ、ノリのいい楽曲を中心にしたナンバーに占められるようになっていった。

 もちろんオリジナルがいけないわけではない。素敵な曲がたくさんある。赤い鳥時代からのファンといいながら、紙ふうせんが結成されてから17年ほどコンサートに行けなかった僕としてはしっとりした緊張感漂う雰囲気で歌われる伝承歌の数々をしっかりこの耳に焼き付けたくてたまらないのだ。

 いわゆる大きな会場で不特定多の客を相手にするコンサートが無理なら、客を限定したらどうだろう? そんな思いが高じて小さなホールで開催する「後藤悦治郎の世界/語る伝承歌・歌うフォークロア」を提唱して数年が過ぎた。いつか実現したいと思っている。
 そんな僕の期待に応えるかのような内容の第1部なのである。


 【第1部】

 なんばHatchのホールはもともとスタンディングで鑑賞する、東京でいえば渋谷AXのようなところ。臨時のパイプ椅子で埋まった1階はほぼ満員の中で開幕した。

 ステージは半透明のシルク(?)のスクリーンで前と後ろに間仕切りされていた。スクリーンの手前には紙ふうせんのふたり、そして後藤さんの大学、クラブの後輩であるすぎたじゅんじさん(ギター&コーラス)とわれらが浦野さん(ウッドベース)が左右を固める。
 スクリーン裏には、上手にエレキギター、エレキベース、パーカッション、ドラムスの男たちの一団(第2部からここにすぎたさんも加わる)。下手にはピアノの今出さんを中心に第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのストリングスカルテットにフルート、クラリネット(ピッコロ)の二人が加わった女性グループ(ちなみに第1ヴァイオリンは前回のリサイタル、クリスマスコンサートでいい音を聴かせてくれた僕お気に入りの長井昭子さん)。唯一男性の今出さん、まるで女子(音楽)大の講師のようで実に気持ちよさそうだ。
 むくつけき男軍団と可憐な女性集団の対照が面白い。

  円山川舟唄/いかつり唄/糸引き唄

 スクリーンに揺れる川面が映しだされ、やさしくストリングスが鳴り響いて「円山川舟歌」が始まった。
 昔FM東京(現TOKYO FM)の、深町純氏がパーソナリティーを担当する音楽番組で紙ふうせんがどのように伝承歌を採譜しアレンジし発表するのかというドキュメントを扱ったことがある。
 地方のお年寄りが歌う民謡を録音し、話を伺う。それらを持ち帰って編曲作業。最後に聴衆を集めたスタジオで披露する内容だった。その時取り上げられた曲が「円山川舟歌」ではなかったかと記憶する。CBSソニー時代シングルとしてリリースされたが、僕はキングの〈芸術祭参加作品〉アルバム「リターン ふるさとの唄をたずねて」に収録されている曲のアレンジが好きだった。

 続いて神奈川の湘南地方(今回、初めて藤沢が発祥だと知った)で採譜したという「いかつり唄」。珍しく冒頭でカリンバが使用されている。昔に比べて後藤さんの声も太く逞しくなったので漁師の世界にぴったりはまる。浦野さんのウッドベースの音色にうっとり。

 「糸引き唄」を生で聴くのは初めてだ。もう5、6年前になるが、台風に直撃されて新幹線がストップし、会場のサンケイホールに到着したのがラスト30分という秋のコンサートがあった。この時、最初のコーナーでは紙ふうせんと浦野さんだけによる初期の名曲が披露され、その中の1曲が「糸引き唄」だった。デビュー当時「ミュージックフェア」に出演した際歌ったようなないような……。後藤さんのギターテクニックと平山さんの声が冴え渡る珠玉の1曲。

  太地綾踊唄/もうっこ

 まず平山さんの朗読があった。津村陽の時代小説の一説。捕鯨に命を賭ける男の物語。イントロが始まって思わず「やった!」と叫びそうになった。まさか「太地綾踊唄」が生で聴けるなんて! 前述の「リターン」に収録されている雄大かつ荘厳なイメージの男唄。「いかつり唄」同様後藤さんのヴォーカルが見事にはまっていた。アルバムの中で一番気に入っている和歌山県東牟婁郡の伝承歌なのだから。

 恥ずかしいことに、歌詞にでてくる〈キヌタ〉という言葉、〈綾踊り〉の語感から、そんなことはないと思いながらも、僕は世田谷は砧の、江戸時代の農村地帯を思い描き、田植え唄として認識していたところがある。歌詞に鯨という言葉もでてくるにもかかわらずに、自分のイメージを先行させて聴く耳なんて持っていなかった。そういう意味からも、歌う前の朗読がとても効果的だったことがわかる。

 ちなみにネットで〈綾踊り〉の意味を調べたら、次のようにでていた。
 古式捕鯨の盛んであった江戸時代、鯨を捕獲するとそれを祝い、港の中をこぎ回る持双船(2隻の船に板を渡したもの)の上で勇壮に踊った独特な座踊りで、綾棒をモリに見立て鯨を突き捕る様を踊りにしたもの。

 「太地綾踊唄」を歌い終わり、後藤さんが次の曲の紹介を始めた。〈津軽〉の言葉が発せられた時、これまた拳を握り締めた。
 「もうっこ」は赤い鳥時代にレパートリーにしていたもので「スタジオライブ」と「ミリオンピープル」で聴くことができる。特に「ミリオンピープル」の、約20分かけて民謡とジャズとフュージョン、プログレを一体化させたセッションは圧巻だった。平山さんの声に圧倒され、演奏に打ちのめされた。赤い鳥コンプリートBOXの中でも一番聴いているのはこの曲なのだ。渡辺貞夫氏のサックスは無理にしても、あの音が再現されたのである。このためにパーカッションを入れたのだろうか。感激。とにかく平山さんが歌い終わったとき、「ブラボー」と叫びながら立ち上がって拍手したい心境だった。

  PP&Mメドレー(レモンツリー/If I were free/パフ/天使のハンマー)

 伝承歌特集といっても、「冬が来る前に」以降の楽曲目当てに来たお客さんのことを考えて、ステージはそれまでのしっとり調から転調する。お馴染みのPP&Mメドレー。PP&Mはアメリカの古くからの歌(民謡)を取りあげて歌っている。だから伝承歌の一種として認識してこの特集で歌ってみたと平山さんは説明する。

  竹田の子守唄

 特集の最後を飾るのはやはりこの曲。今回は「サンジュアム」版の、歌詞を一番追加したもの。何度も書くが、もう赤い鳥の「竹田の子守唄」ではない。紙ふうせんの「竹田の子守唄」である。確かに五声が二声(すぎたさんが入っているから三声か)になって、ハーモニーの点では寂しいかもしれないが、「この在所越えて」のフレーズでは必ず背筋がぴんとなってしまう。ふたりの声(言葉とメロディ)がズシンとこちらの魂に響く瞬間だ。


 【第2部】

  ささぶね/まつり/夜店のうた

 15分の休憩後、紙ふうせんのテーマソングといってもいい「ささぶね」から第2部が始まった。
 続いて本日のメインイベント紙ふうせん秘蔵写真大公開! 平山さんの2歳の頃写真から始まって、高校時代のセーラー服姿。尼崎北高校ってセーラー服なんだ、珍しいなあなんて思っていると、同じ写真の引きの構図になって画面左に学生服姿の後藤さんの姿が。高校3年の文化祭で「幼なじみ」の歌を、寸劇を交えて校庭で披露している時のスナップだとか。平山さんはこの寸劇用に中学時代のセーラー服を着用していたとのこと。1960年代の良き時代。かつて一世を風靡した「青春とは何だ」から始まる日本テレビの「青春」シリーズの一場面みたいな雰囲気だ。
 「まつり」では花火のイメージ映像が郷愁を誘う。
 そして「夜店のうた」では結婚式、家族3人のスナップ、レコーディング風景、海外録音等々紙ふうせんが歩んできた仕事と家庭の、30年の歴史を綴っていく。

  時の流れ

 スクリーンがなくなり、ステージの奥行きが広がった。バックミュージシャンの顔がはっきり見える。第2部後半開始といった感じだ。その最初の曲が「時の流れ」。東芝EMI時代のセカンドアルバム「愛と自由と」に収録されているフォルクローレで、最近リリースされた2枚組ベストにも入っている。これまた僕の大好きな曲だ。アルバムではふたりの多重録音されたハーモニー、コーラスに毎回心が洗われるのだが、ステージでは無理な話。ところがすぎたさんの声が加わることで、かなり厚みがでてくるのでびっくりした。

 「ささぶね」は残念ながら2枚組ベストに収録されなかったが、「まつり」「夜店のうた」「時の流れ」は、この順番で並んでいて、実は新アルバムの中でこの3曲を聴くことが一番多い。
 第1部の伝承歌といい、まるで僕の好みに合わせてくれたような選曲。その思いが「時の流れ」で最高潮に達した。もう何もいうことはない。後はもうどうにでもしてくださいってな感じ。

  街を走りぬけて/ルート43/砂に書いたラブレター/霧に濡れても/ホーハイホー
  あなたの風になりたい/虹/翼をください/冬が来る前に/船が帰ってくる/紙風船

 以降、日頃のコンサートでお馴染みのナンバーが続き、あらかじめ用意されたアンコール曲はラストソングとして定番化した「船が帰ってくる」「紙風船」で幕を閉じた。

 紙ふうせんにとって30周年はあくまでも通過点でしかないだろう。しかしこの通過点は今後の活動を方向付ける意味で非常に重要だ。以前活動は60歳くらいまでかなあと言っていた後藤さんから60歳を過ぎても、歌えなくなるまでコンビを続けると力強い宣言がなされた。
 紙ふうせんの世界を守りながら、後藤さんにはライブハウスでのソロライブでフォークを追及してもらいたいし、平山さんには大ホールで究極のアリアを聞かせてもらいたい。
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Comment
No title
実はこのコンサートに行った時は私にも意味があり、終わってから後藤さんに昔宝塚で居候をさせて頂いた事を話し、そういえばそんな事があったね・・というあたりから再会したコンサートでした。keiさんと初めてあった時もこの時でした。確かFCの飲み会の時でした。コンサートでは初めて聞く曲が多く(それまでの空白期間でしたので)ただただ泰代さんの表現豊かな厚みのある声量が若い時と違ってドーンと出ていたので、うまくなったな~ アイドルの時と違うな~ これが紙ふうせんなんだな~と感動し嬉しかったですね。お二人とのお付き合いもこれから始まったようなものです。もちろんFCの方々とのお付き合いも・・  昨日BS朝日での富士山麓の番組みましたよ。座った場所を教えてもらっていましたので観客席が移るたびに探してました(笑)3回ほど映ってましたね。出演者のインタビューもあったりして良い内容の番組と思います。しっかり録画し保存の1つとなりました。
ジンギスカン さん
コンサートが始まる前に喫茶店(?)でしたっけ、FCのメンバーが集まり、ジンギスカンさんも一緒でしたね。宝塚の件もそのときお聞きしました。すごい人がいるなあと。

番組、まだ観ていないんです。結局専用ケーブル買ってきてもBS映らなかったもので。ケーブル会社に確認したら、月5,000円かかるというので、契約しませんでした。

映ってましたか、やっぱり。カメラを意識していないよう気をつけていました。
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プロフィール

kei

Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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