リサイタル「なつかしい未来」シリーズでバックのストリングスをつとめているラ・ストラーダ。
 紙ふうせんとラ・ストラーダの最初のジョイントコンサートが2006年に開催された。
 ストラーダの演奏に感激した僕は、東京のストラーダ単独コンサートに足を運んだ。席はステージ目の前。金関環さんの迫力に圧倒された。

     ◇
 
2006/02/25

  「紙ふうせん&ラ・ストラーダ コンサート」(シンフォニーホール)

 午後1時50分東京発の新幹線のぞみに飛び乗った。目指すは大阪のシンフォニーホール。夕方6時から「紙ふうせん&ラ・ストラーダ コンサート」があるのだ。
 単なる紙ふうせんのコンサートなら行くこともなかった。たぶん今年秋のリサイタルは伝承歌だけを集めた後藤さんのライフワークを集大成したようなステージが披露されるはずだから、そこに照準をあわせておけばいいはずだった。しかし、ラ・ストラーダ弦楽アンサンブルとの共演と知り、心が躍った。

 紙ふうせんは過去何回か、テレマン室内管弦楽団と共演している。そのたびに気になっていたのだが、日程や懐具合の関係で断念していた。今回は関西で人気を呼ぶ気鋭の管弦アンサンブルとの共演でどんな音を聴かせてくれるのか、いつもとは違う演目に期待したのだ。土曜日ということも大きい。

 といっても、ラ・ストラーダ弦楽アンサンブルについて詳しく知っているわけではない。ヴァイオリニスト・金関環に率いられた若さあふれる弦楽アンサンブル。日頃のクラシック演奏会にはない、親しみやすい、愉快で陽気な雰囲気を感じさせる集団。そんなところに僕のアンテナがビビビと反応したのである。
 ちなみに金関環は〈かなせき・たまき〉と読む。〈きんかんかん〉ではない。

 4時27分新大阪に到着し、JRで大阪へ。環状線に乗り換え隣の福島駅に向かう。大阪の環状線は東京でいえば山手線だが、今回久しぶりに利用して驚いたのは、環状線以外の電車も同じホームに乗り入れていること。山手線を待っていたら、埼京線の電車がやってくる。そんな場面に出くわしたらそりゃびっくりするだろう。

 シンフォニーホールは朝日放送の施設だという。クラシック専門の劇場で、東京だとサントリーホールみたいなところか。駅から歩いて5分程度。5時ちょっと前、公園を通り抜けてホールの入口に着いた。後方にTV局がそびえ立ち、ホテルプラザの建物も見える。
 このホテル、もう何年も前に閉鎖されてしまったが、個人的にかなり思い入れが強い。というのは、小林信彦氏の書くコラム、エッセイにたびたび登場するホテルなのだ。小林氏は昔、漫才や松竹新喜劇を見るために大阪にやってきて、このホテルを常宿にしていた。大好きな、尊敬する作家が利用していたホテル、一度は泊まってみたかった。

 5時過ぎ、開場となって中に入る。かなりの広さだ。僕の席は2階席の一番前。音を聴くには最高の場所ではないか。

      *

 主催者の挨拶の後、ステージに紙ふうせんのふたりとバックミュージシャンが登場。ピアノの今出さん、ギターのすぎたさん、ウッドベースの浦野さん。昨年NHK「趣味悠々」のフォークソング入門で課題曲を演奏したメンバーだ。5人ということもあって、「赤い鳥」を思い出していた。実際、コーラスに女性をもう一人加えたら、それこそぴったりではないか。
 後藤さんは白のスーツ、平山さんは上下黒白のツートンなのだが、これが実に何とも決まっていた。50年代ニュールックというのか、アメリカンスタイルと呼ぶのか。「ローマの休日」で身に着けていたオードリー・ヘップバーンのファッション。身体にフィットした黒のシャツに白のロングフレアースカートがかわいらしい。キュート!


  ささぶね/憶えているかい/あなたの風になりたい/紙風船

 「ささぶね」のあと、このコンサートを企画・開催したいずみーる事務局の母体〈いずみ生協組合〉の歌「憶えているかい」が紹介された。歌詞を生協組合員から募集し、最優秀作に後藤さんが曲をつけたもの。
 後藤さんのMCがふるっていた。「歌詞の応募どのくらいあったと思います?」「すごいですよ~。たったの2通!」

 「あなたの風になりたい」では必ず補助犬、介護犬のPRをする。今回は平山さんが観客に自宅で飼っているペットが何か、鳴声で答えさせて、あっというまにアットフォームな雰囲気をつくりだしてしまった。2階席から「コケコッコ~」と叫んだらどうだったろう? 小心者の僕には絶対できないけどね。

 「紙風船」はいつもと同じ観客を巻き込んでの大合唱になったのだが、後藤さんのMCに興奮。
「2階の貴賓席の方」「それでは1階の一般大衆席の方も」
 これ、赤い鳥のライブアルバム「ミリオンピープル」で「紙風船」「もう一度帰ろう」の合唱の時、後藤さんから発せられた言葉なのだ。レコード(CD)でしか触れることがなかった名文句が今、目の前のステージから聞こえてくる。それに自分は貴賓席にいるのだ!


  ホルベルグ組曲より前奏曲(E.グリーグ)
  チャールダシュ(V.モンティー)
  リベルタンゴ(A.ピアソラ)

 暗転し、ステージの上手、下手二箇所にスポットが当る。そこにかわいらしいペンギンのよちよち歩き。身長約30センチ。もっと小さいか。SuicaのCMでお馴染みのペンギン? ということは中に入って演技しているのは赤星さんか。いやあれはJR東日本のCM。関西で流れているわけがない。上手のスポットでは後藤さんが掃除用のデッキブラシを持ってしきりに電動式ペンギンの前の床をゴシゴシしている。どこかで見た風景。そうカーリングだ。場内大爆笑!
 完全に場の雰囲気が和らいだところで、後藤さんと平山さんが勢ぞろいしたラ・ストラーダ弦楽アンサンブルを紹介する。この演出はうまい!

 下手から第1(第2)ヴァイオリン4名、チェロ2名、コントラバス1名、ビオラ2名。一足先に春がやってきたようなカラフルな衣装(衣装そのものが派手なものではないところがGOOD)。このメンバーに第1ヴァイオリンの金関環氏が加わってさまざまに動き回り全体の指揮をとる。

 金関環氏は松浪健四郎に中谷彰宏の笑顔を足したような風貌。ってこれ全然誉め言葉じゃないな。でも2階席から見た金関さんは実際そういう風に見えた(思えた)のだからしかたない。
 期待していたとおり、絶妙な音が聴かせてくれる。クラシックにはそれほど造詣はない僕でも、その弓さばき(?)にうっとりきてしまう。特に「ホルベルグ組曲より前奏曲」における高音のとろけそうな響き。「リベルタンゴ」のメロディーに心捉えられた。


  ホーハイホー/街を走り抜けて/竹田の子守唄/虹/いつも心に青空を
  おもちゃのシンフォニー/霧にぬれても/翼をください/Route43/冬が来る前に

 ステージに紙ふうせんのふたり、バックバンドが揃い、その後方、一段高いところにラ・ストラーダの面々。それにフルートとオーボエの2名が加わる。この木管2名はラ・ストラーダのメンバーではなく紙ふうせんサイドの要請による。
 本日のメインイベント。
 紙ふうせんのライブはギター2本、ピアノ、ベースだけでも十分通用するのに、弦楽が入るとやはり音に厚味が出る。優雅になる。やはり無理してでも来た甲斐があった。

 「おもちゃのシンフォニー」では金関氏が太鼓、平山さんがトライアングル、後藤さんがヤギの鳴声で参加。いやはや愉快。後藤さんにはヤギだけでなく、らくだのわななき、尺取虫のつぶやきも披露してほしかったな。(赤い鳥の「祈り」で後藤さんはじけまくっているのだ)

 とにかくヴァイオリンに圧倒された。「Route43」のヴァイオリンソロに新しい魅力を発見。派手さはないがフルートとオーボエの音色も光る。「冬が来る前に」なんてレコードと同じイントロで感激した。
 編成が豪華になったことで、「青空と海」、「2001年アクエリアス」を久しぶりに聴けるかという淡い願いは叶わなかったけれど。

 お約束のアンコールはまずラ・ストラーダがピチカート奏法による「プリンク・プルンク・プランク」。楽しい。続いて紙ふうせんの「船が帰ってくる」。

  アンコール
 
  プリンク・プルンク・プランク(ラ・ストラーダ弦楽アンサンブル)
  船が帰ってくる(紙ふうせん+ラ・ストラーダ弦楽アンサンブル)

 もう少し聴いていたい。それぞれあと2曲くらいアンコールに応えて欲しい。いやいやもう若くないのだから腹八分目がちょうどいいか。ロビーで即売していたラ・ストラーダのCDを購入。その後FCのメンバーと夕食、10時50分の深夜バスで帰途についた。




関連記事
スポンサーサイト
NEXT Entry
けいかほうこく ~ふつかからむいかまで
NEW Topics
告知ページ
「シュリ」「海の上のピアニスト」「新選組」「ストーリー・オブ・ラブ」 ~ある日の夕景工房から
「天国と地獄」「どん底」 ~ある日の夕景工房から
「赤ひげ」「御法度」 ~ある日の夕景工房から
「ワイルド・ワイルド・ウエスト」「リトル・ヴォイス」「黒い家」 ~ある日の夕景工房から
1分間スピーチ #19 マスコミの悪意について
「双生児 ~GEMINI~」「秘密」「皆月」 ~ある日の夕景工房から
NHK「ファミリーヒストリー」は8月18日(金)に放送されます!
「シャロウ・グロウブ」「砂の器」「オースティン・パワーズ:デラックス」「マトリックス」 「バウンド」 ~ある日の夕景工房から
また、やっちまっただ! ~「パワーレンジャー」
Comment
Trackback
Comment form
 管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

kei

Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

検索フォーム
ブロとも申請フォーム
QRコード
QRコード

Page Top