2015/03/07

  「紙ふうせん 40周年記念リサイタル 〜なつかしい未来〜」(よみうり大手町ホール)

 前々項から続く

 開場となった。

 開演5分前、コンサートに先立っての注意事項がナレーションされる。声は後藤(悦治郎)さん。注意事項で細かいことは言いません、昨日東京にやってきました等々。特にお客さんの反応なし。
 大阪では、初めて後藤さんが影ナレを担当したとき、最初ザワザワして、後藤さんだとわかると大笑いとなった。東京と大阪の違いか。

 会場は満席。コンサートが始まった。

  【第1部】

   ささぶね/街を走りぬけて

 ピアノの今出さん、アコースティックギターのすぎたさん、ウッドベースの浦野さん、ギターの緒川さんが定位置につく。
 平山さんとギターを抱えた後藤さんがセンターへ、ふたりともカジュアルな衣装だ。久しぶりの東京のコンサートでも平常心ということだろうか。

 平山さんが民族楽器(名称失念)を両手で持ってゆっくりと上下させる。右手を上にしたら次は左手を上にというように。筒状の楽器の中にもみ殻みたいなものが入っているのか、そのたびにザーという音がする。しばし、ザー、ザーが会場に響く。
「神田川のせせらぎ」
 後藤さんがつぶやく。
 こうして「ささぶね」が始まるのがお約束だ。川の名前は地域によってその都度変わります。

 アメリカ民謡に後藤さんがオリジナルの詩をつけた、紙ふうせん(のコンサート)のテーマ曲みたいなものだ。
 いつのころからか原曲を知りたくてネットで探しているがわからない。今回あっさり判明した。「永遠の絆」という邦題で調べればよかったのだ。高田渡やなぎら健壱が自身の訳詩で歌っていた。加川良は「その朝」というタイトルで持ち歌にしている。
 「ささぶね」はファーストアルバム「またふたりになったね」のA面1曲め、続く「街を走りぬけて」も通算4枚めの「フレンズ」のA面最初の、正確には「オーバーチュア」とオーバーラップして始まる、紙ふうせんのライブには欠かせない曲だ。

 2曲歌って挨拶があり、紙ふうせん40周年に向けてのメッセージ(録音)が紹介された。一人めは小室等氏。小室さんはアマチュア時代、PPMフォロワーズというグループでPPMをコピーしていた。
 西のフーツ・エミール、東のPPMフォロワーズ。
「PPMフォロワーズって、そのまんまじゃないですか」と後藤さん。
 フーツ・エミールは、よくフルーツ・エミールと誤植される。エミールとは、ジャン=ジャック・ルソーの著書に登場する少女の名前。〈おしゃべりエミール〉という意味がある。

  レモンツリー/悲惨な戦争/パフ/天使のハンマー

 予想したとおりPPMメドレーが始まった。
 昨年公開されたアメリカ映画「インサイド・ルーウィン・デイヴィス 名もなき男の歌」では、PPM(と思われる男2人女1人のグループ)結成のエピソードが描かれていた。PPMはプロデューサー主導で作られたグループだったのだ。
 PPMナンバーを聴いていて思っていることがある。マリーのリードヴォーカル、ピーター、ポールのハーモニーだけではないということだ。

 その影響は赤い鳥に色濃く表れていた。
 赤い鳥は、女性のツートップヴォーカルグループではないのである。男性陣もけっこうヴォーカルをとっているのだ。それは紙ふうせんになっても同じことで。

  いかつり唄/太地綾踊唄

 後藤さんがギターのチューニングをはじめる。
 「いかつり唄」は赤い鳥のラストアルバムに初めて収録された。このときは後藤さんのヴォーカル。紙ふうせんのファーストシングルでは平山さんが1番を歌い、2番から後藤さんが入ってきて、3番でリードとハーモニーがスイッチされる。
 赤い鳥ヴァージョンはエンディングの平山さんと新居(山本)さんのコーラスがたまらなく素敵だが、アルバム「またふたりになったね」収録ヴァージョンでは後藤さんが男唄を聴かせてくれる。ステージではいつもこのヴァージョンだ。
 1、2番は採譜オリジナルで、レコーディングにあたって、後藤さんが3、4番の詩を書いたと今回語っていた。

 烏賊釣りの後は捕鯨の話。来た!
 2月、後藤さんがFM世田谷のフォーク番組に出演したときのこと。スタジオがオープンになっていて見学自由だと知り、WさんとHさんを誘って観に行った。
 番組が終ってから後藤さんが言うには、夜は新宿で鯨料理を食べると。

 詳細はこういうことだった。
 カメラマンの市川基氏が主宰する「サーカス’85」という例会がある。毎回、さまざまなジャンルから講師を招いて勉強会を実施している(紙ふうせんも一度講師としてトーク&ライブを行っている)。夜はその例会があって、講師が捕鯨船の船長、遠山大介氏だった。
 それで、期待していたのだ。もしかしたら、東京のリサイタルで「太地綾踊唄」やるんじゃないのかな、と。

 思っていたとおりだった。ギターの音、後藤さんの声。すごい迫力だ。すぎたさんの太鼓が効いている。本日のメインイベントだと思う。

 TVの歌番組で「冬が来る前に」を歌う紙ふうせんしか知らないお客さんは、このステージをどう見ているのかなぁと考えたらおかしくなってきた。だって、2曲めの「街を走りぬけて」からほとんど後藤さんのヴォーカルなのである。
 とはいえ、サブにまわっても平山さんの存在感は際立っている。「街を走りぬけて」ではやさしく、「いかつり唄」では強く、緩急自在に後藤さんのヴォーカルと絡んできてとても気持ちよい。

 赤い鳥時代はもちろんのこと、紙ふうせんになってからも、平山さんといえばソプラノ、澄みきった高音が有名である。が、しかし、腹の底から絞り出すような低音もまた魅力なのである。
 その真骨頂が「太地綾踊唄」で堪能できた。後藤さんのギターと漢の声とともに。圧倒された。すごい迫力。これが僕の求めている紙ふうせんの世界(の一つ)なのだ。

 40周年記念メッセージ2人めはイルカさん。
 ふたりが「ミュージック・ハーモニー」にゲスト出演したときはうれしかったなあ。

  大きな木/竹田の子守唄

 「太地綾踊唄」のあとは新曲「大きな木」。一気に肩の力が抜ける。この落差が楽しい。一度聴くと口ずさみたくなる歌だ。ピアニカ担当の今出さんを見ていてるのもオツなもの。
 第1部を締めくくるのは「竹田の子守唄」。後藤さんの〈いわれなき差別〉という言葉が重くのしかかる。


 この項、続く





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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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