承前

2015/04/18

 「博士と彼女のセオリー」(TOHOシネマズ シャンテ)

 この映画に興味を持ったのは、エディ・レッドメイン扮するホーキングが、若かりしころってこんな感じだったのだろうと思わせてくれたことにつきる。若いころのホーキングは知らないけれど。いや、ホーキングについて何も知らなかったといっていい。だいたい僕は彼の出身地(国)も考えたことがなかった。漠然とアメリカ人じゃないかと思っていた。数学や物理に興味がないとそういうことになる。

 映画はそんなホーキング初心者にさまざまな事実を教えてくれる。
 ケンブリッジの大学院時代に知り合った女性、ジェーン(フェリシティ・ジョーンズ)と恋に落ちたこと。同時期にASL(筋萎縮性側索硬化症)を発症し余命2年と診断されたこと。全身が麻痺していく中でジェーンと結婚したこと。子どもを3人つくったこと。
 身体が不自由になっても男性機能は正常に働くというのが不思議。女性主導のセックスになるのだろうが。

 タイトル「博士と彼女のセオリー」(原題は「The Theory of Everything」)は、ホーキングとジェーンとジョナサン(チャーリー・コックス)の三角関係に由来するのだろうか?

 ジェーンは献身的に夫につくすが、すべて一人でできるわけがない。どうしたって力が必要になるのだ。息子のピアノの先生として家に出入りするジョナサンがいつのまにか家族の一員のようになって手助けするようになる。妻にとっても夫にとってもジョナサンがそばにいることが当たり前という認識。映画では、ジェーンとジョナサンの関係を深く描いていないが、信頼以上の関係であることは確かだろう。にもかかわらず、夫は無頓着を装う。
 夫婦はよくても、周り(親や親戚)はそうではない。やがて、ジェーンとジョナサンに別れがやってくる。

 言葉を失ったホーキングは、正式に介護人を雇う。この介護人が女性で、被介護人の扱いが手馴れていたため、ジェーンが二人の仲に嫉妬することになる。やがてホーキングはジェーンではなく介護人と一緒にいることを選択する。
 別れを告げるのはジェーンだが、最初に意思表示をしたのはホーキングだった。この関係が僕は不思議でたまらなかった。

 映画は1962年から始まるのだが、以降、時間の経過については特に語られない。変化が見られるのはジェーンの容姿だ。大学院時代、新婚時代、子育て時代、中年時代、きちんと年齢を重ねている。

 ホーキングがアメリカで講演したときの質疑応答。質問した女性の万年筆が簡易テーブルから床に落ちる。それを見たホーキングは立ち上がり、万年筆を拾って女性に渡す。もちろんあくまでもホーキングの願望を映像化したものだが、なぜかこのシーンに涙ボロボロになった。

 この映画も字幕で主人公たちのその後を説明する。実話映画化の定石なのかもしれない。


 【追記】

 「インディー・ジョーンズ」シリーズを観はじめたころだと思う。インディー・ジョーンズは大学で考古学を教える教授なのになぜドクター・ジョーンズと呼ばれるのか、疑問だった。教授ならプロフェッサーではないのか?
 この映画を観ているとよくわかる。ドクターとは博士のことなのだ。
 ネットで調べた。
 Doctorは学位であり、取得すれば名乗れる。対してprofessorは大学(研究機関)職員のポストで博士号を取得した人が就任する。

 【追記】その2
 
 アカデミー賞へのノミネート、主演男優賞の受賞などで「博士と彼女のセオリー」はアメリカ映画だと思っていた。イギリス映画だった。「イミテーション・ゲーム エノグマと天才数学者の秘密」もそうだ。
 確かに「外国語」映画ではないけれど、だとすると、言葉が英語ならば普通に受賞対象になるのだろうか。


 
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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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