2015/04/11

 「恐怖の作法 ホラー映画の技術」(小中千昭/河出書房新社)

 「リング」に恐怖して、同じ監督の「女優霊」(のビデオ)を借りて深夜に観たらもっと怖かった。あまりの怖さに隣の部屋で寝ていたかみサンに声をかけたほど。こうして霊が画面に浮遊する映画(と勝手に呼んでいた。巷ではジャパニーズホラーと総称されている)の第一人者として脚本・高橋洋、監督・中田秀夫の名前がしっかりインプットされたのだが、実は先駆者として小中千昭がいることを知らされた。ホラー作品を作るのに際して〈小中理論〉というものがあるというのだ。

 ずいぶん経ってから(2000年代になってから)だが、ホラーに造詣の深い友人からDVDで「邪願霊」を見せてもらったことがある。こんな時代からこの手のホラーを手掛けていたのかと驚いた。「ブレア・ウィッチ・プロジェクト」(1999年公開)よりも10年も前に、フェイクドキュメンタリーとしてホラー作品をビデオでリリースしていたのだから。

 そんな小中千昭氏がホラー映画に関する本を上梓した。僕は知らなかったのだが、かつて小中理論を中心にホラーについて綴った「ファンダメンタル・ホラー宣言」なる本を書いていたのだ。これを第1章にした新たなホラー映画に関する自説開陳の本。
 表紙のイラストは先ごろ亡くなった金子國義。角川文庫になった小林信彦初期小説(「虚栄の市」「冬の神話」「監禁」)の表紙の人だ。個人的には苦手な絵なのだが、書名にはぴったりな雰囲気だと思う。
 興味深いことが次々にでてきて飽きない。最後はお待ちかねの小中理論だ。旧書から採録されている。

 要は恐怖は段取りであると小中氏は言う。なるほどと膝を打った。
 詳細は本書をあたってほしいが、だとすると怪獣映画も段取りではないかと思った。「パシフィック・リム」について、大方の怪獣映画ファンの人が絶賛する中で、イマイチだったことが説明できる。
 ちなみに僕はこの映画を最初は字幕版、続いて日本語吹替版を観賞したのだが、印象はあまり変わらなかった。
 なぜか。怪獣出現までの怪現象、怪獣による都市破壊がほとんど描かれていないからなのだ。最初からイェーガー(ロボット)と怪獣の戦いなので、どんなにその戦いが迫力あろうとヴィジュアルインパクトが絶大であろうと、それだけでは興奮できない。
 SM映画も段取りだろうな、たぶん。


2015/04/15

 「東映ヒーロー仮面俳優列伝」(鶯谷五郎/辰巳出版)

 不思議なもので、ウルトラ(マン)シリーズの歴代スーツアクターの名前はしっかり覚えているのに、平成仮面ライダーやスーパー戦隊のそれはまるで知らない。平成仮面ライダーシリーズでは「クウガ」から「カブト」まで「剣(ブレイド)」以外はすべて視聴していたにもかかわらず。円谷プロファンだから、クレジットに対する注目度が違うのかしれない。

 平成仮面ライダーシリーズはクウガからある時期までずっと同じスーツアクターが演じていたと知り(このことは別の機会で知ったのだが)、驚いたことがある。TVで観る限りキャラクターが別人だったので。
 スーパー戦隊ものは真剣に観たことはないが、それでも仮面のまま数メートル下の激流に落ちるショットに驚愕したことがある。通常でもかなり恐怖を覚える高さなのに、仮面をかぶったままで飛び込むなんて……。

 本書は平成仮面ライダーシリーズやスーパー戦隊シリーズで活躍するスーツアクターたちに取材したルポルタージュだ。皆さん、ほんとアクションが好きなんだなぁと思える。その想いは行間ににじみ出ている。

 マニアックな単行本がでたと思ったが、書き下ろしではなく、「東映ヒーローMAX」の連載をまとめたものだった。
 読んでいて驚いたのは、インタビューを受けたスーツアクター(及びアクション監督)の方々が番組名とキャラクター名をしっかり覚えていることだ。もしかしたら、実際はもっとアバウトな回答だったかもしれないが、活字化する際に手を加えたのかも。
 とにかく、著者の特撮作品(特に東映作品)に対する造詣は生半可なものではない。


2015/04/17

 「ゲゲゲの新聞」(フォルスタッフ/ミュゼ)

 手塚治虫、石ノ森章太郎、藤子・F・不二雄と人気漫画家が60歳を境に、鬼籍に入られてしまう中、90歳を超えても現役で活躍していることに恐れ入る。「ビッグコミック」誌の最後のページで身辺雑記の漫画を連載中なのである。
 本書は水木しげるの誕生から現在までの歴史を見開きで1テーマとした新聞風記事で成り立っている。貸本マンガから週刊誌連載へ、売れっ子になる前後が興味深い。
 写真も豊富で資料的価値大。なんて図書館で借りた本(ムック?)なのだが。


2015/04/19

 「光を継ぐために ウルトラマンティガ」(小中千昭/洋泉社)

 海外で制作された「ウルトラマングレート」「ウルトラマンパワード」がイマイチの出来だったから(「パワード」と比較すると「グレート」は断然面白いのだが)、「ウルトラマン80」以来のTVシリーズ「ウルトラマンティガ」には大いなる期待でいっぱいだった。
 第一期ウルトラシリーズ終了後かなりの期間があって「帰ってきたウルトラマン」が始まったという印象があるが、たかだが数年。対して「80」終了後「ティガ」は16年ぶりには始まったのだ。途方もない年月が経っていたのだ。

 第1話、第2話を観る限りでは不満があった。TVの前でああじゃないこうじゃないと文句を言っていた。何ムキになっているのとかみサンとまだ小さかった娘に笑われたものだ。
 そんな不満も第3話「悪魔の預言」で解消されるはずだった。が、オンエア日のその時間、歯医者に行っていておまけに予約録画もし忘れた。よって、「ティガ」の面白さを体感するのは第5話「怪獣が出てきた日」まで待たなければならなかった。どちらもシナリオは小中千昭だ。
 ちなみに「怪獣が出てきた日」の演出は川崎郷太監督で、以降気になる回のほとんどは川崎監督が担当するものだった。

 本書を読むと、最初はメインとは離れたところに位置していたライターだったにもかかわらず、徐々にメインライターになっていく様子が理解できる。

 「悪魔の預言」「怪獣が出てきた日」「怪獣を待つ少女」「GUTSよ宙(そら)へ(前後編)」「「悪魔の真判」「南の涯てまで」「眠りの乙女」「地の鮫」「影を継ぐもの」「もっと高く! ~Take Me Higher~」「暗黒の支配者」「輝けるものたちへ」

 リアルタイムで視聴していて、確かに小中氏が書くドラマは面白かった。「南の涯てまで」の世界観に夢中になった。小中氏は世界観の作り方がうまいのだ。

 偽ウルトラマンが登場するエピソードはシリーズの定番になっているが、(「地の鮫」「影を継ぐもの」)に登場するイーヴルティガでは初めてその存在意義に言及したことで(意味を持たせて)感動した覚えがある(それまでは宇宙人が侵略のために偽者を仕立てあげて地球人をだます、というパターン化していたので)。

 「もっと高く! ~Take Me Higher~」での空を飛ぶGUTSメカの中でのレナとダイゴの会話。以前からダイゴがティガであることに気づいていたレナが、前の操縦席に座っていて「(自分は見えないから)変身してもいいよ」とダイゴに変身を促すショットにエロティシズムを感じた。まるで「抱いて」と言っている感覚になったのだ。
 サブタイトルはV6が歌う主題歌の日本語訳なのだが、予告編で目にしたときは黒田三郎の詩集を思い出していた。当然「紙風船」も。

 「暗黒の支配者」「輝けるものたちへ」は右田昌万と長谷川圭一との共作である。本来なら第1話、2話を担当した右田氏がメインとなって、最終回(3部作)を締めくくらせるべきだった。との意見は当時あった。あれじゃ右田さんがかわいそうだ、と。そんな内容が特撮サイトのBBSに書き込まれていたと思う。
 右田氏は当時円谷プロに所属していて俳優でもあった。長谷川氏は装飾のスタッフとして「ティガ」に参加したが、途中から脚本にシフトしている。「拝啓ウルトラマン様」は長谷川圭一+川崎郷太コンビの秀作だ。
 個人的には、このような意見の方が不思議に感じた。前述したとおり、右田さんの作品より小中さんの方が面白かったし、奥が深かったので。

 平成ウルトラマンシリーズに夢中になれたのは、スタッフが第一期に夢中になった世代だったことによる。特に小中氏のウルトラマンに対するイメージは自分のとリンクする。

 担当したシナリオが全話掲載されている。読めばどうしたって映像を確認したくなる。
 「ウルトラマンティガ」を全話見直したくなった。


 この項続く




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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