2015/05/26

 「チャッピー」(丸の内ピカデリー)

 劇場で初めて予告編を見たときから公開を楽しみにしていた。

 予告編ではわからなかったが、ストーリーは「ロボコップ」(87年)の世界観を下敷きにしたような感じだ。悪役ロボットなんてまさに「ロボコップ」に登場したED-209だもの。警察用に開発されたロボットなのだがいろいろ問題があって導入に待ったがかかる役どころ。実際に採用されるのは人型ロボット(スカウトと呼ばれる)でその設計者が採用されなかったロボットの設計者に嫉妬され恨まれたあげく敵対する展開も同じ。空を飛ぶところが新しいか。

 犯罪が多発する近未来のアメリカ・デトロイトを舞台にしたのが「ロボコップ」なら、「チャッピー」の舞台はギャングたちが跋扈する近未来の南アフリカ・ヨハネスブルグ。ギャングの横行に苦慮した政府はロボット警官を導入して街の治安を守ろうとする。

 オムニ社がロボコップを開発するために必要だった頭脳は、殉職した警官の脳を利用した。だからロボコップに汎用性はなかった。ロンリーソルジャー・オンリーユーだ。
 対してテトラヴァール社の人型攻撃ロボット〈スカウト〉は半自立型AIを搭載している。ロボット設計者のデオン(デーヴ・マテール)が開発したもので、これにより〈スカウト〉は大量生産され、警官としての任務を確実に遂行、ヨハネスブルグの犯罪は減少の傾向にある。

 そんな状況下、半自立型AIに満足していないデオンは、自ら学習しまるで人間のように成長していく完全AIを開発。社長(シガニー・ウィーバー)にスカウトへのインストゥールを提案するも却下される。仕方なく、廃棄されたスカウトを実験に使おうと残骸を盗み出し自宅に運ぼうとする。そこにギャングチーム(ニンジャ、ヨーランディ、ホセ・パブロ・カンティージョ)が現れ、デオンを拉致してしまう。
 完全AIを組み込まれたスカウトはチャッピーと名づけられ、ギャングたちに育てられる……

 チャッピーの造形って、どことなく何となく「火の鳥 復活編」に登場するロボット、チヒロに似ている。
 一度死んだ人間が最先端の医療技術で蘇生させられたのはいいが、以後、人間(生物全般)が無機物に見えてしまう副作用に苛まれる。
 彼が唯一人間の女性に見えるのはチヒロというロボット。やがてふたりは愛し合うようになるのだが、さまざまな困難が待ち受けていて……というストーリーで、僕が「火の鳥」シリーズに興味を持つきっかけを作った作品である。「鳳凰編」とともにシリーズを代表する傑作だと思う。

 クライマックスになって、もしかしてニール・ブロムカンプ監督は「火の鳥 復活編」を意識しているのではと考え直した。

 ネタばれになるので、詳しくは書けないが、ロボット及び人間の意識に関する部分がもろ「復活編」とかぶるのだ。
 だから、映画のここぞというシーンでシラけてしまった。人間の意識の容量はそんなもんじゃないぞ。なので「復活編」では、スマートなチヒロのままではいられず、不細工なロビタになるんじゃないか! だいたいロボットの意識が人間と同じ頭部にあって、それ用のヘルメットをかぶって……というのはどうかと思う。それまでのリアリティがあそこで瓦解してしまった。少なくとも僕の中では。
 
 チャッピーの育ての親である、ニンジャ、ヨーランディの訛りのひどい英語(サウスアフリカ・イングリッシュ?)がいい。見たことのない役者だと思ったら、南アフリカのラップグループ、ダイ・アントワードのメンバーだという。映画の中に流れるヒップホップは彼らの楽曲なのか。かなり耳に残る。
 ヨーランディが登場したときは、とんでもない女だとその容貌、ファッションに驚愕するものの、進行するにつれてかわいくなっていく(と思えるようになる)のが不思議。

 原則映画を観る前には何の情報も仕入れない。この映画も「第9地区」の監督の最新作という以外何も知らない。だから、敵役の設計者を最初に見たときはヒュー・ジャックマンに似ているなあと思い、やがて、ヒュー・ジャックマンだよな、と自分を納得させるようになり、エンディング・クレジットでやっと確認できた。

 チャッピーが街の悪ガキたちの集団に放り込まれて、苛められるシーンは正視に絶えない。集団からやっと逃げ出したと思いきや、今度はヒュー・ジャックマンに腕を切り取られるのだ。
 このくだりは「鉄腕アトム」ででてくるエピソードのようだ。

 改めて手塚治虫の偉大さを認識した次第。

 エンディングロール(クレジット)がすべて手書き(のような)文字というのも珍しい。




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プロフィール

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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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