続けてサンデー毎日連載の中野翠「満月雑記帳」を話題にします。

 前号だったか、前々号だったか、中野翠は〈上から目線〉について言及していた。友人の呉智英の書籍を取り上げ、その文章が上から目線だと指摘するのだが、ものを知っている人が知らない人に教える際にはそうなっても仕方ない、というようなことを書いていた。これは納得できた。

 もともと僕が〈上から目線〉についてよくわかっていないことによるのかもしれない。あまりこだわっていなかったというべきか。
 そんなわけだから〈上から目線〉を気にしたことがなかった。呉智英の本は何冊か読んでいるが、悪い印象は持っていない。

 ただ、ある文芸評論家が趣味の方面で書いた本を読んで、ああ、これが最近よく目にする〈上から目線〉か、と思った。読んでいて不快だった。「あんた、何様のつもり」という思い。
 もう一冊、こちらも趣味の分野の本だったが、同じ印象だった。趣旨はいいのに(こういう本を書きたかった、書店でみたときやられたと思った)、間違いが多く、悪文も気になる。にもかかわらず態度だけは偉そうだからいい加減腹が立ったのだ。

 不思議なのは、この評論家、若者(だろう)にけっこう人気がある。ファンにすれば、この上から目線態度がたまらないのかもしれない。いや、そんな風には感じていないのかも。
 というのは。思い当たることがあるからだ。

 たとえば小林信彦。確かに70年代、キネマ旬報連載の「小林信彦のコラム」を読み始めたころは反発もしたが、それは意見の相違であって、不快感とか「あんた何様!」的感情を抱いていたわけではない。それ以上に教わることが多いとありがたがっている。
 ところが、小林信彦の文章に、自慢話ばかりじゃないかと反発する人がいるのである。小林信彦の本を読んでは批判する、そういうブログがあるのだ。小林信彦で検索するとかヒットするので知った。そんなに嫌いなら読まなければいいのに。そうコメントしたいところだが、ブログに書くのは個人の自由だし、ヒットするとクリックしてしまう自分が悪いのだと思うことにしている。

 そういえば、前述の評論家もアンチ小林信彦で、小林信彦の小説がつまらない、ヘタだとよく書いている。小林信彦の新作小説を連載エッセイで批判したら、同じ版元の月刊誌だったこともあって、却下されると同時に連載が中止になってしまったのだから、そりゃ頭にくるだろう。意地になるのもわからなくはない。
 この方も小説を書いているんですよね。2冊しか読んだことはないけれど、添削したくなるような文章を書く方なので読む気はありませんが。




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転載:「紙ふうせん シークレットライブ」
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新井啓介
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まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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