北澤八幡神社の「立川談四楼独演会」に最初に足を運んだのはいつだったか、何回めだったか、ファイルしている「本日のプログラム」を見ればわかると思っていたら、当のファイルが見当たらない。

 夕景工房のレビューを当たった。当初夕景工房のこの欄は映画評のみ毎週更新していたのだが、途中からコーナータイトルを改め、ライブや展覧会等、何でもありにして、独演会にも触れるようになったのだ。
 初めて書いたのが、02年の6月の会。しかし、タイトルに回数の記載がない。次が06年の12月。これが第149回なので逆算して112回ということが判明したというわけ。

 誤字脱字間違い訂正の上、転載します。

 なお、前項で師匠の本を図書館で借りて読んだとあるけれど、その後、全部揃えました。
 正真正銘のファンですから!

     ◇

2002/06/15

 「立川談四楼独演会」(北沢八幡神社)  

 偶数月は北沢八幡神社で立川談四楼氏の独演会がある。昨年12月、1年ぶりに独演会に足を運び「立川談四楼の北沢八幡落語会」に入会した。平日の独演会には行けないことが多いのだが、年に2回会員向けに「北沢 談四楼文芸かわら版」を発行すると知っては、小説家・立川談四楼ファンとしてはじっとしていられない。  

 北沢八幡宮は下北沢駅からちょっと離れた緑豊な住宅街にあり、初めての時は迷いに迷ったものである。
 開演5分前に到着した。玄関で靴をぬぎ、参集殿へ。参集殿入口の廊下で事務局の女性からチケットを購入して中へ入る。畳張りの参集殿はまだそれほど人はいない。最初は前座の落語なので、混みだすのは真打登場の7時前後。たまには前の方で聴こうか、と空いている座布団に座る。  

 初めて参加した独演会では一番後ろで「目黒のさんま」「柳田格之進」の古典落語2本を聴いた。迫力ある高座だった。小説の語り口そのままの面白さだった。聴き終えてから秋刀魚が食べたくてたまらなかった。
 独演会の趣旨は創作落語と古典落語の2本を披露することだいう。12月の創作落語は「女盗賊プーラン」(お囃子が何と「踊るマハラジャ」のオープニング曲!)、休憩後は「芝浜」という演目だった。日本酒をぐいっとやりたくなった。  

 さて今宵。
 プログラムは次のとおり。  

  開口一番  立川志らべ  
  落語    立川らく八  

  創作文芸落語 「羽衣」 

     仲入り

  「居残り」

 まずこれが初の披露だという創作落語の「羽衣」。
 今話題沸騰のワールドカップから最近物故した有名人、著名人の話。伊藤俊人、ナンシー関、柳家小さん、小さんの通夜で見かけた坊屋三郎……。小さんの話では通夜に駆けつけるかもしれない〈かつて破門した愛弟子〉談志師匠を狙うマスコミ騒動から、自身の真打昇進試験落第の恨みつらみの数々。他人の意見に耳をかたむけあれこれ改革しようとしたのが前落語協会会長の小さん、何もしないのが現会長の円歌だとのこと。ギャグ8割、本音2割の爆笑に次ぐ爆笑話。  

 もしかしてこの話で時間が終わってしまうのではないか、でも面白いからそれでもいいかと思っていたら、創作落語「羽衣」に入る。手塚治虫の短編「雨降り小僧」のような噺にしようということで、まずは「雨降り小僧」の紹介。僕も大好きなストーリーで何度も読んだものなのに、高座で語られるとまた格別だ。ラストはやはりウルウルになる。続いて「羽衣伝説」の紹介。ラストに創作の「羽衣」。あっというまに終わってしまった。「雨降り小僧」「羽衣伝説」「羽衣」の3点セットで一つの創作落語だとか。

 「居残り」は初めて聴く。この噺、個人的にはフランキー堺の出世作「幕末太陽伝」でお馴染みなのだが、本物がどういう内容なのか興味津々だった。  
 居残り佐平次の口八丁手八丁のキャラクターが愉快痛快。「ヨイショ」のしぐさが何度見ても笑える。
 オチは家元談志の作だという。
 そういえば談四楼師匠の指の所作って、家元ゆずりだ。

     ◇

2006/12/15

 「談四楼独演会 第149回」(北沢八幡神社)

 80年代、もういつだったかは忘れたが、TVにむちゃくちゃ面白いモノマネ芸人が登場した。声がソックリで、なおかつ、独特の視点で対象をおちょくるところが新鮮だった。どんな芸だったか思い出せないのだけど。
 確か、もう一度目にして、これからブームがやってくると確信した。
 ところが、その後、全然出てこない。
 芸人の名は丸山おさむ。

 初めてTVで観て大感激したのに、同じように、ほとんどにTVに出演しなかったのがマルセ太郎だった。デタラメアフリカ語が笑いの感性にビンビン響いた。猿の物まねは絶品だ。
 マルセ太郎の場合、後にその芸歴が半端でなく、主に舞台をメインにしていることを知った(渋谷ジャンジャンの「スクリーンのない映画館」を一度は押さえておきたかった)が、丸山おさむについてはほとんど情報というものが得られなかった。

 立川流の顧問である、演芸評論家・小説家(私は週刊文春の〈天下の暴論〉でお馴染みだった)の吉川潮氏は芸人の評伝を何篇か書いている。
 「江戸前の男 春風亭柳朝一代記」(新潮社)は語りの巧さに脱帽した。ラストは涙がとどめもなくあふれて困った。
 小説「本牧亭の鳶」(新潮社)は表題作を含む短編6編が収録されているのだが、冒頭の、物真似芸人を主人公にした「九官鳥」を読んで膝を打った。これ、モデルは丸山おさむじゃないか!
 
 偶数月15日、北沢八幡神社で開催している「談四楼独演会」。師匠の個人事務所の主催になってから、バラエティに富んだゲストの芸も楽しみの一つになっている。
 いつか、丸山おさむがゲストとして登場しないかなあ、なんて思っていたところ、webで師匠のコラムを読んだ。丸山氏(ここから敬称つき)について書かれたもので、すでに独演会には呼んだことがあり、大評判だったと。足繁く通うようになる以前の話だろう。がっかりした。すでに登場したとなると当分ゲストの可能性はない……。
 ところが、ところが。
 今年最後の談四楼独演会のゲストが丸山氏だったのだ。
 どんなにこの日を待ち焦がれていたか!

 平日なので、7時ちょい過ぎに北沢八幡に到着した。前座噺はすでに終了。舞台では12月恒例の常連さんによるかっぽれの真っ最中。
 終了後、Sさんの姿を探すと、な、なんと一番前、それも舞台の真正面ではないか。
「丸山さんをまじかで見られるように(席を)とっておいたから」
 って、あまりに近すぎるよ~。それに、膝送り(混んでくると、前へ移動させられる)で、もうほとんど、舞台の前、見上げるような形での鑑賞である。

 独演会では入場時、「本日のプログラム」と題したA4サイズ二つ折りの薄緑の用紙が配付される。表1、表4にタイトルと式次第が、内側に師匠の挨拶が掲載されているのだが、そこでゲストの丸山おさむ氏に触れている。
 さだまさしを最初に真似た人だとか。TVで笑い転げたのはその芸だったか。
 〈けんかの丸山〉で有名だそうである。売れかかったのに、使い捨てのTV局と喧嘩する。これは慧眼だと思うが、その後もいたるところで喧嘩三昧(?)。ほんとかうそかわからないけれど。

 開口一番 立川三四楼「千早振る」
      立川ラクB「ぞろぞろ」
      立川キウイ「反対車」

      立川談四楼「お国訛り」

      仲入り

 ゲスト  丸山おさむ「昭和歌謡史 ~談四楼師匠のあの日、あの時~」

      立川談四楼「らくだ」

 仲入り後、丸山氏が白いスーツ姿で颯爽と登場。昔にくらべ少々太ったような。あたりまえか。
 もちネタで、芸術祭賞を受賞したこともある「物真似で綴る昭和歌謡史」。師匠の誕生から少年時代、談志師匠への入門、等々、師匠のあの日、あの時と歌謡史をリンクさせてのステージは、もう抱腹絶倒、ニヤニヤ、クスクス、次の展開を読んでのデヘヘヘ笑い。
 美空ひばりに始まって、灰田勝彦、淡谷のり子、石原裕次郎、小林旭、フォーククルセダーズ(「帰ってきたヨッパライ」)、井上陽水。……歌謡曲、演歌、フォーク、ニューミュージック、アンドレカンドレ、ナンデモカンデモ。
 内山田洋とクールファイブの前川清と、安全地帯の玉置浩二は、それぞれ二日酔いの朝に歯を磨きながら、レモンをかじりながら、と講釈がついてのカラオケつき実演で、そのデフォルメに爆笑。マニアック路線の堀江淳に涙が。
 ラストは、日頃苦労をかけている奥さんと一緒に尾崎豊の「I LOVE YOU」。古典芸能(幇間)とJ-POPが見事にクロスオーバーした芸に拍手喝采!!

 トリは経堂の興奮が甦る「らくだ」。とにかく目の前だから、その迫力たるや、あなた……。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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