2015/06/23

 「ジェームス・ブラウン 最高の魂を持つ男」(角川シネマ有楽町)

 TCGメンバーズカード。年会費1,000円で入会するとテアトルシネマ系及び角川シネマ系の劇場の入場料が1,300円になる。だけでなく、火曜日と金曜日は会員サービスデーということで1,000円になる。映画は1,800円で観ない主義を標榜する者にとって、こんなありがたいサービスはない。
 3年前だか4年前に一度入会したのだが、更新せず無効になってずっとそのままだったが、今年GWに再入会した。年間10本観れば入場料1,100円になる計算。悪くない。

 「グッドライ いちばん優しい嘘」(角川シネマ新宿)、「百日紅 ‐Miss HOKUSAI」(テアトル新宿)に続く3本めの観賞は「ジェームス・ブラウン 最高の魂(ソウル)を持つ男」。

 別にJBファンというわけではない。知っている曲は例の「ゲロッパ」(「セックス・マシーン」)ぐらいだ。とはいえ、個人的な趣味嗜好として音楽映画はどんなジャンルでもはずせない。クラシックもロックもポップスも、フォーク、歌謡曲、その他もろもろ、映像で魅せるライブに興味があってスクリーンで堪能したいのだ。実際に演者が演奏し歌ってサマになる、というのがキモ。

 この映画も予告編で役者(チャドウィック・ボーズマン)によるBJのライブシーンに反応した。まさしく本物といった感じで、実際、本編でもパフォーマンスは特筆ものだった。声までソックリで感激したのだが、エンディングタイトルの使用音楽の表記をみて「?!」となり、帰ってから調べると本物の音源が使われていることがわかった。いわゆる口パク。しかし、演奏も含めてまるでそうとは見えなかったし聞こえなかった。まあ今の技術なら当たり前なのかもしれない。昔は演奏も歌声も吹き替えがまるわかりだった。
 
 この映画の売り(の一つ)はプロデューサーがミック・ジャガーだということ。映画の冒頭でJBと若かりしローリングストーンズのメンバーがすれ違う(TV番組で共演)シーンがある。ほんのわずか一瞬なのだが、いかにも当時のストーンズと思わせるソックリぶりにニヤニヤしてしまう。
 JBのマネージャー(ベン・ハート)がダン・エイクロイド。かなり恰幅がよくなっていて、最初「誰だっけ、この俳優?」状態。名前がでてこなかった。「ウルトラマンマックス」にセミレギュラーで出演していた二瓶(イデ隊員)正也みたい。
 
 JBの伝記映画という触れ込みだが、その足跡を時系列に描いていないのがこの映画の斬新なところ。オープニングは1988年にJBが起こした事件(発砲とパトカーとのカーチェイス)が描かれ、そこから少年時代の極貧生活の日々が語られる。基本はJBの成長ドラマ、サクセスストーリーだが、エピソードはさまざまな時代に飛び、それぞれ章立て(タイトルはJBのレコードに因んでいる?)で紹介される仕組み。
 JBを悪の道から救い、ショウビジネスの世界に導いてくれたボビー・バード。演じるネルサン・エリスの笑顔はまるで城島茂みたいで優しいそう。
 映画は、ラストになって、JBとボビーの絆を謳いあげる。ステージのJBの真剣さ、客席のボビーの気恥ずかしさとうれしさが伝わってきて……。

 JBのステージパフォーマンスを観ながらなぜかショーケンを思い出していた。もちろんショーケンは股割なんてしないのだが、手や足の動きが似ているなぁと。
 JBに影響を受けたミック・ジャガーがいて、そのミックに影響されたがショーケンなのだから、彷彿とさせるのは当然かもしれない。

 タイトルがイマイチの印象がある。フルネーム+最高の魂を持つ男なんて当たり前すぎないか。原題は「Get on Up」。日本人には「ゲロッパ」と聞こえる英語をきちんと書くとこうなる。あれ、井筒監督の「ゲロッパ!」では「Get Up!」と表記されていなかったか? 
 「Get Up」は普通「ゲラップ」と聞こえると思う。あるいは「ゲラッパ」か。「Get on Up」なら「ゲロッパ」になってもいい気がするのだが。
 JBが「ゲロッパ」とシャウトすると、ボビー・バードが「ゲロウナ」と合いの手を入れる。「ゲロウナ」が「Get on Up」なのだが。つまり映画はボビー・バードの視点で描いているというわけか。

 それはともかく、本家「ゲロッパ」の方が断然ノリが良い。エンディングロールはもうじっとしていられないんだから。日本の「ゲロッパ!」に欠けていた要素だ。比べる方がどうかしているか。


 【おまけ】

2003/08/28

 「ゲロッパ!」(川崎チネチッタ)  

 井筒監督の「こちトラ自腹じゃ」(テレビ朝日金曜日深夜「虎ノ門」の人気コーナー)はそれほど見たことがないが、傍若無人な批判内容におじけづいたのか、一部の洋画配給会社が監督の劇場鑑賞を拒否する動きに出ている。昔映画評論家の白井佳夫が角川映画の批判ばかりしていることに腹を立てた角川春樹が試写会への出入りを禁止したことを思い出した。まったくもって大人気ない。
 
 井筒監督の映画批評について、それほど怖がることはないと思う。監督がメタクソにけなすのはみなVFXをウリにした映画ばかり。要はこの手の映画がお好きでないということだ。そんな人に批判されたからといって何をびくつくのか。  
 たとえば僕は宝塚歌劇が苦手である。彼女らのステージ衣装、メイクを見ただけで虫酸が走る。そんな態度で舞台をみてもいい印象なんて残らないだろう。当然批評だって偏ってくる。井筒監督と特撮映画の関係もこんなものだろう。
 
 僕が配給会社の担当者だったら、監督にバッサリ斬られたことを逆に宣伝文句に使用するけどな。上映中ゲストに呼んでトークショーでも企画して集客にあいつとめますよ。井筒監督は今や人気タレントなんのだからお客さんがかなり来るんじゃないか。  
 監督がもし〈人間を描くことこそ映画〉と信じているのなら(もちろんそれは正論ですが)、その種の映画をバンバン取り上げて堂々批判したらいい。自分が興味がないヒット作についてアレコレいうのは一番楽なことなのだ。もっと本質的な部分で批評をしてほしい。  

 井筒監督はTVでコメンテーターとして活躍するほか、映画にも端役ではあるけれど出演している。塚本監督「パレットバレエ」のチンピラやくざは妙にリアルだった。久しぶりに見直した「マークスの山」では冒頭で大笑いした。何と主人公のマークスに殺された死体に扮しているのである。  
 井筒監督も山本晋也みたいに〈映画監督〉という肩書きのタレントになってしまうのかと心配していたところ最新作「ゲロッパ!」が公開された。  
 井筒作品のファンというわけではないが、これは制作発表時から期待していた。タイトルがいい。ジェームス・ブラウン(JB)をフィーチャーしたコメディーで主演が西田敏行。昔の西田敏行のエンタテイナーぶりを知る者としてこのキャスティングはベストだ。  
 さて、どこで観ようか。最初有楽町のシネ・ラ・セットを考えたが、あそこはスクリーンが小さい。川崎チネチッタにした。ところがここで難問勃発。ディスカウントチケット屋のチケットが使えないのである。いつもはそんなことないのに「ゲロッパ!」だけダメらしい。1800円出すのはもったいないし、じゃあ別の映画にしようか悩んだ末、レイトショーなら1200円だと知った。  

 熱狂的なJBファンであるやくざの親分(西田敏行)にはふた昔前以上に別れた一人娘(常盤貴子)がいた。5年の実刑をくらった親分は刑務所に収監される前、ひと目娘に会いたいと熱望している。舎弟(岸辺一徳)は、収監前にJBのライブを堪能してほしいと、子分たち(山本太郎・桐谷健太・吉田康平)を使ってJB誘拐を企てる。ところが誘拐したJBはアメリカから来日した物真似タレント、おまけに首相のスキャンダルに関わる怪しいブツを持ち込んでいたことから内閣調査室を巻き込んだドタバタ大騒動に発展していく……  

 お話そのものはまったくありえないものだが、役者たちの怪演が笑いを誘う。  
 主演の西田敏行は福島出身にもかかわらず大阪弁にわざとらしさがない。まったくもって「役者やの~」。岸辺一徳は相変わらずの自分流演技、うまく役柄にはまってしまうから大したものだ。岸辺の奥さん役の藤山直美が披露するダンスの上手さに驚いた。実にキレがいい。篠井英介のおかま演技、強面の塩見三省もみもの。ほかに気になるのは子分の桐谷健太、内閣調査室の男、木下ほうか、常盤貴子の物真似プロダクションの社員、長塚圭史。  

 時に大笑いしながらも作品そのものには物足りなさを感じた。井筒監督が日頃口にする人間ドラマってこんな底が浅いものなのか。おもろうてやがて哀しきの図式はいいとしても、泣きの部分があまりにベタすぎる。山田(洋次)喜劇の悪い部分をなぞった感じ。ゲスト出演の寺島しのぶと西田敏行のかけあいは、笑えるとはいうもののあまりに定番だろう。もっとシュールでブラックな笑い、井筒流喜劇の創出はないものか。人物造形にしてももっと掘り下げたものを期待していたのに……  

 まあそれは百歩譲ったとして、せっかく西田敏行にBJの「セックス・マシ―ン」を歌わせるクライマックスを用意するなら、なぜもっとはじけたものにしないのか。観客がノリノリになって歌詞を口ずさみ、リズムをとる。その勢いで大団円にもっていく……親分一世一代の晴れ姿、そこで父娘の和解があってエンディングでしょう。その後のエピローグが長くてかったるい。


 【追記】
 
 開巻、スクリーンに映し出されたタイトルに違和感を覚えた。「Get Up!」と英語表記なのだ。日本語の表記は無い。ちょっと待ってくれ。JBが歌う「Get Up」が我々日本人には「ゲロッパ」と聞こえるところがタイトルの由来なのではないか。それを英語の「Get Up」では面白くもなんともない。  
 スタッフの肩書きがすべて英語表記というのも井筒流なのだろうか。アメリカ映画風にクレジットをすべてアルファベットにする場合があるが、個人的に趣味じゃない。大いなる学生自主映画と舌打ちしてまう。
 本編上映前に、井筒監督の手による映画主題歌のプロモーションビデオが流れた。はっきりいってセンスが一昔前。わざとなのかなァ。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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