一応、前項より続く

 前項で「ターミネーター3」を大駄作と書いた。先週の金曜ロードSHOWで放映されたこともあり(外出していて観ていないが)、公開されたときのレビューを夕景から転載する。

     ◇

2003/07/17

 「ターミネーター3」(日劇PLEX)  

 1985年、「ターミネーター」がロードショーされた時、胸騒ぎした。触覚にピンとくるものがあって初日に劇場にかけつけた。  
 どこまでも追いかけてくる敵。ひたすら逃げまくる主人公たち。そのスリルとサスペンス。ワクワクドキドキ感。興奮しまくり。こういう映画が観たかったんだとアパートに帰る足取りも軽かった。
 クライマックス後にもう一度ダメ押しのエピソードが続くという構成もこの映画が先鞭をつけたのではなかったか。B級アクションの快作を撮る監督としてジェームス・キャメロンの名がインプットされた。

 キャメロン監督が只者ではないことを思い知ったのは続く「エイリアン2」だ。宇宙を舞台にしたゴシックホラーの傑作「エイリアン」のプロットをそのままに、まったく別物映画を撮り、なおかつ鑑賞後いいようのない爽快感、感動を味あわせてくれたのである。続編に1作めを超えるものはないとは映画の常識であるが、キャメロンは間単にクリアしてしまった(厳密にいえば「エイリアン」「エイリアン2」は単純に比較はできない。個人の嗜好も大いに反映するだろう)。

 それがまぐれでないことは「ターミネーター2」で実証された。  
 この映画もロードショー初日、朝6時から劇場に並んだのだった。期待以上の出来だった。B級から超A級に格上げされた映画の超弩級のアクション演出に目を見張った。CGを本格的に導入し効果を上げていた最初の映画でもある。ラストでは不覚にも涙がこぼれた。サイボーグロボットと少年の心の交流が僕の琴線にビシビシ触れたのである。このラストをもう一度観たくてロードショー終了間際に再度劇場に足を運んだ。
 「エイリアン2」でもラストでヒロイン・リプリーの母性愛、その愛の力が大きくクローズアップされた。そこに僕は瞠目したのだ。「アビス」のそれは夫婦愛だった。

 僕がジェームス・キャメロン監督の映画にこだわるのは見事なストーリーテリング、度肝を抜くアクション、斬新な特撮でぐんぐん押しまくりながらも、ラストでしっかりと普遍的なテーマを浮かび上がらせる演出力による。けっして大仰ではなくさらりと描くところも好感を持った(だから「タイタニック」の、観客の涙をこれでもかとふりしぼろうとするエンディングには少々疑問を抱いた)。    

 ヒット作には続編がつきものである。それも「2」が作られたら「3」は当然。というわけで「エイリアン2」のあと「エイリアン3」が製作されたが、その内容は前作の一番核となるべき部分を否定したもので愕然となった。ヒロインが命を賭して守ろうとした少女をその他の生き残った仲間たちとともにあっさり殺してしまったのだ。「2」の感動はいったい何だったのだろうか。僕は怒り心頭。以後「エイリアン3」は個人的に封印することにした。まったくプロデューサー、監督の見識を疑うばかりだった。  

 同じことがこの「ターミネーター3」にもいえる。  

 未来のコンピュータと人間の戦争を阻止するため、母とともにスカイネットを壊滅させたジョン(ニック・スタール)は無気力な日々を送っていた。母はもうこの世にいない。ジョンは平穏な毎日の中で生きる目的を失い放浪生活を続けていた。ドラッグ中毒の彼は薬を求めてある動物病院に侵入、そこで昔クラスメートだった女性ケイト(クレア・デーンズ)と再会することになる。  
 そんな中未来から女ターミネーター、T-X(クリスタナ・ローケン)が転送されてきた。ジョンのクラスメートたちを次々に抹殺していくT-X。彼女を追って旧型ターミネーター、T-800(アーノルド・シュワルツェネッガー)も現代に現れる。  
 スカイネットはまだ機能している! T-Xの狙いは何か? ジョンとケイトを巻き込みT-XとT-800の壮絶な戦いが始まった……    

 もともとキャメロン監督が絡んでいないこともあってこの映画にはまったく期待していなかったのだが、予告編を観てもっと情けなくなった。ジョンがあまりにか弱すぎる、頼りなさすぎる。
 ただしこのキャスティングは「2」に続く続編として大いに意味あることが前半でわかってくる。確かに審判の日を切り抜けた少年にしてみれば、その後の生活なんて屁みたいなものだろう。おまけに愛する母親はもういないのだ。
 目的を失い怠惰な放浪生活を送る青年が、運命的な女性と出会い、サイボーグとの戦いの中で本来の自分を見つけだす物語。コピーの「未来など決まっていない。運命は自分で創り上げるのだ。」とはそういう意味なのか。そう勝手に判断して観続けた。 

 中盤に用意されている破壊につぐ破壊に徹したアクションが凄まじい。ジョナサン・モストウ監督の演出もなかなかのものだ。「マトリックス リローデッド」のハイウェイシーン同様一見の価値がある。
 映像に興奮しながらやはり気になるのはジョン・コナーである。今にジョンはかっこよくなる、よくなる……。ところがちっとも精悍さを取り戻さない! 最後まで頼りないまま。逆にケイトの方が徐々に勇ましくなっていく。
 それも仕方ない。我慢しよう。だが、あのラストはいったい何なんだ? エンディングロールを見つめながら暗い気分になった。あんな結末を誰が予想しただろう。「2」のテーマなんてまったく無視されてしまっているではないか。

 「エイリアン」シリーズにおけるキャメロンは「2」の演出を請け負った監督でしかなかった。しかし「ターミネーター」シリーズのキャメロンは原作、監督のほかにプロデューサー的な役割も果たしていたと思うのだ。キャメロンが考えていたのはこんなラストだったのか? まるで今のアメリカを象徴するようなラストである。
 本当は「2」で終了した物語を「4」、「5」に繋げるために企画された映画としか思えない。続編ではケイトがもっとクローズアップされるだろう。


 【追記】

 T-Xを見て、アイドルあややがオーバラップしてきた。別に顔が似ているというのではないのだが、無表情の無機質なところ、表情をつけた時とのギャップがそっくりなのだ。




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プロフィール

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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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