いつのころからか、特撮に対する趣味嗜好がまわりとズレていることに気がついた。たぶんインターネットを利用するようになってからだから1990年代の後半だ。考えが主流でないのである。それはいいのだが、自分の考えが間違いだとは思っていないかったので、孤独感にさいなまれた。

 世代によって嗜好が大きく違うのはわかった。第一期ウルトラにハマったファンと第二期ウルトラのそれでは作品に求めるものが変わってくる。過去の作品だけでなく新作に対しても。

 名無しの権兵衛さんには舌打ちされそうだが、ウルトラ兄弟の競演なんてあまり歓迎したくない。平成ウルトラマンシリーズはM78星雲とは関係ない、別設定によるウルトラマンのため、ウルトラ兄弟のゲスト出演はなくなったが、「ウルトラマンダイナ」の映画化では、ティガとダイナの競演が話題を呼んだ。
 世界観が売りの一つだった「ウルトラマンガイア」が映画化されると知ったときは、大いに喜んだものだが、ティガとダイナがゲスト出演すると知ってのけぞった。映画は幼児を対象にしたファンタジーもので、作品自体はよくできていたが、なぜ「ガイア」でこれをやるのか? という不満が残った。

 僕はウルトラマン映画にいわゆる〈お祭り〉なんて求めていない。何度か書いているが、かつてのTVシリーズ「スーパーマン」や「バッドマン」が映画として蘇った、あのテイストを願っているのだ。

 「ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY」は念願の作品だったわけだ。

     ◇

2000/04/01

 「ウルトラマンティガ THE FINAL ODYSSEY」(丸の内プラゼール)

 やっとTVシリーズの世界観そのままのオリジナル映画を観ることができた。
 当初、この映画の製作が発表された時、内容がどんなものになるのか、自分なりに想像していた。
 TVシリーズでは宇宙から何者かが地球に侵入していたというエピソードが何度か描かれていて、その謎についてはあまり言及されていなかったことから、今度は地球外生物とティガおよびGUTSの最終決戦になるのではないか。と、同時にガタノゾーアとの戦いで基地を破壊されたTPCの再建模様、GUTSからスーパーGUTSに移行する下地なども描かれればいいな、と。

 予告編で映画「ティガ」に初めて接した時は愕然とした。またしても超古代文明に関する物語、それもかつてティガの仲間だったというゴテゴテに装飾された3人のウルトラマン(闇の巨人)、〝いかにも〟といった感じの悪役三人衆の登場。僕にとって一番観たくないパターンなのであった。
 特撮もミニチュアの古代遺跡を舞台にした超人同士の戦いなので、巨大さも迫力も感じられなかった。
 公開されてから、目にする映画評があまり芳しいものでなく、期待感はどんどんしぼんでいく……。

 全くの杞憂だった。ストーリー自体は想像していたとおりだったが、ティガと闇の巨人たちとの戦い、GUTSによるイルマ隊長救出作戦のドラマが見事にシンクロして、クライマックスはかなりの興奮ものだった。
 実のところ、ロートルなウルトラファンとしてはウルトラマンと敵(怪獣、宇宙人etc)の着ぐるみによる肉弾戦にはほとんど興味がなくなっている。
 だから観る者にカタルシスを与える怪獣の都市破壊、ウルトラマンとの戦いがなくてもどうでもいい(あればあったでうれしいけれど)。

 何を「ウルトラ」に期待しているかというと、人間(特捜チーム)が敵(怪獣でも宇宙人でも巨大メカ、なんでもいい)を倒すために、どんな作戦をたて、持てるメカや兵器をいかに駆使して迎撃するか、というところのドラマであり、そんな攻防を緊迫感あふれる演出と斬新な迫力ある特撮でみせてほしいと常々思っている。
 もうひとつは近未来の社会、架空の防衛組織というものをセット(ロケセット)、ロケーション、特撮(ミニチュア&CG)を巧みに組み合わせてリアルに映像化してもらいたいこと。
 TVシリーズだとスケジュールや予算の関係でむずかしいかもしれないことも、映画作品ではある程度可能なのではないだろうか。

 そういう意味ではほぼ期待どおりの作品であった。
 特撮に関しては小中監督による前2作のような驚きはなかった。
 村石監督は「ティガ」「ダイナ」でかなり斬新な特撮シーンを意欲的にみせてくれていたのに、どうゆうわけか「ガイア」になってからどうも今ひとつといった感じがしてならない。

 最初の見せ場であるガゾートの群れが都会を襲うシーンはかなりの迫力ではなるけれど「ガイア」最終3部作の焼き直しだし、ウルトラマンと闇の巨人の戦いはこれまでシリーズで何度となく扱われているウルトラマン対偽ウルトラマンのパターン以外何物でもない(ティガと光のムチを振り回すカミーラとの戦いはかなりキタけど)。
 とはいえ、この戦いにはスクリーンサイズを意識したさまざまな工夫がされていたように思う。ほかにも破壊されたビルの残骸から鉄骨がむきだしになっていたり、古代遺跡の島が崩壊する際の(たぶんCGの)波模様がリアルだったりと細かいところに神経を注いでいた。

 特撮シーンの舞台が古代遺跡の島に限定されてしまって開放感がなかったことは残念。ストーリーがそういうものだからまあ仕方ないことか。
 くやしいのは古代遺跡の街をマット画とミニチュアだけで簡単に表現してしまったこと。これは絶対セットなり、ロケーションなりで古代都市の一部を再現し、実際に俳優をその場に立たせなければ雰囲気が伝わってこない。こういう処理こそCGをつかってほしい。

 ダイゴとレナのラブストーリーがメインの物語であるが、イルマ隊長とムナカタ副隊長のほのかな恋愛を感じさせる信頼関係の描写がなかなかいい。
 スーパーGUTSの面々も意味のある登場の仕方で好印象。
 本作はこれまでと違ってターゲットの年齢層を上げ、アニメの併映もなく上映時間も長い。にもかかわらず観客の大多数を占める就学前の子どもたちは人間たちのドラマ部分に飽きる様子もなくスクリーンを見つめていた。
 面白ければ子どもが活躍しなくても十分通用するのである。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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