特撮映画レビューの転載、すべて完了と思っていたら、まだ残っていた。
 この映画が面白かったのは特撮を担当した樋口特技監督の功績だ。それは絶対だと思う。
 思えば、2000年代の途中まで、特撮映画がけっこう制作されていたのだ。今は完全に冬の時代になってしまったが。いつからこうなったのか。ああ、ゴジラ映画が作られなくなってからか。

     ◇

2000/08/25

  「さくや妖怪伝」(丸の内シャンゼリゼ)

 映画館で初めてこの映画のポスターを見たとたん期待に胸ふくらませた。
 タイトルの〈妖怪〉という文字、ヒロインが「ガメラ3 邪神覚醒」で注目した安藤希。ヒロインと妖怪の対決モノなんて考えただけでワクワクしてしまった。

 幕府の命を受け、〈弟〉の河童の太郎を連れ、伊賀・甲賀の忍者2名をお供に妖怪退治のため全国行脚にでた妖怪討伐士・榊咲夜の物語。手塚治虫の「どろろ」的シチュエーションを「妖怪百物語」「妖怪大戦争」といったかつての大映映画でお馴染みの妖怪キャラクターの共演で味つけした特撮活劇映画である。
 原作・監督が特殊メーキャップ、造形の第一人者である原口智生なので、登場するさまざまな妖怪たちの描写(造形と見せ方)が楽しみだった。
 前半の道中部分のエピソードはそれほど新味はない。善玉の妖怪たちが音楽にあわせて踊るお楽しみシーンも「妖怪百物語」ラストの乱舞シーンを知る者としては少々物足りない。そもそも期待していた現代技術を駆使した妖怪の造型そのものが昔の作品とあまり代わり映えしなかった。
 原口監督は91年にビデオ用映画としてSFものの「ミカドロイド」で監督デビューし、大いに期待して試写を観たものだが、映画自体にそれほど魅力を感じなかった。
 今回も肩透かしをくらうのかと思いながら途中でウトウトし始めたのだが、クライマックスの松坂慶子扮する巨大な土蜘蛛妖怪とさくやの戦いになるやいなや、その怒涛の展開に目を見張った。このスペクタクルシーンが観られたことだけでも「さくや妖怪伝」を評価したい。

 人間と巨大妖怪の戦いを映像的に違和感なく成り立たせている。
 実際に松坂本人が土蜘蛛の衣装(着ぐるみ)をまといミニチュアセットで演技しているのがすごい。衣装の隅々まで神経がいきとどいており、松坂の妖艶さに拍車をかける。特に爪の造型、その動きにしびれた。
 日本映画伝統のアナログ技術と最新のデジタル技術が見事に融和しており、日本特撮の真髄、可能性を見せつけられた思いがする。
 これは日本映画史における20世紀最後の1つのエポックメーキングではないか。

 ファミリー映画とも言うべき「ジュブナイル」や「さくや妖怪伝」が大ヒットして、特撮(が売りの)映画のジャンルがもっともっと広がればうれしいのだが……。

     ◇




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新井啓介
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まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町のブックカフェ二十世紀で働いています。さまざまなイベントを企画、開催していますので、興味あれば一度覗いてみてください。

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