観る会まで我慢できなくて本日、地元シネコンで「ジュラシック・ワールド」鑑賞。
 リアル・ゴジラ対アンギラス、リアル・ゴジラ対ゴジラに感激!

          * * *

 この映画の批判の一つにゴジラの設定がある。ゴジラが太平洋戦争で散った日本兵士の残留思念だというアレである。問題視する人たちがいることが不思議でたまらなかった。
 いや、僕だって、映画の中で本当にゴジラがそんな扱いをされていたなら怒り狂ったと思う。でも、映画の中でそんな描写は一つもなかったでしょう? あくまでも登場人物の天本英世が語るだけで。

 そんなことより、僕にはモスラやキングギドラの登場の方が気になってしかたない。ゴジラとの戦いがヴィジュアル的に面白くないのだ。見飽きているからだろう。当初の企画どおりアンギラスやバランだったらと思わずにはいられない。

     ◇

2001/12/15

 「ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃」(日劇東宝)  

 監督に平成ガメラシリーズの金子修介、脚本に横谷昌宏(「クロスファイア」「溺れる魚」)、長谷川圭一(平成ウルトラマンシリーズ、劇場版)とくれば、期待しないわけにはいかない。  
 東宝もやっと外部のスタッフに活力を求めたことになるが、遅すぎるくらいだ。  

 当初製作ニュースで内容を知った時は悪役に徹するゴジラ、その造型に納得したものの、対戦する怪獣に疑問を持った。伝説の怪獣〈護国聖獣〉という設定でモスラ、キングギドラ、バラゴンが再登場するというのだ。ゴジラの日本上陸を阻止するため現代に蘇る日本古来の怪獣がモスラ、キングギドラはないだろう。
 モスラはインファント島の守り神だし、キングギドラは宇宙怪獣。平成になってから二匹の設定、性格も変わったが、それにしても人気怪獣を出せば何とかなるという会社側の思惑がかなり強い配役である。
 護国聖獣だったらバラゴン、バラン、マンダあたりが妥当じゃないかと個人的に考えたのだが、実際当初の金子監督の企画ではバラゴン、バラン、アンギラスだったとか。そういえばずいぶん前に、次作にはアンギラスが登場する、なんて噂が流れたことがあったっけ。
 本当はこういうプロットこそオリジナル怪獣で勝負すべきなのだが、大ヒットを狙うには仕方のないことかもしれない。  

 着ぐるみ然とした怪獣同士がミニチュアセットで戦う構図に辟易している僕は〈VSもの〉にあまり食指が動かなくなってきたのだが、護国聖獣が悪役・ゴジラと戦うプロットにはうなづけた。原点にもどって人間の敵になったゴジラが「VSスペースゴジラ」以降敵対する怪獣とバトルをすることによりヒーロー然となってしまった。ここに平成ゴジラシリーズのドラマが袋小路に陥った最大の要因があると僕は思っている。

 ゴジラも敵対する怪獣も人類の敵となると感情移入がしにくいのだ。  
 人間側の主役がいてその敵のゴジラがいて、そのまた敵の相手怪獣がいる。この構図だとゴジラの存在が中途半端になってしまってドラマ作りがむずかしい。敵怪獣とのバトルシーンではゴジラを応援するものの、倒してからはそのゴジラが人間に襲いかかる。観客としてどこに主観をおくのか、誰に感情移入すればいいのか、観客のエモーションを喚起させるものが希薄になってしまう。  
 だからあまりに強すぎるゴジラのキャラクターを逆手にとって完全な悪役として人間側に位置する怪獣と戦わせることによりその強さ、怖さを描く方法は巧いと思った。

 もうひとつ、最近の傾向としてゴジラと敵対怪獣とのバトルがバトルだけで成り立ってしまい、人間側のドラマが希薄になってしまっていることがあげられる。怪獣対怪獣の特撮の威力は人間ドラマをからませることによって相乗効果を発揮するものだ。  
 この映画の、僕にとっての見所はオールスター怪獣の戦いと人間ドラマをどうリンクさせてくれるか、につきた。横谷昌宏の構成力、長谷川圭一の熱いドラマ作りをもってすればこれまでの煮え切らないゴジラ映画を払拭するようなドラマを展開させてくれるだろう。シナリオさえしっかりしていれば演出は金子監督なのだから何の不安もない。

 試写会等の噂を聞くにつれ、僕の期待は破裂しそうなくらい膨らんで、初日に劇場に足を運んでしまったのだった。    

 期待は裏切られなかった。平成のゴジラシリーズ、特に「VSスペースゴジラ」以降ずっと抱いていた不満がかなり解消された。  
 冒頭から密度の濃いドラマが展開される。USゴジラに対する軽いジャブがあり、目を見張るビジュアルに驚かされ、ふと笑いがあって心和ませる。  
 内容は平成ガメラシリーズの応用といえるかもしれない。前半は「ガメラ 大怪獣空中決戦」、後半は「ガメラ2 レギオン襲来」。護国聖獣の設定には「ガメラⅢ 邪神覚醒」の影響がみられる。それに「ゴジラ」第一作に対するオマージュや「GODZILLA」の映像への挑戦が垣間見られる。暴走族や無軌道な若者に対する天罰は「クロスファイア」のスピリッツそのまま。

 何よりバラゴンとゴジラのバトルにしびれた。人間の目から見た光景。全体を把握さえるためのTV中継の俯瞰ショットが効果的。
 ロープウェイを横切るバラゴンのショットは「ウルトラQ 五郎とゴロー」の冒頭に勝るとも劣らないインパクト。今の子どもたちは今後、ロープウェイに乗るたびに前方にバラゴンの姿を思い描くのだろうか。僕がゴローの姿を求めてしまうように……。
 今回、うれしかったのは確かに怪獣は着ぐるみではあるけれど、大胆に、繊細に実景と合成していることだ。ミニチュアっぽいカットというものがなかった。

 幼虫モスラの活躍がなかったのは残念だったが横浜の夜空を飛行するCGモスラがよかった。こと飛行ということに関してはCGの威力ぬきには考えられないだろう。昔ながら吊りによるのんきな飛行なんて見せられたらたまらない。
 キングギドラの造型はイマイチだった。3本の首の両端の首がもろ中のスーツアクターが手で動かしているのが一目瞭然だ。

 TV中継に生きがいを見つける娘、ゴジラ退治に命を賭ける父。二人の気持ちがゴジラの襲撃をとおして、ひとつになっていくところは目新しくはないけれど、やはりこちらの心に響いてくる。
 うれしかったのはラストで人間対ゴジラに焦点を合わせたこと。「生きて帰って」の台詞は目頭が熱くなる。

 たぶん勢いで描いているところもあるから何度も観るとアラも目立つような気もするが(突如焼津湾に現れたゴジラが防衛軍のレーダーにキャッチされないで、大涌谷に来られるはずがない)、僕は気にならなかった。全編ビジュアルショックにおおわれていたからだろう。
 新山千春は思ったとおり、スクリーンの中で十分魅力的だった。ミスキャストではないかと少々不安の宇崎竜童もいい味だしていた。その他仁科貴、佐野史郎、モロ師岡等、キャスティングが功を奏している。ガメラ映画の常連さんのゲスト出演もファンにはたまらない。

 ほとんど誉めてばかりいるが、不満なところを2点ばかり。
 せっかく気分爽快にラストを迎えたのだから、海底で動くゴジラの心臓を見せて、やはりゴジラは不死身です、なんていちいち断らないでほしい。
 それからせっかく音楽に大谷幸を起用したのだから、エンディングロールは大谷幸のゴジラのテーマを聴かせるべきではなかったか。いやあれは金子監督のゴジラ第一作と「怪獣大戦争」への敬意なのだろうか。  

 本作が大ヒットしたからといって、すぐに金子監督のゴジラ第2弾を撮らせるようなことをしてほしくない。安易な企画は足元をすくう。来年は「ハム太郎」豪華2本立てでいい。


 【追記】

 バラゴンが婆羅護吽、モスラは最珠羅、そしてギドラは魏怒羅。劇中にでてくる「護国聖獣傳記」に表記されるネーミングである。
 「ガメラ 大怪獣空中決戦」を観た際に僕がまっさきに願ったのは、金子監督に「フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ」のガイラを復活(設定は別になんでもいい、人を食う人間型の怪獣のキャラクター)させてほしいということだった。タイトルは「餓夷羅」。ガイラとガイラに狙われた5人の若者たちの限定空間(島)における食うか、逃げるかの追いかけっこ。狙いは悪くないと思うのだけど。




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プロフィール

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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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