山崎貴監督が「ジュブナイル」で劇場映画デビューしたときはちょっとした衝撃だった。しかし2作めの「Retuner リターナー」で怒り狂う。いつか観たハリウッド映画のいいとこどりのショットばかりだったから。北村龍平監督にも言えることではないか。
 3作めの「ALWAYS 三丁目の夕日」でヒット監督の仲間入りをするわけだが、以後、タイトルが気になりだした。
 「BALLAD 名もなき恋のうた」「SPACE BATTLESHIP ヤマト」「friends もののけ島のナキ」「STAND BY ME ドラえもん」。
 なぜ頭にアルファベットの単語を挿入するのか? これが嫌でたまらなかった。監督の趣味だと思っていたら、プロデューサーの方針らしい。「永遠の0」や「寄生獣」の映画化のときは原作の力の前にアルファベットのオリジナルタイトルは入れられなかったのか。よかった、よかった。

     ◇

2000/07/18

 「ジュブナイル」(日劇東宝)

 初めて劇場でこの映画の予告編を観たとき、アメリカ映画のような特撮(クレジットにはVFXと表記されている)に度肝を抜かれた。昭和30年代を彷彿とさせる家並に最新ロボットが登場するシーン、巨大な宇宙船が航行するシーン、どちらも質感といい、動きといい、まさしくホンモノって感じで、もうそれだけでこの夏一番の期待作になった。
 おまけに内容は少年たちの一夏の冒険物語だし、タイトルはそのものずばりの「ジュブナイル」。期待するな、という方が無理というものではないか!

 小学6年の頃、クラスメートたちと学校の図書館にあった福島正美、光瀬龍、豊田有恒等のジュブナイルSFをまわし読みし、夢中で感想を語り合ったものだ。その後「タイム・トラベラー」を皮切りにNHK「少年ドラマシリーズ」を毎週(毎日)観るようになった僕としては「ジュブナイル」という単語に格別な思い入れがある。

 少年の一夏の冒険ものといえば「少年ドラマシリーズ」に「ぼくがぼくであること」があった。夏休みに家出した主人公の男の子と見知らぬ田舎町の老人と孫娘との触れ合いを描く物語で、男の子が憧れる少女がとてもかわいくて、ドラマ自体もよくできていた。
 大学時代、山中恒の原作の文庫を見つけ読んでみたら、主人公の親や学校に対する不満、怒り、異性への甘い想い等々、いろいろ共感することが多く、僕にとってのジュブナイル小説の決定版となった。
 少年+夏=冒険という公式もこの小説を読んでからできあがったように思う。自分の小学時代を考えてみても、確かにあの頃は夏休みの毎日が太陽のようにギラギラ輝いていたもの。

 未来からやってきた「テトラ」という小型ロボットと4人の少年少女たちが町の天才青年の協力のもと地球を征服にやってきた宇宙人を退治する物語でお話自体は特に目新しさはない。
 映画は少年が活躍する過去の名作、話題作から引用したシーン、構図が散見される。
 少年たちが線路でジャレ合うシーンはもろ「スタンド・バイ・ミー」なのであるが、まあそれはいい。なぜメンバーが少年3人+少女1人なのか。映画的にはここはやはり少年2人+少女1人だろう。そこまで「スタンド・バイ・ミー」を意識するのか?そんな疑問がエンディングクレジットの「For Fujiko. F. Fujio」で氷解した。
 これは山崎監督(本作が劇映画デビュー作)の「ドラえもん」なのであった。主役の少年がのび太、憧れの少女がしずかちゃん、あとの二人がジャイアンとスネ夫。当然未来からのやってきたテトラはドラえもん。テトラの送り主が誰かというのがわかるラストエピソードからもうかがいしれる。

 できれば現代だけの、つまり少年たちの一夏だけの冒険物語として映画を完結してほしかった。ラストでテトラの謎(未来の話)が明かされるにしても、現代社会と乖離するような未来世界を描いてほしくない。
 だからテトラとの別れになって、ある種お涙頂戴的な盛り上げ方に不安を覚えた。目を瞠る特撮が見せ場としても、しょせんこの程度の映画なのか、と。しかし映画のテーマはその後に続く少年たちの未来の物語にあったのだった。ラストでこの映画がとても愛しいものになった。

 主役の少年たちがハツラツとしていてうれしくなるが、何といっても香取慎吾扮する天才科学者がいい。
 今のTV界が視聴率確保のため、ジャニーズ事務所(のタレント)一辺倒になっていることにうんざりしているところに、この映画にもSMAPの香取慎吾が主演するというので、少々引いてしまう部分でもあったのだが、これが大いなる間違いだった。まさしく適役であり、ドラマをぐっと引き締めてくれた。

 エンディングクレジットの8㎜フィルム風のタイトルバックが郷愁を誘った。映像と主題歌(山下達郎)がフィットして、これこそ〈胸キュン〉ものだ。個人的には挿入歌の「ぼくらはアトムの子」というフレーズに反応してしまうのだが。

     ◇

2002/08/17

 「Retuner リターナー」(イイノホール 試写会)  

 山崎貴監督の劇場映画デビュー作「ジュブナイル」を観て、そのハリウッドばりの特撮映像(VFX)に目を瞠った。主人公の少年が操縦するロボットが住宅街を闊歩するシーンにたまらない魅力を感じ、山崎監督にはぜひ皆川亮二のコミック「ARMS」(少年サンデー連載)を映画化してほしいと思った。  
 神の腕を持つティーンエイジャーの少年(少女)たちが活躍する冒険活劇。彼らが〈ARMS〉という超人に変身して、大都会を舞台に敵と繰り広げる壮絶なバトルシーンが観たい!  
 これまでこの手のコミックはアニメ映画化されるのが通常なのだが(実際「ARMS」はTVアニメ化された)、山崎監督の映像センスなら絶対実写化できるのではないかと。

 山崎監督の第2弾が金城武主演の「Retuner リターナー」であることはずいぶん前に劇場予告編で知った。内容はわからないが、その映像の断片からこれまでの邦画にないSFアクションものの香りに満ち溢れていた。  

 公開を今か今かと待ち焦がれていたところ、試写会の話。「待ってました!」とはこのことだ。
 土曜日10時からの試写会。金城ファンの女性たちが多数かけつけるだろうから(「スペ-ストラベラーズ」の試写会の混みようったらなかった)、早起きして2時間前に行ったら、誰もいない。近くのマクドナルドで時間をつぶして30分後に行くと、ちょうど係りの人がフィルム缶を入れた重たそうなバックを持ってやってきたところだった。
 試写会の列の一番前に並ぶなんて生まれて初めての経験。ちょっと気恥ずかしい。  
 結局さほどの混雑もなく、ホールも満杯になることがなかった。休日、それもお盆休みの午前中ということもあるのだろうか。

 映画は「ジュブナイル」同様に山崎監督のオリジナルである。原作ものばかりが目立つ映画界(これは日本だけでなく、アメリカも同様、要は企画がないのだ)にあって大いに評価できるし、何とも頼もしい。

 依頼者の情報にもとづき闇の取引き現場に潜入してブラックマネーを奪還する〈リターナー〉と呼ばれる一匹狼の男・ミヤモト(金城武)。港に停泊する船。そこで行われている人身売買。潜入したミヤモトは買い手一味のボスの顔を見て驚く。かつてミヤモトの親友を殺し、以来ずっと追い求めていた溝口という悪党(岸谷五郎)だった。
 激しい銃撃戦の末、溝口を取り逃がしてしまうミヤモト。おまけに現場に迷い込んだ謎の少女・ミリ(鈴木杏)を敵と間違えて誤射してしまう。一命をとりとめたミリはミヤモトの素性を知るや、クライアントとして仕事を依頼したいと言う。今から二日後、地球の未来を恐怖のどん底に陥れる事件が起こる。それを未然に防ぐことが自分の使命だと。少女は20年後の荒廃した未来からやってきた……  

 斬新なビジュアルがあって、それなりに楽しめる。が、手放しで喜べない。気になるのがストーリーも映像もいつかどこかで観た映画のワンシーンというところなのだ。  
 20年後の世界は「ターミネーター」。ミリが未来から持ってきた〈加速装置〉は金城に「マトリックス」のあのシーンを再現させさかったから(だから皮のロングコートを着ていたのか?)。極悪非道な溝口は「ブラックレイン」の松田優作か。「E.T.」もある。  

 ストーリー自体も目新しさはなく、ラストの落ちも途中で容易に想像がついてしまう。  
 冒頭の英語表記のクレジットでふと感じたこと、人気スターを配し最新の特撮技術を駆使して製作された学生の8mm自主映画みたい、とは言い過ぎだろうか。角川春樹の監督作が頭をよぎる。  
 せめて、限られた3日間の中でミヤモトとミリのコンビが課せられた使命を果たそうと、悪戦苦闘する姿、それこそハリウッド映画が得意とする〈Ride to rescue〉、間に合うかどうかのハラハラドキドキ感を堪能したかったのだが、予定調和の展開にクライマックスでも落ち着いていられた。  
 2作続けて〈タイムトラベル〉ものというのもどうだろう。「ジュブナイル」と「リターナー」は違うジャンルの映画に見えて、その実中味は同じなのだ。
 前作でハートウォーム、胸キュンをやったのだから、今回は徹底的にハードに仕上げて欲しかった、というのは「リターナー」という映画に対するこちらの勝手の思い込みか。  

 特撮は何も怪獣映画の専売特許ではない。「ゴジラ」や「ウルトラマン」「仮面ライダー」だけが特撮ではないはずだ。それこそいろんなジャンルがあってもいい。  
 山崎監督はそのさまざまなジャンルの映画に挑戦できる、なおかつ洋画しか観ないような人たちをも納得させる絵作りの才能を持つ稀有な存在だと思う。小手先の、寄せ集めのオリジナルではなく、本当の意味のオリジナルで(実力のあるシナリオライターを起用してもいい)観客にビジュアルショックを与えて欲しいと切に願います。  


 【追記】
 
 前の方の、眺めのいい席に座ったにもかかわらず、イイノホールのスクリーンがやけに小さく感じた。それに音が悪い。この映画を楽しむには迫力ある映像と音響が必要だろう。劇場でもう一度観直したい。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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