今秋、フリースタイルから〈小林信彦コレクション〉が刊行される。フリースタイルといえば、10年以上前に都築道夫の「推理作家の出来るまで」で名前を知った版元だ。上下2巻の分厚い本だった。「エラリィ・クィーンズ・ミステリ・マガジン」初代編集長に対して、「ヒッチコック・マガジン」編集長の本が出るというわけで、今からワクワクしている。

          * * *

2015/08/14

 「流される」(小林信彦/文春文庫)

 文學界掲載時、単行本化、そして今回の文庫化と都合3度読んだことになる。これまで、ラストで単なる脇役だと思っていた人物の言葉にグッときて涙を流していたのだが、今回はそれほどでもなかった。

 小説とはいえ、昔の作品群と比べるとずいぶん違う。エッセイ風小説とでもいうのだろうか。ドキュメンタリーフィクションという文字も浮かんだ。そんなジャンル、言葉はないが。「日本橋バビロン」から顕著になった。「和菓子屋の息子 -ある自伝的試み-」「日本橋バビロン」「流される」を3部作としてまとめてもおかしくない。「和菓子屋の息子 -ある自伝的試み-」はウィキペディアではエッセイのジャンルに入っている。

 文學界に掲載された短編「夙川事件」もエッセイ風小説というようなものだった。この短編を読んである期待をした。「夙川事件」を皮切りにあの時代を描く短編を4編ほど書いて、新たな連作短編集を上梓するのではないか、と。「袋小路の休日」「ビートルズの優しい夜」に続く連作短編集だと思えばもう胸が高鳴る。

 結局「夙川事件」に続く新作短編は発表されず、過去の作品(「半巨人の肖像」「隅の老人」「男たちの輪」)とまとめられて「四重奏 カルテット」(幻戯書房)となった。これには少しばかりがっかりした。「隅の老人」は「袋小路の休日」の一編であり、「四重奏 カルテット」に所収するにあたって、他の作品と共通するように、主人公の名前を変えているのだ。そういう処置はどうなのかと。せめて「隅の老人」に代わる短編だけでも新作だったら。まあ、それだけ作者にとって思い入れのある作品なのだろう。また、新たな作品を書く時間も考慮したのかも。


2015/08/18

 「少女マンガジェンダー表象論 〈男装の少女の造形〉とアイデンティティ」(押山美知子/彩流社)

 もうずいぶん前に図書館の棚で見つけて興味はあった。ただ手に取るまでに至らなかった。やけに難しそうだったからだ。
 今回、「まぐま」の手塚治虫特集号に「トランスセクシャルと手塚治虫」と題する論考を書こうと思って、読んでみたのだが、思ったとおり難しかった。
 本書は論文であり読み物ではない。以前、読んだ月刊平凡についた書かれた本を思い出した。なぜもっと平易に書けないのだろうか。
 第3回女性史学賞受賞作品であり、それを記念してか本書は増補版だった。

 ちなみに「トランスセクシャルと手塚治虫」の元ネタはこちら
 新しく書くにあたって以下に副題がつく。石ノ森章太郎特集のときの「石ノ森ヒーロー論」同様、どれだけ長いタイトルにできるかで勝負している。
「ジェンダー論なんてこむずかしい話ではなく、腐女子に人気なのがBLものなら、その対極には略称〈少年少女文庫〉あるいは〈強制女装〉があり、少年が少女に変身(性転換)する過程に萌えるという文化には、その根っこに手塚マンガが大いに関係しているのだ! と、小学生時代「リボンの騎士」に夢中になった私が主張する経緯と理由」
 しかし、本書を読んで論考を書く自信が失せた。コラムにしょう。


2015/08/21

 「努力とは馬鹿に恵えた夢である」(立川談志/新潮社)

 いかにも偽悪者・談志が言いそうな言葉だな。書名を見ながら思った。調べたら「やかん」にでてくるフレーズだった。
 死してなおエッセイ集(?)が上梓される。この前は映画評論集が出たのではなかったか。まだまだ談志本は作られるのだろう。
 表紙の写真は「いつも心に立川談志」の橘蓮二。


2015/08/25

 「歌謡曲 ―時代を彩った歌たち」(高護/岩波新書)

 岩波新書がこんなに面白くていいのかしら。平易な文章で、かつためになる。小林信彦のコラムシリーズみたい。
 これまでなにげなく耳に目にしていた歌謡曲の曲や詞にどれほどのものであったか。画期的であったか。特に詞の存在、その重要性に耳を傾ける。
 本書を各家庭に1冊常備しておいても思い出のメロディー、懐かしのメロディー等々のTV番組で昭和の歌謡曲が流れてきたら、ちょっと調べてみるというような具合に。
 村井邦彦について触れていないのが不満。


2015/08/28

 「続・フレンズ」(ルイス・ギルバート/村上博 訳/ハヤカワ文庫)

 中学1年生の冬(3学期)に「フレンズ」を観て感動して、ハヤカワ文庫からでているノベライズを買い求めた。エルトン・ジョンのシングルを買った。映画館で2度観て、その後もTV放映されると必ずチャンネルを合わせた。
 続編が公開されると知ったときはとんでもなくうれしかった。ある日、書店で「続・フレンズ」の単行本を発見。すぐに買い求めて読んだ。ポールとミシェルに再会できた喜びで胸がいっぱいになった。
 文庫本も単行本も郷里の家にある(と思う)。

 BOOKOFFで文庫を見つけたときは、中学校の同窓会で好きだった彼女に出会ったようなときめきを覚えた。
 18歳のポールとミシェルはもちろん、ミシェルが同棲していたギャリーの32歳をもはるかに超えた年齢になってしまった。気持ちはあの頃のままなのに。
 計算してみたら、ふたりの娘シルヴィは現在40歳を過ぎているのだ。嗚呼!

     *

 読了して、あわてて、購入してまだ開封していなかったDVD「フレンズ」を観た。
 涙、涙……




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1999年の小林信彦 #1
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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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