シルバーウィーク第1日の昨日(19日)、早起きして9時に川口図書館へ。リクエストしていた本3冊を受け取る。そのまま小田急線・参宮橋駅に向かった。11時から「映画監督と時代 ~戦争法案を廃案に!」と題した映画の上映とシンポジウムが国立オリンピック記念青少年総合センターで開催される。特撮仲間のSさんと10時15分に待ち合わせしているのだ。
 が、新宿に到着したのが9時40分、小田急線を使うと時間が余ってしまうので、新宿駅から歩いて行くことに。いい散歩になった。
 午前中は映画「ひろしま」の上映、午後からシンポジウム。
 詳細はまた改めて。

          * * *

1999/10/22

 「笑う男道化の現代史」(小林信彦/晶文社)

 大学時代に購入した中原弓彦の「定本日本の喜劇人」の広告ページを見ると今では古本屋でもお目にかかれない「東京のドン・キホーテ」「東京のロビンソン・クルーソー」等の書籍が発売中とある。当時、書店に並んでなくても注文すれば取り寄せることは可能だったのだろう。今考えるとくやしくてたまらない。

 この前野球の試合後に寄った新宿古書センターには「日本の喜劇人」が2冊あって歓喜した。まあ定本を持っているから買わなかったが、それなりの古本屋には中原弓彦(=小林信彦)の絶版本があるのだろうとこれからそれらの本を探し出す楽しみが増えた。と同時に、別に手に入らなくてもいいから、早く読んでみたい欲望が渦巻いてきた。
 かつてちくま文庫で、最近では文春文庫で、小林信彦の過去の作品が復刻されていて、上記の作品たちがラインアップにならないか待っているのだが……。

 昨日羽田図書館に寄った際、試しにパソコンで検索してみたら何と「東京の…」や本書があるではないか! あわててリクエストしたら「東京…」は貸し出してから返却されていないもので行方不明だという。たぶん熱狂的な小林ファンが自分のものにしてしまったのだと思う。図書館の人は全然そんな風に考えていなかったが、ものがものだけに確信できる。

 リクエストしたもう一冊が本書である。奥付には1971年7月26日発行とある。表紙は笑い顔の渥美清でそれだけ宝物を探し出したような至福を感じる。

 作りは非常にユニークだ。本書自体は簡単に言えばセンス・オブ・ユーモアについての評論集と言えるのだが、国内外の小説、映画、落語等をテキストに著者が綴る評論の合間に「ほらばなし・鉄拐」「消えた動機」「中年探偵団」の3つの短編が挿入されている。
 戦前の「新青年」を題材にした「戦前派のユーモア」、今古亭志ん生の生き方を追う「明るく荒涼たるユーモア」、日活アクションをコメディの角度から語った「戦後日本映画史の狂い咲き」、サム・ペキンパー監督作品「砂漠の流れ者」を取り上げる「反英雄のユーモア」が興味深かった。
 (あとがき)風覚え書きには若き日(晶文社の編集者時代)の高平哲郎が登場する。70年代に晶文社から出版された数々の(中原・小林)本には高平哲郎の小林信彦への個人的興味が多分に反映されているに違いない。


1999/10/29

 「家の旗」(小林信彦/文藝春秋)

 羽田図書館のコンピュータで検索して取り寄せた。1977年に出版された小林信彦二冊目の創作集である。
 この本の存在自体全く知らなかったが、読んでみたら「和菓子屋の息子」の先駆となる自身の家系を追った純文学作品であった。4編が収録されている。

 各編主人公(狂言廻し)の名前はそれぞれ違うが同一人物(=作者)と見ていい。
 和菓子屋八代目・入婿ではあるが、類いまれな商才で事業を拡大させた祖父の人生を主人公がたどる「両国橋」、その和菓子屋を九代目(父の代)でしくじり、のれんを売った京都の和菓子屋と九代目の長男との邂逅を描く「家の旗」、葉山に買った一戸建て家屋にまつわる主人公夫婦の思い出話「決壊」、主人公と親戚関係にある外国人との出会い、決別、和解を綴った「丘の一族」。
 どれもが読んでいて息がつまりそうな物語であるが、冷静で客観的な文章がそれを中和させるのだろうか、興味をそそられるのである。

 「家の旗」の書名に憶えがなく、かと言って「丘の一族」は読んだ気がする。思い当たるふしがあって、数年前に買った「東京・横浜 二都物語」(文春文庫)をあたったら、何と「家の旗」「丘の一族」が収録されていた。「家の旗」もすでに読んでいたのである。記憶というのはホントあてにならない。
文庫の解説に「家の旗」が芥川賞候補になったとある。もし受賞していたらその後作品の系列にも大いに影響を与えただろう。


1999/11/09

 「エルヴィスが死んだ 小林信彦のバンドワゴン1961~1971」(小林信彦/晶文社)
                       
 「東京のロビンソン・クルーソー」「東京のドン・キホーテ」等、かつて晶文社から出版された中原弓彦名義のコラム集を読みたいとかねがね思っていて、川口中央図書館で検索したら本書があったのでさっそく取り寄せた。

 上記2冊に続くコラム集の第三弾とあとがきにある。
 最初の方に収録されている60年代の映画に関するコラムは「コラムは歌う」(ちくま文庫)に再録されていて、なるほどかつてのコラムはジャンル別に、たとえば「地獄の読書録」「地獄の映画館」(ともに集英社)にまとめられ、「地獄の映画館」はやがて「コラムは歌う」にその他のコラムとともにまとめられたのか、だから「東京の…」2冊は復刻されないのかと合点がいった。とはいえ、映画以外のTV評、書評や風俗、ファッションに関するさまざまな時評など初めて読むものもたくさんあって、まさしく60、70年代のサブカルチャーを知るかっこうの書であった。

 興味深いのは70年代に入ってからのもので、本書は「コラムは歌う」と「コラムは踊る」(「地獄の観光船」)をつなぐエンタテインメント時評と位置づけることができる。
 「コラムが踊る」の中にエルヴィス・プレスリー死去にふれたコラムがある。その中でたのまれなくてもエルヴィスについては一文書かなければなるまい、と書いていて、それが本書の冒頭にある「エルヴィスが死んだ」である。

 これは世代の違いでどうしようもないことだが、僕はプレスリーに何の思い入れもない。死去を知った時、驚いたのはその若すぎる年齢であり、後のジョン・レノンに比べたら僕自身の生活(あるいは精神)に格別の影響はなかった。ビートルズとプレスリーとではそのくらい違うのだ。
 この文章についてプレスリーを同時代に体験した人の記録として読んだ。どうしても偉大な歌手(俳優でも)というのは後世美化されて伝説化する。(美空ひばりの死後、彼女の功罪について客観的に分析したのは小林信彦ではなかったか!)
 現在、プレスリーの主演映画をくだらないと断言できる人がいるだろうか?

 芥川賞候補作「家の旗」の原体験となった京都の親戚筋の結婚式出席ついでの小林夫婦の大阪行き、漫才見物をつづったコラムもある。
 キネマ旬報に連載されていた「小林信彦のコラム」で僕はコラムの楽しさを知った。連載分を一冊にまとめた「地獄の観光船」が僕の初めて購入した〈小林信彦〉本である。その前史ともいうべきコラム集を読み、ますます「東京の…」シリーズ2冊に興味がわいてきた。


1999/12/01

 「星条旗と青春と 対談:ぼくらの個人史」(小林信彦・片岡義男/角川文庫)

 本書は単行本「昨日を超えて、なお」の文庫版である。文庫にする際に著者の希望で「星条旗と青春と」に改題されたわけであるが、読み終えた今、一見わかりにくいけれど旧題の方がよかったと思う(確かに「星条旗と青春と」の方が内容を的確に表現しているのだが)。

 小林信彦の作品には単行本から文庫にするにあたって、改題する場合がある。
 今思いつく作品は2つ。

 「世間知らず」→「背中合わせのハートブレイク」
 「発語訓練」→「素晴らしい日本野球」

 これらの改題については思うところがある。
 「背中合わせのハートブレイク」なんて一昔前の歌謡曲(ポップス)みたいなタイトルでがっかりした。〈世間知らず〉が死語になって一般に通用しないからと、その理由を自身のコラムの中で書いているが、それにしたってもう少し考慮すべきじゃなかったかと思う。若者に迎合している感じがしてどうにも好きになれない。死語だろうがなんだろうが「世間知らず」の方が素敵なタイトルだ。

 「素晴らしい日本野球」は短編集だし、収録されている作品のどれを表題に持ってきても大差なさそうで、それなら、発表時にその内容と著者であるW.C.フラナガンの存在の真偽で大きな話題をさらった「素晴らしい日本野球」をタイトルに持ってきた方が営業上メリットがあるのは確かである。だが、「ぼくたちの好きな戦争」を上梓し、自ら第一部が終了と宣言した後の、第二部開始への序奏である作品集としては「発語訓練」という書名にこそ意味があると思う。

 本書の場合は小林信彦の要望から片岡義男がまず「more than yesterday」の言葉を思い浮かべ、それを翻訳したとあとがきにある。
 1940年から70年代までを、片岡義男を相手役に小林信彦自身のアメリカへの憧れ(と反発)をメインに、日本の経済、政治の変貌を含めた年代史、精神史を思う存分語っている。




関連記事
スポンサーサイト
NEXT Entry
「紙ふうせんシークレットライブ 2015」 その1
NEW Topics
告知ページ
BC20世紀 賄い料理その3
「フェース/オフ」 ~ある日の夕景工房から
ある日の夕景工房から ~「メン・イン・ブラック」
TV番組の再現フィルム撮影に参加するの巻
オラ、やっちまっただ!
1分間スピーチ #17 図書館利用の勧め
無題 ~「白いカラス」
1分間スピーチ #16 サマータイム導入問題
BC20世紀 賄い料理その2
Comment
Trackback
Comment form
 管理者にだけ表示を許可する
プロフィール

kei

Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

検索フォーム
ブロとも申請フォーム
QRコード
QRコード

Page Top