オーチャードホールは初めてだ。隣のシアターコクーンには一度だけ行ったことがあるのだけど。ショーケンのライブ。25年前になるのか。「コンサートR」、一週間ぶっ続けで開催したんだったなぁ。

 それはともかく。
 18時30分に開場になったが、アナウンスがホールには入れない、エントランスでお待ちくださいと伝えている。まだ、リハーサル(ステージセッティング? 音調整?)が続いているのか。
 この日は腕時計をしていないので、時間をチェックしていなかったのだが、しばらくして入場となった。

 ホールは3階建て。広々としている。
 席は14列めの15番。なかなかいい席ではないか。当日券でそれも前売りと同じ金額でこんな席に座っていいのだろうか。
 たぶん関係者招待席なんだろうな。左隣はセレブなカップルだった。右隣は僕より少し下と思われる男性だった。
 開演の19時までけっこう時間があったので、リュックから本を取り出して、しばらくの間、読書していた。

 開演までの間、ずっと村井メロディーを奏でるピアノソロが流れていた。録音だろうけど、誰が弾いているのか? まさか村井さん自身だったりして。
「美しい星」のほか、何曲も流れた中で僕の耳を捉えたものがあった。
「愛を育てる」。

 1971年の春、僕は小学6年生だった。当時、フジテレビの19時30分だったか45分だったか、月曜日から金曜日までの帯で「スター千一夜」という番組が放送されていた。司会が関口宏や石坂浩二の芸能人インタビュー番組。
 提供が旭化成で、「愛を育てる」はその企業CMソングだった。歌はトワ・エ・モア。なんてことを知ったのは、この10年、15年のことで、当時は、曲名はもちろんのことトワ・エ・モアが歌っていることすら知らなかった。ただただいい歌だなぁと。
 もうひとつ印象的だったのはバックの映像だ。もうすぐ公開される「小さな恋のメロディ」が使われていた。こちらも気になって仕方ない。あの髪の長い少女は誰? 

 クラスでこのCMのことを話題にした。
「小さな恋のメロディ」という映画の映像が流れるんだけど、歌がいいんだよね。
 すると、同じ町内に住むKが反応した。
「それなら、うちにレコードがあるよ。ねぇちゃんが買ったんだ」
「聴かせてくれる?」
「いいよ」

 てなわけで、Kのうちに友だち何人かと遊びに行った。
 Kがかけてくれたレコード(シングル)は、なんと英語の歌だった。ビー・ジーズの「メロディ・フェア」。「小さな恋のメロディ」の主題歌なのである。
 期待していた歌ではなかったが、この曲もいい。B面の「若葉のころ」とともに、お気に入りになってしまった。

 そうなると、映画が観たくなる。
 隣町の映画館で上映されることを知ると、一緒に観に行く仲間を募った。
 7、8人が名乗りをあげたと思う。
 日曜日に行くことになったのだが親が騒ぎ出した。
 まだ子どもの男女が結婚するというストーリーは教育上よろしくないというわけだ。
 親同士、電話をかけ合って行かせるかどうか相談している。これで一人欠け、二人欠け、で、結局、僕を含めて3人になってしまった。

 併映は「ベニスに死す」。
 大人になって思ったのだが、こちらの映画の方が問題だったのでは? だって、中年男が少年に恋い焦がれる話だよ!

 「小さな恋のメロディ」を観たあと、映画館を出た僕は世界が広がったような感じがした。
 一歩大人の世界に足を踏み入れたような。
 この話をすると長くなるのでこのへんで。

 今、YouTubeで、当時の旭化成のCMを再現したものが見られる。
 これです。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町で働いています。

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