フリースタイルの小林信彦コレクション刊行ニュースに歓喜したのだが、続報がない。もう秋だけど。なぜ?

     ◇

2000/02/08

 「現代〈死語〉ノートⅡ」(小林信彦/岩波新書)

 〈まえがき・のようなもの〉で本書が3年前に出た「現代〈死語〉ノート」の続編だと断っている。でないとこのノートが1977年というハンパな年から始まるのかと質問する人がいると思うから、と書いているが、そんなことはない。
 あくまでも個人的なことだが、1977年は僕にとって小林信彦を知るきっかけになった記念すべき年である。

 何度か書いているが、小説家・小林信彦の存在は「オヨヨ」シリーズで中学時代に知っていたにもかかわらず、全く興味なかった。(これはNHK少年ドラマシリーズのドラマ化作品がつまらなかったというのが要因の1つかもしれない。)
 高校生になって、毎号購入するようになった「キネマ旬報」に「小林信彦のコラム」の連載が始まったのが77年。このコラムに魅了された僕はコラムニスト・小林信彦のファンになり、それから小説もむさぼるように読んだ。彼の著作がその後の僕の人生にどれだけ影響を及ぼしたか計り知れない。
 そのほかにもいろいろとあって、この年には格別に思い入れがある。そんな1977年から始まることは大いに意味があることなのである。

 70年代から80年代中頃まではともかく、それ以降の出来事はつい最近という感じで、(死語)と言われても実感がない。(確かに使われなくなっただから死語には違いないのだが)
 前著で扱った時代(50年~60年代)は僕にとって遠い時代であった。でてくる言葉も懐かしいものばかりで、〈死語〉の表現がぴったり合っていたと思う。変なたとえだけれど、神保町あたりの古本屋にあるすでに絶版、流通していない古本と最近の流行のブックオフ等のチェーン店でよく見かけるちょっと前にベストセラーになった中古本の類い、の違いというか……。98、99年なんてほとんど〈これからすたれる言葉になるだろう〉という予言だもの。

 97年に登場した「アダルトチルドレン」は悪い意味で子どものまま大人になった人のことを言うのだろうと思っていたら、発祥元のアメリカでは〈アルコール依存症の親によって精神的・肉体的虐待を受けて成長した者〉を意味するのだという。「永遠の仔」を読まなければ、たぶん気にも止めなかった言葉である。


2000/02/23

 「大統領の晩餐」(小林信彦/ちくま文庫)

 ちくま文庫から「コラム」シリーズのほかに「オヨヨ」シリーズが出るのを知った時は歓喜したものだ。小林信彦の新刊は有無を言わず購入するし、既刊についても、書店にあるものは手に入れ、そうでないものだけ図書館で借りるなりして読んでいたのだが、「オヨヨ」シリーズだけはどういうわけかどこにも見かけることがなかった。
 わくわくしながら読んだ「オヨヨ島の冒険」は、しかし、解説の新井素子が絶賛するような面白さを感じなかった。小林信彦の傑作として評価の高い小説なのにこれは意外だった。続く「怪人オヨヨ大統領」も同じ印象。

 僕のオヨヨ伝説がくずれるかに思えた頃、大人向けに書かれた「大統領の密使」が快作だったのでほっとした。ギャグがはじけてニヤニヤしたり、声だして笑ったり。どうやら僕とジュブナイル版オヨヨとは相性が悪いらしい。
 当然続刊を読みたくなるのだが、不思議と書店で目にすることがなかった。古本でもと思ってもいつも立ち寄る古書店にはちくま文庫版の小林信彦本はおいてなく入荷される気配もない。すっかり忘れかけていた昨年、下北沢へ立川談四楼独演会を聴きに行った帰り、ぶらりと寄った古本屋にこの「大統領の晩餐」と「合言葉はオヨヨ」の2冊が並んでいて感激した次第。あんまりうれしくて今までツン読状態にしておいたのだ。

 さて「大統領の晩餐」、出だしから好調である。冒頭は古今東西の小説の書き出しのあれこれをオヨヨ風にアレンジすると、というマクラで笑いをとって、あっというまに小林信彦的うんちくとギャグとパロディに彩られた抱腹絶倒の世界にひき込まれた。

 解説にもあるとおり本作は求道者小説「宮本武蔵」「姿三四郎」のパロディであり、料理道を邁進する登場人物を創造するところが何とも愉快。人気TV番組「料理の鉄人」や牛次郎原作の一連の料理マンガの先駆的作品と言えるだろう。小林信彦のすごさは本家「宮本武蔵」に対して登場人物に「なんでも『宮本武蔵』は、戦争中の版と、いまのと、一部分、ちがうそうで、みなさん、その辺には口をとざしているそうです」と語らせることである。これはどうしたって、その違いというものを知りたくなるではないか!
 本筋とは関係なく、日活アクションに思い入れと造詣の深い作者らしいギャグも炸裂する。僕自身、日活黄金時代の映画は何も観ていないのにもかかわらず映像が浮かんできて、いや~笑わせてもらいました。

 こうなると、自身でシナリオを担当し、紆余曲折の末に完成した松竹映画「進め!ジャガーズ 敵前上陸」をどうしても観たくなる。


2000/03/22

 「合言葉はオヨヨ」(小林信彦/ちくま文庫)

 「大統領の密使」「大統領の晩餐」に続く大人向け「オヨヨ大統領」シリーズ第3弾。
 お馴染みのキャラクター、お馴染みのストーリー展開と思いきや、どことなく今までと雰囲気が違う。解説にもあるとおりギャグやパロディを挿入しながら、かなり真面目な冒険小説に仕立て上げているのだ。
 前2作以上のハチャメチャな物語を連想させる「合言葉はオヨヨ」というタイトルとのギャップをまず感じた。
 何も知らなければ「大統領の密使」「大統領の晩餐」こそ正統的なスパイ小説、冒険小説に受け取れるが、この作品こそ「大統領の××」というタイトルがふさわしい。
(たとえば「大統領の陰謀」というのはどうか? どこかで聞いたタイトルだな。)
 なぜそうしなかったのか? やはりオヨヨの文字がタイトルにあった方が本が売れるのだろうか?  ジャパンテレビの細井プロデューサーとともに行動し、旦那刑事が登場するまでのコメディーリリーフ・安田が物語の後半にオヨヨ大統領自身の手によって殺されてしまうくだりはわが目を疑った。これまで主要人物が死んでしまうなんてことはなかった(と思う)し、オヨヨ大統領自身が人を殺めるなんて信じられない。そのうち「冗談でした!」 と復活するもんだと願いながら、読み進んだもののラストまでその気配がない。
 ストーリーには今まで以上に満足しつつも、なぜか釈然としない気持ちで読了した。




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Author:kei
新井啓介
ライターの・ようなもの
まぐまPB「夕景工房 小説と映画のあいだに」(studio zero/蒼天社)
「僕たちの赤い鳥ものがたり 1978-79」(文芸社)
神保町のブックカフェ二十世紀で働いています。さまざまなイベントを企画、開催していますので、興味あれば一度覗いてみてください。

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